小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」

小説「目覚める人・日蓮の弟子たち」の連載と、上場投信日興225の勉強会をします。

小説「目覚める人・日蓮と弟子たち」二十四

2010-09-02 | 「目覚める人・日蓮の弟子たち」
 北条小源太 二十四 *  

「承久の戦の時もそうだった。当時は朝廷に向かって弓を引くと天罰
をうけ、かえって自分のほうに矢が当たると恐れられていた。
 そのとき義時公は、
恐れは自分の心のなかにあるのであって朝廷方が強いからではない。
頼朝公が平家を討ったとき平家方には天皇も味方しておられたではな
いか、
鎌倉武士が戦わぬうちに相手を恐れては、世の笑いものになるぞ」

 と叱咤されたそうだ。

戦わない内に敵を恐れるのは臆病で、武家の統領である執権職が臆病
であっては一日も勤まるものではない。それに時宗どのは英邁で決断
力のある方だとわしはみている」 と小源太は断言した。

「なるほど、とののお話しを承っていますと執権どのの腹の内も分か
るような気がします」

小源太は続けた。
「時宗どのが腹の内を明かさないのは、防備の準備をする時間稼ぎと
御家人や国主たちの様子をみているのだ。
いざという時に役に立つかどうか自分の目で確かめておられるのだ。

 何分にも執権になられたばかりで、側近の情報だけで全国を掌握さ
れているのでのう、この機会に人々の腹の内を探ろうとされているの
だろう。
 なかなかの者じゃて」

小源太は、ワハハと大きな声を出して笑った。

時頼どのが生きておられればそうされるだろうし、息子の時宗も同じ
だ、と彼は腹の内で思っていた。九分九厘勝ち目が無いようにみえて
も、一厘の勝機があれば、諦めずに向かっていけ、強気に徹せよ。と
いうのが北条の家憲だったのだ。

続く