第一部 前夜祭
怪物と戦う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ…、長く深淵を覗く者を、深淵もまた等しく見返す―――
フリードヒ・ニーチェ
第一幕 夕暮れの殺意
Ⅰ
華翠芹は足を止め、杖を持たぬ方の手を軽く握り、口元にやった。考え込む時の彼女の癖だ。
昼間の残滓は跡形もなく消え失せていた。確かに校舎内は静謐で、どこか神殿にでも迷い込んだような錯覚さえ抱かせていたのだ。
なのに今は―――
ここは聖ブランシェ学院。世界各地から絵画や音楽、詩、様々な芸術の才能を持つ少女たちがラミューズ(この学院を卒業した芸術家に与えられる称号)となるべく学ぶ場所。薔薇の蕾たちの園、とも喩えられる場所。その場所に相応しいヴァイオリンの音色が夕暮れ時の校舎内の橙色に満ちた空気に静かに溶け込むように奏でられていた。
最初に考えたのはつい先ほど、この中等部に来る前に明後日のコンクラーベ(生徒会役員選挙)の書類を取りに行った時計塔の最上階にある生徒会室、そこに居た幽霊が奏でているのかと想った。彼女はそのヴェイオリンの曲、彼女が未完のままに残したその曲の作曲者なのだから。確かに前に授業で聴かされた生前の彼女の音色とそれは一緒だった。が、だけどそれはテクニックだけだと芹の感性が告げている。そう、それが彼女にこのヴァイオリンの奏者はあの幽霊、伝説の生徒会長サラサ・ローレンでは無いと確信させた。
「先の教室から?」
夕方の薄闇という帳の向こう、ちょうどこれから忘れ物を取るために向かっていた教室がある方からそのヴァイオリンの音は聴こえてきているようだった。
廊下に映った影に視線を落として芹は苦笑する。何かを思案する時に口元に軽く握った手を当てるのは亡くなった母から伝染した癖だ。
出た答えに自然と眉根が寄るのが感じられた。
―――有り得ない、そんな事は。でも………
「馬鹿げている。死人が楽器を弾いているなんて」
見たといっても五十五年間空席だった生徒会長の席に座っている半透明の少女をほんの一瞬だけ見ただけ。あれが本当のサラサ・ローレンの幽霊だという確証はどこにも無い。
そう想いながらも足が不自由ながらに先を急いだのはよもや、という事もあろうから。生徒会室で彼女の幽霊を見た事もあるが、この学院には非日常の面が、あるから。
昨日までの芹なら想わなかった。が、この学院が持つ、庭、という秘密に触れた今はそれを一笑にふす事は出来なかった。
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うーん、白夜行、読み終わったのですが、雪穂の娘になったおんなのこがかわいそうだったです。再婚する前に従兄にささがきを会わせなさいよ、一成さん、と強く想っちゃいました。
面白いんだけど、やっぱり肌にはあわないなー、と想います。
ドラマを見る前に読んでたら本当にどうだっただろう? うーん。
でも本当に犠牲者になった人たちは皆いい人ばかりだったから、それが・・・。
雪穂たちもかわいそうなんだけど、でもだからって犯罪をやっちゃダメだし。
何よりも最後がずどーんと重く。模倣犯の時は本当に良し、ピースが自滅した!!! ってすごく嬉しかったんだけど、最後は凄く重くって、救いが無いように思えて、何よりも本当に二人が子どもだった時の周りの大人、親が悪かったんだって想って、本当に本当に救いの無い重い話で。。。
なんだかずどーんと重いです。
秘密の最後(映画がだけど)も肌が合わなかったし。
もう一冊だけこの人の本を図書館で読んでみようかな?
何とか電撃大賞に『箱庭帰葬』というタイトルの上の文章から始まる物語を投稿できそうです。^^
さあ、あと半月ばかりこの子にさらに手をかけて、送らねば。
前に先生に読んでもらったお話は児童文学の大賞のほうに。
よし、がんばるぞ!!!(拳)
すごいですネ、投稿前の作品の冒頭が読めるなんて。
この後も推敲を重ねられるのでしょうが、
芹さんという人物がどういう人なのか、
続きが非常に気になります。
カプチーノの誕生花の物語も、
バリエーションに富んでいて、
物語作りの巧さを感じます。
いつもすごく楽しみにさせてもらっています。
やっぱりスノーちゃんが登場すると、微笑ましいです。(^.^)
そちらの方では地震が続いていたようですね。
怪我もされたという事ですし、
春まぢかといえど、季節の変わり目は油断大敵。
どうか体調を万全整えて、
ベストを尽くして下さいね。
それではまたお邪魔したいと思います。
ごきげんよう。(1度使ってみたかったんです。笑)
スノードロップ、あの娘はまあやと共にOMCの方で使っているキャラだったので、不安があったのですが、そう言ってもらえると嬉しいです。^ー^
投稿小説、後は地の文や会話を少し削ったり、変えたりするぐらいで大きな設定はもう無いと想います。だからあともうちょういですね。^ー^
お約束してあったお話はこちらのお話だったりするのですよ。^^
芹は、正義の味方なのですよ。全てが。でもそうなるべき重い物をたーんと背負ってもらっていますが。(痛い。後ろから芹に石を投げられた。)
地震の方も怪我の方も大丈夫です。^^
でも最近は病院、公民館、街中と、色んなところにスピーカーが配備されていて、ちゃくちゃくと東海大地震の準備なんかがされていて、それが少しかえって恐怖をあおられている感じで嫌ですね。(^ー^;
ではでは、書き込みありがとうございました。^^
PS そうそう、222でにゃんにゃんにゃんで、猫の日なんですよね。^^