法華経の行者 二 *
「やはりのう、それでそなたは何故そうなるのか理由が分かりました
か。」
「正直に言って私には、経典を読んだだけで理由は分かりませんでし
たが、中国の出来事やわが国で実際に起きた事件をみましても、予言
通りになっていることは疑いようもない事実です。
私には何故そうなるのか分かりませんが、教典に書いてある事が間違
いだとは到底思えません。
それでこの上は、上人に直接会って教えて頂くのが一番だと考えた
のです。」
「うーん、そうかのう、わしも実は上人にお目にかかって教えを乞い
たいと内々思っているが、もうひとつわしが腑に落ちないのは、何故
上人にだけ分かって、あまたいる他の僧には分からないのだろうと不
審に思えるのだ。」
「はい、その点について私も考えてみました。
わが国に外国から伝わっている教典は、六千巻とも七千巻とも言われ
ていますが、全国の主要な寺院に散在して保管されています。」
「ほーう、そんなにあるのか。」
「その膨大な数の経典を全部読むことは不可能に近いうえに、経典で
なく釈や論といって、経典を釈したり、後世の学者や僧が自分はこう
解釈すると論じたものを学んで仏教を修行しているのが実情です。」
「そうであろう、それはわしにも納得できるが、」
続く