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三井高利を育てた女 三井殊法

2012年09月06日 23時57分28秒 | 読書

我が社の社長は歴史や文化が好きで、
自分がプロデューサーとして関わらせてもらっている松阪歴史探訪-松阪商人編-も、
えらく気に入っていただいて、放送日までスケジュール帳に記載するほどです。


当然うちは局ですから。
数ある番組の中でそうやってスケジュールにまで書いてもらえるような番組というのは
そうはナイだろうというのが予測ですが、
先日社長に声をかけていただき、2冊の本を読んでみるかい?と貸していただきました。
今日はその一冊を紹介します。


越後屋おらく-小説・三井高利の母-

エフエー出版
定価(1,553円+税)
1992/5/19
209ページ

まず、この本、前提として小説です。
つまり、フィクションストーリーです。
えっと、正確に言うと、ノンフィクとフィクの間くらいなのですけどねw


世界にまでその名を轟かせた松阪商人の一人「三井高利」
彼自身の丁稚奉公からのたゆまぬ努力があったからこその、大商人になったわけですが、
その陰には、三井殊法(しゅほう)の存在があったからと言われています。
殊法は、高利の実の母です。

三井というと越後屋というお店を経営していたことで有名ですが、
この越後屋は、三井高利から見て、祖父にあたる、
三井越後守高安という武家の名前からとったものとされています。
*三井家は元々武家。

小説の中では、この越後屋というお店の名前は殊法がつけたものとされていて、
結婚する前の殊法の名前が「おらく」だったことから、
小説の中では自分が名づけたお店+元々の名である「越後屋おらく」としているわけです。


実際、高利の父、殊法の旦那である高俊は商才がなく、
茶や歌に興味をもっており、三井家の商売の実験は殊法が握っていたとされています。


そんな殊法の生きざまを痛快にストーリー仕立ててで紹介してあるのがこの
「越後屋おらく」です。

実際、厳しい男性だけの世界であった松阪商人のしきたりの中で生きてきた女性ですから、
それなりの気合と商才があったのでしょう。
にしても。。少々、殊法が怖すぎるw
殊法のセリフをいくつか紹介すると・・・


金のないのは首のないより哀れ―
これやよ、世の中。これにつきますわ。
(中略)
人が何と言おうと、わたし、世の中で一番大事なものは金やと思う。
これを生きて行く上で最高最上のものや、と認めなんだら生きて行くというそのことが
不可能やと思う。


親の役にも立たん、あきないの道具にも使えん子と分かっていたら、
おまえなんぞ、この世の空気を吸うたその場で、
その首、ひねって息の根をとめていたわ。


三井へかねが来たんだわ。銭がな。嬉しやのう。
こんなめでたいことが願ってもあるものか。高利仕合わせ。
三井の家も仕合わせ。高利にも私にもよう仕えてくれるし、
第一わたしが気に入ってるのは、この女、無駄遣いをせぬ。
そうよ、女は器量がようても銭の有難さを知らぬのは屑。
人でなし。最低じゃ。


なんか、これだけ紹介すると、銭ゲバに聞こえるかもなのですが・・・
まぁ実際小説のキャラクター上で見ると、相当な人物でw

だけど、「お金を得る=世間様に認められる・喜んでもらえる。」という考えもあったようで、
殊法の言葉も、近江商人の三方よしのように、
「売りて悦び、買いて悦ぶ」という言葉を残しています。

松阪商人をまた違った角度から知りたいと言う時にオススメの本です。


最後に、小説の中の気に入った文言をいくつか紹介。


世間のおひとはよく言うわのう。
暮らしにむだも必要だ、と。
いやいやいや。わたしはそうは思わぬぞ。
むだというものが小指の先もあってはならんのよ。
どんな大きな金を使うてもええ。
これから先、どおーんと使わんならん場合もたびたび来るやろうと思う。
が、それが、必ず生きるかねでなけりゃならんのよ。
死金はびた一文使うもんやない。
むだというのはその死金という奴よ。使うたらあかん。


尻切れぞうりに縄帯まきつけて、よそさまの軒下から雨空を恨めしげに
眺めている男ら、腕をかかえてお救い小屋のほどこし粥に行列つくる女、子供。
そういう貧乏人のことを、考えとったのよ。
(中略)
そんな貧乏人のことなどあきないの対象にならぬ、というかもしれんが、
分限者、お武家は山の上半分、下半分と裾野を支えているのは貧乏人やわのう?
これを、この下半分を見逃しておってはならん、と、わたし思うのや。


品物というのは、手早く動いてこそ生きるというもんや。
それには掛け売りなしの正札つきの現金売り。
まこと、それにかぎるのや。
さすれば、品物を寝かせておく機関がないから、もうけ分を上乗せする必要もなし。
安価な売り値を付けることが出来る。
つまり、薄利多売やわのう。


男が必死であきないに打ちこむのはええもんよのう。
必ず、結果が出る。良と出る。

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