goo blog サービス終了のお知らせ 

珈琲ひらり

熱い珈琲、もしくは冷珈なんかを飲む片手間に読めるようなそんな文章をお楽しみください。

シーンⅢ 8月9日 Aika3

2005年10月26日 | 銀の指輪のジンクス

 Aika3


「さあ、どうぞ。たーんとお食べください」
 あたくしはテーブルの上に腕によりをかけて作った手料理を並べて嬉しそうに言った。
「わぁー、美味しそうー」
 かなみさんが手を合わせて嬉しそうに言ってくれる。とても嬉しい。
「ふふん、愛華の料理の腕は保証するよ。彼女、ものすごく料理が上手いんだ。だから何度も結婚を申し込んでいるんだけどふられっぱなし。切なー」
 お酒を飲みながらめぐみさんが笑って言う。
「えー、そうなんですかー。愛華さんってばこんな素敵なお姉様の求婚を断るなんて、なかなかにガードが固いですねー」
「そうなんだよ。分かる、私のこの片想いの切ない想い?」
「だってめぐみさんとあたくしは女の子同士なんですもの。哀しいけど今世ではその恋は報われませんわ。だから来世で結ばれましょうね」
「「「ぷぅ」」」3人でくすくすと笑いあう。
「かなみちゃんはお酒はいけるの?」
 お酒を飲みながら小首を傾げてそう言うめぐみさん。かなみさんは悪戯っぽく笑って、
「これでもうちのゼミでは一番強いんですよ」
「お、いいね。実は私もざるなんだよね」
「勝負しますか?」仔猫のように小生意気そうに笑ってかなみさん。
「お、この私に勝負をしかけるって? いいわよ」
 向かいあって不敵に笑いあう2人。
「って、かなみさんはまだ未成年でしょう」
 あたくしが笑いながらそう言うと、かなみさんは大きく両手を広げて肩をすくめる。
「3日後には19歳でしてよ」
 得意げに笑ってまたあたくしの口マネをしてそう言う彼女にめぐみさんとあたくしは「「それでも未成年だっちゅーの」」と同時に突っ込む。
「っちゅーのってなんか古ぅーい。なーんかババ臭ぁ―い」
 いつの間にかお酒を飲みながらけらけらと軽い声でかなみさんが笑いながら言う。
「「失敬な」」また同時に2人で突っ込む。
 そこで3人また大爆笑。
「さてと、んじゃ依頼達成パーティーじゃなくってかなみちゃんの3日早い誕生会に変えようか」
「わぁー、ありがとうございまーす」
「んじゃ、かなみちゃん、19歳のお誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
 めぐみさんとかなみさんはお酒、あたくしはオレンジジュースの入ったグラスを合わせて、
「「「乾杯」」」
 作った料理はあっという間になくなる。美味しそうにぱくぱくと食べてくれる2人を見て作りがいがあるなと思ってあたくしはにこにこと微笑んで、料理をまた作って並べる。
 女3人でこれまでのドラマや小説なんかよりもすごかった仕事の話や、かなみさんのラブラブの彼氏とののろけ話、大学の話、絵の話、色んなおしゃべりをして3人で楽しく笑った。
 それは本当に楽しい時間だった。彼氏である三柴暁生さんの話をしている時の彼女の幸せそうな顔があたくしは今も忘れられない。あんなにも愛しそうに話していた彼氏。だけど彼女はその哀しすぎる運命によってその彼氏と…。


 →シーンⅣ 8月10日 Megumi6へ



 なんとなく今日の新聞の占い、今日よりも昨日の占いのような気がする。




シーンⅢ 8月9日 Megumi5

2005年10月20日 | 銀の指輪のジンクス


 Megumi5


『もしもし、めぐみさん? 愛華です』
「ええ。写真の確認取れた? 彼女がストーカーで間違いないでしょう? 何て言ったって私が今いる場所はクライアントが働いていた会社の前だからね」
『ええ。そうらしいですわね。彼女の名前は小山幹代。48歳。独身。柏原商事の営業課に勤務ですわ。クライアントとの関係は仕事場の元同僚です。彼女、クライアントの教育係だったそうです』
「なるほどね。私はこのまま彼女について、彼女が出てきたら接触するから」
『了解です。あのそれでめぐみさん。実はもう一つ報告したい事が…』
「なに?」そう言う私の声はどうしても嫌な予感に強い戦慄混じりの声になってしまう。
『かなみさんの様子が変ですの…』
「そう。わかったわ。とりあえず彼女と一緒に事務所にいて。少し経てば落ち着くと思う。それと例の廃屋について調べておいてちょうだい」
『了解。めぐみさん。お気をつけて』
「ええ。ありがとう」
 私は携帯電話を切ると折りたたんで、スーツの内ポケットに入れた。
「やれやれ、事は急を要するか…」
 私は乱暴に前髪を掻きあげて鋭く舌打ちをした。首に…彼女に絞められた個所に鈍い痛みを感じる。



『うふふふふ』



 冷たい声で低く笑うその誰かの笑い声が空耳だったのかどうか今の私にはわからない。私はもう一度鋭く舌打ちをした。
 佐野瑞樹からの依頼は達成された。
 彼女にストーカー行為をしていたのは、彼女の元同僚 小山幹代。48歳。
 小山幹代は佐野瑞樹の教育係として彼女に指導していた。
 最初は派遣されてきたばかりで仕事場に不慣れな佐野瑞樹に優しく接していた小山幹代。
 小山幹代自身も48歳という歳のせいで周りと親しくできず、仕事場で浮いた存在であったので、佐野瑞樹と仲良くできるように一生懸命にいい人、優しく頼れる先輩でいた。
 しかし人見知りな性格で最初こそは浮いていた佐野瑞樹であったが、だんだんと職場に慣れてくると佐野瑞樹はその本来の人を引き寄せる人柄のおかげで仕事場の同僚と仲良くなり、小山幹代と接する時間は圧倒的に少なくなり、ついには小山幹代とは仕事上のしかも必要最低限でしかしゃべらなくなってしまった。小山幹代はそれを佐野瑞樹の裏切りと取った。
 そしてもう一つ、小山幹代が佐野瑞樹にストーカー行為を仕出した原因がある。
 それは佐野瑞樹の仕事場の同僚であり、彼女の恋人であった勝崎賢人の存在であった。小山幹代は20歳年下のその彼の事を密かに愛していたのだ。
 かくして小山幹代は醜い嫉妬の権化となった。
 彼女は仕事場で知った佐野瑞樹のメールアドレスに仕事の休憩時間を利用してインターネットカフェで佐野瑞樹に西園喜一と原慶という2種類の名前を使ってメールを送っていたのだ。
 そしてとうとう小山幹代は佐野瑞樹を会社から追い出し、結婚が決まっていた彼氏との間柄も破局させたのだ。
 佐野瑞樹はうちの報告書付きで被害届を私が紹介した女性刑事を通して警察に提出し、小山幹代は逮捕された。


 →Aika3へ



 最近は本当に秋晴れで気持ちが良いですね。
 いつも五時ぐらいに起きているのですが、それぐらいのすごく冷たい空気がすごく好き。
 でも早朝も好きだけど、やっぱり夜が好き。
 春の夜桜。
 夏の何かが起こりそうな感じの夜。
 秋の虫が鳴く夜。
 そしてとても空気が鋭く切れるぐらいに冷たい、冬の夜。
 夜がやっぱり一番綺麗かな。


 今月の30日の火星が楽しみです。晴れると良いなー。



シーンⅢ 8月9日 Kanami9

2005年10月19日 | 銀の指輪のジンクス


 Kanami9


 あたしはトイレに駆け込むと、胃の中の物をすべて嘔吐した。涙がぼろぼろと流れて、喉が胃液でひりひりと痛かった。口の中に広がる胃液の苦み。だけどそれ以上に不快なのは、痛いのはあたしの心。
 あたしはものすごく怖い。何がどう怖いのか、それはわからない。だけど怖くって怖くってしょうがないのだ。
 訳の分からない恐怖に染まった心。その心の奥底で感じていたのは深い哀しみ。すべてを塗り潰す絶望の黒…。
 あたしは何に恐怖し、何をこんなに哀しんでいるのだろう?
 あたしはどうなってしまったのだろうか?
 あたしはもう何が何なのかわからない…。
 ただ一つわかっているのは…



――――――――――――――― あたしの中に誰かが、いる…………





 →Megumi5へ



 まさかカペタで泣きそうになるとは………。
 ビデオにとっておいたカペタ、父親とカペタのやり取り、父親がカペタの寂しさに気づいたシーン、社長の社員の子どもは自分の孫発言!(><
 想いっきりやられました。(><
 お金持ちのボンボン、お嬢様のスポコン漫画ははいはい、良かったねー。って感じで別に感情移入はしないし、むしろ、苦労しらずのボンボン、お嬢様が何を贅沢なことを言っている? という感じで冷めた目でしか見えないのですが、やっぱり父子家庭とか母子家庭で、両親ちゃんとそろっていても貧乏でがんばっている子が主人公の漫画は応援しますね。(^^
 やっぱりこういう方が感情移入しやすいですし。
 カペタ、良いなー。^^





シーンⅢ 8月9日 Aika2

2005年10月16日 | 銀の指輪のジンクス

 Aika2


「ただし?」
 小首を傾げてそう訊くあたくしに、めぐみさんは深い戦慄の表情を浮かべて、
「その彼女の中のここあの想いの残滓が何かの影響によって明確なる意思に変わってしまったとしたら…危ないけどね」
 ――――要するにかなみさんの中にはここあという爆弾があるということか…。
 それを聴いたあたくしの全身にぞわっと鳥肌が浮かんだ。額の汗が頬を伝って首筋から胸の谷間を撫でていく。周りの空気が少し緊張に濃密になった気がする。軽い息苦しさを覚えた。
「とにかく今は事の成り行きを見守るしかないわ」
「ええ」
 あたくしは小さく頷いた。かなみさんが置かれている状況がどんなに危うい物なのかを今更ながらに感じる。
 そんなにも昏い表情になってしまっていただろうか? めぐみさんはぱんぱんと手を叩くと、
「さあ、愛華。この話はここでお終い。13時になるよ」
 軽やかで、だけど力強い声でそう言った。
「はい」
 あたくしも意識して幾分声のトーンをあげて、そう頷いた。
 あたくしはインスタントカメラのフレームを覗いてインターネットカフェの出入り口を見つめるめぐみさんの横で佐野瑞樹さんのノートパソコンを起動させる。
 やはり今日はまだストーカーからのメールを受信していない。
「来た。まず1人。若い男だね。サラリーマンだ。クライアントと同じくらいだ」
 めぐみさんは気づかれないように彼をインスタントカメラで撮った。
 その彼に続いて3人の男…サラリーマン風が1人、後は学生風の男が2人…が店に入っていく。そして会社の制服を着た中年女性が1人。
 めぐみさんはその女性も写真に撮った。佐野瑞樹を恨む女性がストーカーであるという事も充分考えられるからだ。
10分後、13時23分にとうとう佐野瑞樹のノートパソコンにストーカーからのメールが届いた。
 ストーカーは13時以降23分までにこの店に入ったあの5人の中にいるということだ。
 西園慶に続いて、勝崎徹のが10分遅れで入ってくる。よくやるものだ。同一人物だとばれていることも知らずに。
 時刻は13時39分。
 ストーカーは13時から13時50分まで…お昼の休憩時間を利用してこのインターネットカフェから悪質メールを送ってきている。
 すなわち、あたくしたちが確認した13時以降、メールが受信されるまでに入った5人の人物が13時50分までに出てくればそれがストーカーである。
 果たして13時45分に車内にメールを受信した携帯電話の着信を教えるバイブの音が流れる。かなみさんからの13時以降に入った客が清算を済ました合図である。
「ビンゴ」
 めぐみさんは携帯電話のボタンを押してバイブを止めて、不敵に笑う。
 あたくしはめぐみさんと代わってインスタントカメラのフレームを覗く。フレームの先にあるインターネットカフェの出入り口。果たしてそこから出てきたのは一番最後に店に入った女性であった。
 あたくしは素早くシャッターを切った。
「愛華、私は彼女を尾行するから、あなたはこのまま14時までここで待機。その後に彼女の写真と一応他の4人の写真をクライアントに見せておいて」
「わかりましたわ」
 あたくしはたおやかに微笑んだ。
 14時までここでフレームの先にあるインターネットカフェを覗いていたが、そこから例の4人が出てくることはなかった。やはりあの女性で間違いないらしい。
 あたくしはかなみさんの携帯電話に撤収の合図のメールを送る。
「ご苦労様でした。かなみさん」
 あたくしはたおやかに微笑んで言う。しかしかなみさんの表情は硬い。何かにひどく苛ついているようだ。あたくしはそんな彼女に眉根を軽く寄せる。
「かなみさん?」
「あのおばさん…あの人がストーカーなの?」かなみさんの怒りに震える声。
「わかりませんわ。彼女にはめぐみさんがついています。あたくしたちはそれを知るために早くこの写真を持ってクライアントの元に行きましょう」
 あたくしは横髪を耳の後ろに流しながらものすごい眼で虚空を見つめる彼女に静かに言った。
「……もしもあのおばさんがストーカーだったらちゃんと彼女は警察に捕まってそれで社会的制裁を受けるのよね」
 彼女はものすごく昏い声で言った。あたくしは思わず彼女のその声が昏すぎるからぞっとした。
 彼女のその声に見る感情は強すぎる正義感とか社会や人の醜い部分を嫌悪する感情とかとは違うように思えた。
 ただただあたくしが彼女の昏い声に見た感情は、他人を傷つける人間を憎悪する感情。それは正義感や潔癖感が源…それが行き過ぎた想いではなくただただ深い憎悪だ。自分自身がかつて他人に深く傷つけられたが故にそれによって自分を傷つけた人間と同じような人間すべてを憎悪するような昏い想い…。
 あたくしは内心これがここあさんのために涙を流したあのかなみさん、毎日メール交換をしていたかなっぺさんなのかと疑ってしまった。確かにあたくしはメール上でしか彼女と触れ合ったことしかなかった。それでもその時の彼女に今の彼女を見たことは一度もなかった。彼女に何かあったのだろうか?
「ストーカーを警察に通報するかどうかはクライアントが決めることですわ。あたくしたちはただ依頼された仕事、ストーカーが誰であるのかを突きとめることだけです。さあ、かなみさん。ですから、車の運転をお願いしますわ。あたくし、こう見えてもまだ未成年なんで」
 砕けた感じの声でそう言ったあたくしの言葉にかなみさんはぷっと吹き出した。小さな形のいい口を手で隠してくすくすと笑う。その格好は彼女のかわいらしい外見に似合っていて微笑ましい。それはいつものあたくしがメールを交換していた優しく明るいかなっぺさんだった。
「ええ。だけどあたし、ペーパーだからしっかりとシートベルトして、掴まっていてね」
 悪戯っぽい感じでそう言う彼女にあたくしも、
「ええ。了解ですわ」
 と笑いながら言って、大袈裟すぎるぐらいにシートベルトを絞めて、両手で助手席の上にある手すりに掴まって見せる。そんなあたくしを見て、
「なんかそんなにオーバーにされると嫌な感じですわ。ものすごく失敬ですわね」
 と、かなみさんはぷぅっとかわいらしく頬を膨らませて、尖らせた唇を動かしてあたくしの口マネをしてみせる。そんな彼女にあたくしもぷぅっと頬を膨らませる。
「「ぷぅ」」とにらめっこするように頬を膨らませた顔を見合わせていたあたくしたちは吹き出して2人でくすくすと笑いあった。
 あたくしたちはかなみさんの運転する車で今回の仕事のクライアント、佐野瑞樹が入院している病院にやってきた。
 こんこんとあたくしはメトロノームで測ったように正確なリズムで彼女の個室病室のドアをノックする。
「はい」
 中から聞こえてきたのは疲れた中年女性の声。聞き覚えのあるその声は佐野瑞樹の母親の声だ。
 ドアが開けられて、疲れた顔をしている母親が顔を出す。
「どうも」ぺこっと頭を下げてあたくし。
「どうも。お世話になっております」母親が暗い声で言う。
「今日は瑞樹さんに見ていただきたい写真があって来ました」
「写真ですか?」
「はい。ストーカーかと思われる人物たちの写真です」
 あたくしがそう言うと、母親は大きく眼を見開いた。
「な…中に入ってください」
「「失礼します」」
 あたくしとかなみさんは病室に入った。
 佐野瑞樹はベッドの上で布団の中に潜って震えていた。どうやらあたくしたちの話が聞こえていたようだ。彼女のその姿は夜の闇に恐れる幼い子どものように見えた。
 あたくしは内心迷った。彼女に写真を見せていいものかどうかと。今の怯えきった彼女に写真を見せるのはあまりにも酷なように思われる。だけど…
「佐野瑞樹さん。あなたが怯えるのはわかる。だけどこのまま怯えて震えるだけでいいの? 犠牲者のはずのあなたがどうしてそんな風に怯えて過ごさなければならないの? 悪いのは…嬉しい事や楽しい事を奪われて閉ざされた世界に閉じこもるのはストーカーの方よ。あなたが…犠牲者のあなたが辛い想いをして…このまま閉じこもって、嬉しい事も楽しい事も何も感じられずに過ごしていくのはおかしいわ。何もかも奪われてしまえばいいのはストーカーの方よ…いいえ、死んでしまえばいい……」
 あたくしの横にいたかなみさんはまたあの昏い声で言葉を紡いだ。佐野瑞樹の母親も彼女のその昏い声に絶句している。
「かなみさん…あの…」
 あたくしはかなみさんの肩に手を置いて彼女を制しようと思った。今ここで強引に佐野瑞樹に写真を見せるのはよくない。あたくしたちは事件解決のためなら犠牲者の気持ちも考えずに強引に物事を推し進める警察とは違うのだから。しかしかなみさんはその声を止めない。
「それは本当に嬉しい色だったのにあいつらのせいでそれは黒に塗り潰されてしまった。私は絶対に許さない。あいつらを絶対に許さない…。あなたはそいつを許せるの? 私は絶対に許さない。恨み殺してやるわ。だけどあなたはそうやって怯えているだけなの? 私は違う。絶対に許さない。絶対に殺してやる…あいつらを…」
 あたくしはぞっとした。その昏く深い哀しみと憎悪に染まった声に…。そしてそう言う綾瀬かなみは綾瀬かなみとは別人に思えた。そう、この時の彼女は確かに綾瀬かなみではなかった。だけどこの時のあたくしはその事に気づけなかった。
 周りの温度は何度も下がったように思えた。だけど空気の密度はより濃密になってひどく息苦しさを感じさせた。背中を滝のように嫌な汗が流れた。
 絶句して呆然と立ち尽くすあたくしに、
「………写真…見せてください………」
 上半身を起して、その蒼白な顔を涙に濡らしながら佐野瑞樹がぽつりと呟いた。
「ええ。この写真の中にストーカーがいると思うんですが、知っている人物はいますか?」
 あたくしは彼女に写真を渡した。その時にちらっと横目で隣にいるかなみさんを無意識に一瞥する。その時の彼女の顔に浮かんでいるのは夜叉のような表情だった。あたくしの全身の毛がぞわっと逆立った。びっしりと鳥肌が浮かぶ体は動かない。汗はもうかいていなかった。
「…嘘…どうして……この人が……」
 佐野瑞樹はひどく狼狽した声で震えるように言った。
 あたくしは固まっていた視線を彼女に動かして、彼女の手にある写真を見る。それはやはりあの女性であった。
「この女性にはうちの小松原がついています。それでこの女性とあなたのご関係は?」
 佐野瑞樹はぼろぼろと零れ落ちる大粒の涙と鼻水で顔を汚しながら、
「私がついこの間まで派遣されていた会社の先輩女性社員です…。だけどどうしてこんな……私、この人に恨まれるような事何もしていないのに……」
 それは残念ながら関係ない。人が人を愛するのに理由なんていらないようにその逆に人が人を恨むのに理由なんていらない。そう、誰にも恨まれない人なんてこの世にはいない。どんなにいい人でも誰かしらに恨まれているものだ。哀しいことにそれが人間なのだ。
「…ちく…しょう…ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう」
 ぼろぼろと涙を流しながら囁くように小さな声で呟くその声はどんどん大きくなっていく。そしてとうとうそれは獣のような咆哮に変わった。とても哀しい慟哭に。その握り締められた両拳は自分の両の太股を何度も何度も叩き続ける。その姿は本当に痛々しすぎた。
 隣からぎりっと歯ぎしりの音が聞こえた。見れば口の端からつうっと血を流すかなみさんがいた。かなみさんの体が小刻みに震えている。
「かなみさん…」
 あたくしが彼女に手を伸ばしかけると、彼女は口を押さえて病室を飛び出していった。
 あたくしは「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう」と慟哭をあげる佐野瑞樹と彼女を泣きながら抱きしめて必死になだめている母親に、
「すみません。ちょっと、失礼します」
 と言って、彼女を追いかけた。


 →Kanami9


 叔母が従姉の子ども二人を連れて家に来たのですが、ひとりは六歳ぐらいかな? それで下はまだハイハイしかできなくって、それで一応二つヤクルトを持っていって、上の子にヤクルトをあげたら、それを見た下の子がものすごい勢いでこちらにハイハイしてきて、その姿がとても可愛かったです。(>< や、でも何だか襲われそうな勢いだった。(笑い
 やや、でもまだハイハイしかできないのに、あれほどまでにヤクルトに反応する幼児が本当にとても可愛かったです。
 上の子とキャンディーボールで外で遊んでいたのも楽しかったし。最初はぜんぜんボールを取れなかったのに、十分ぐらいかな? それぐらいで楽しそうに取れ初めて、ボールの勢いを少し強くしても取れてで、その成長が嬉しそうだった。^^
 やっぱり子どもはかわいいなー。^^

シーンⅢ 8月9日 Megumi4

2005年10月14日 | 銀の指輪のジンクス



 Megumi4


「ねえ、めぐみさん」
「ん?」
「どうして今回の綾瀬かなみさんの依頼をお受けする気になられたのですか?」
「だってうちの事務所に仕事をより好みする余裕はないだろう?」
 私は苦笑いを浮かべる。
「あら、でも、いつもでしたらサイコメトリーを使うような依頼は真剣にお悩みになるじゃないですか? それを使うかどうかって」
 愛華は悪戯っぽい笑みを浮かべて小首を傾げてみせる。
「そりゃあ、ね。この特異能力…サイコメトリーは簡単に使っていい物じゃないからさ…」
 私は左手を目の前にかざした。
「前に話したろ、この特異能力がどうやって発現したか?」
「ええ」
「この能力はさ、くだらない事に使ってはいけないって思うんだ。この能力は癒えることのない傷に傷ついた私の心が発現させた哀しみの力。この能力は私の哀しい心を癒すための物じゃないし、私の欲望に使う力でもない。この力は私と同じように癒えることのない傷に傷ついた人々を救うための力なのさ。だから私は私の心が震えた依頼にだけこの力を使うことに決めている」
 私はその瞳に確かに強い意志の光りを宿らせてそう言う。愛華はそんな私をどこか眩しそうに見つめながら「ええ」と頷く。
「今回の綾瀬かなみの依頼。確かに成仏できないここあのために一生懸命になっているあの娘の姿や優しさにも心が震えたけど、それ以上に私はここあを助けてあげたい」
 私は自分自身の気持ちを今一度確認するようにそう呟いてこくんと頷いた。
「しかし…」
 私は重いトーンの声でそう呟いて口篭もる。
「しかし…何ですの?」
 そう訊く愛華の声も重い。彼女も私の声に含まれた哀しい現実への想いを読み取ったようだ。
「ここあ、彼女に名前を…彼女が何者でどうして死んでしまったのかを彼女に教えてあげる行為は彼女を救うことになるのだろうか? それはとても哀しい現実にここあを向きあわせることになるのかもしれない…それが新たな悲劇を生み出すかも…」
 私は私の前に現れた哀しい女性の霊を思い出す。疑うべきもなくあれはここあだ。私の前に現れたここあは深い哀しみと怨念に包まれていた。
 私は後頭部に両手を添えて体をシートに預ける。
「………」
「それにしてもどうしてかなみさんにはここあさんが突然見えるようになったんでしょうかね?」
 愛華は重い私の心を紛らわせようとするかのように質問を変えた。
  私はそんな彼女にふっと優しく笑ってみせ、
「ああ、それは元々あの娘の感性が鋭かったのもあるけど、おそらく銀の指輪に触れたことでそれに残っていたここあの想いの残滓があの娘の心に流れ込んでしまったことで、心の波長が合ってしまったのさ。今の綾瀬かなみの中にはもう1人のここあがいるといってもいい」
「残留思念が心に流れこんだことで心の波長があってしまった、ですか…」
「ああ」
「ですが、それってちょっと危険なんじゃありませんの? あたくしはその辺の事はあまり詳しくないんですけど、それって憑依されているってことなんでしょう?」
「んー、まあ、それとはちょっと違うけど……おおざっぱに言えばそうなるかな。だけど流れ込んだ心の残滓はすぐに薄れて彼女の心の中から消えるさ。だから心配することはない。ただし…」
「ただし?」
「その彼女の中のここあの想いの残滓が何かの影響によって明確なる意思に変わってしまったとしたら…危ないけどね」
 私は深い戦慄を込めてそう呟いた。


 →Aika2


 HG、安田大サーカス、南海キャンディーズは本当に面白い。大好きです。^^
 教育委員会、PTAなんかに負けるな、HG!


 ようやくビデオにとっておいた舞姫、ガンパレード・オーケストラ、エンジェル・ハートを見たのですが、面白い。(><
 舞姫は前回とまったく違う次元のお話? という事ですかね。前回のも面白かったけど、今回の方が好み。
 ガンパレード・オーケストラ、やっぱりロボット物は大好きだ。(><
 マーチも面白かったので、本当に期待大。(><
 マーチは「不潔です!」と叫ぶ女の子が最後に軟派君に告白して死ぬシーンがすごく切なくって、記憶に残っているのですが、こちらは全員無事に生き残れることができるのかな? とにかくあのペンギンがののちゃんの次のアイドルなのでしょうか?


 エンジェル・ハート。
 本誌の方では香の身に起こった不幸と、描かれる遼の老化がショックで、読んでいないのですが、アニメは見ようと思います。シティーハンターは本当に大好きで、遼は本当にヒーローで、小学生の時は遼に憧れて、リボルバーのモデルガン(1000円ぐらいの自分で組み立てるプラモみたいな感じなのを)を買ったのですよね。
 ってか、ほんと、どうしてあんな惨いお話にしたんだろう。シティーハンターの本の方の最終回とかが台無し。(><。
 海原のお話とかすごく感動したのになー。
 でもやっぱり、シティーハンターの醍醐味は遼の男の本能丸出しのシーン。あれは本当に笑えて大好きです。(^^ それで香に簀巻きにされて、外に放り出されて、泣いてさ。(笑い・・・・・香。(;;

 でも北条先生はこういう事やりますよね。
 キャッツアイの方も、最後は瞳がおかしくなってたはず。。。。
 むむ。
 という事で、今クールも楽しめそうです。よろしくお願いします、ビデオさん。
 小説の肥やし。肥やし。
 
 

シーンⅢ 8月9日 Kanami8

2005年10月12日 | 銀の指輪のジンクス


 Kanami8


 あたしは今名古屋にあるインターネットカフェにいる。
 なぜ、あたしがここにいるのかというと、あたしは今日一日だけ小松原探偵事務所の調査員になるからだ。
 あたしの依頼料は今日一日のバイト代から払われるという形になるそうだ。それは助かるには助かるのだけど、なんとなくめぐみさんや愛華さんに悪い気がする。
「だからきっちりとこの仕事をちゃんとやって役に立たないとね」
 そうだ。この仕事をきっちりとやって彼女たちの好意に答えねばならない。
 それに実はこういうのって内心密かに憧れていて嬉しかったりもするしね。
 めぐみさんの話では、この依頼は名古屋の元OLの女性から依頼された悪質ストーカーを突きとめる仕事なのだそうだ。
 クライアントは名古屋の元OLの女性。名前は佐野瑞樹。24歳。
 事の起こりは今年の5月16日に彼女の元にメールが届いたのが始まりだったそうだ。しかも勝崎徹、西園慶、二人の男から。
 佐野瑞樹はそのメールを読んで嘔吐したそうだ。
 それから彼女は日々怯えながら暮らしてきた。
 暗い夜道を歩かなければならない会社帰りを恐れながら、何度も家中の鍵を点検しながら、眠れない夜を過ごしていたそうだ。
 メールはそれからも毎日届いたという。日々その内容はエグくなっていったそうだ。
 メールと一緒に彼女の盗撮写真、捨てたゴミの一部、そんな物も送られてくるようになった。
 ひどいのは僕らの子どもだよ、という手紙付きの使用済みコンドームが玄関のドアノブにかけられていたことか…。
 そしてそのメールの主たちはその毒手を彼女の会社に伸ばしてきた。
「おはようございます」
 彼女にとって、明るくそして大勢の人がいる会社はもはや唯一心安らぐ場所であったという。
 派遣されてきた当時は誰も知り会いもなくただただもくもくと与えられた仕事をこなすだけの辛い職場であったが、正規社員にもしてもらい、今は友人も頼れる上司も、そして愛しい恋人もできたその仕事場は彼女にとって大切な場所になっていた。
 だけど…
「あの、どうかしたんですか?」
 彼女は同僚の冷たい視線に狼狽した。
「あの…?」
 彼女が話し掛けても誰も反応してくれない。
「佐野君。ちょっと来なさい」
 課長に呼ばれて、彼のもとに行くことで彼女はすべてを知ることになる。
「これは事実なのかね?」
 課長が彼女に渡したのは一枚の写真付きのファックス用紙だった。それを見た彼女の眼が大きく見開かれる。
「な…何よ、これ? こんなの私じゃあありません。違います」
 それは見知らぬ中年男とラブホテルに入っていく彼女の写真と、彼女が金さえもらえば誰とでも寝るあばずれと誹謗中傷された密告手紙だったのだ。
 しかし彼女がどれだけ違うと主張しても人々の彼女を見る目は彼女を疑う冷たい物に変わってしまって、彼女はその会社にいることができなくなってしまった。
 しかし彼女にとっての不幸はそれで終わらなかった。彼女にとっての本当の不幸は結婚を誓い合っていた彼氏に、別れを告げられたことだ。
 佐野瑞樹は悪質なストーカーのために仕事も恋人も失ってしまったのだ。
 とまらない誰かのストーキングにノイローゼになってしまった彼女は手首を切ってしまった。幸い虫の知らせを感じたのか突然彼女の部屋にやってきた彼女の母親によって彼女は病院に運ばれ一命を取りとめた。
 だが、悪質ストーカーの許されない行為はまだ彼女を苦しめた。彼女が入院している病院に西園慶と勝崎徹の名前で葬儀用の菊が送られてきたのだ。
 またメールも依然届いていた。
 佐野瑞樹の母親は警察に被害届を出すことを主張したが、佐野瑞樹本人がそれを嫌がった。実は彼女の大学時代の友人がやはりストーカー被害に遭って、警察に被害届を出したのだが、その時に応対した警察官は、「あんたねー、男に何十万もの貢ぎ物させておいて、それで男の金が尽きたらはい、さようならなんじゃあ、そりゃあ男だって切れてストーカーにもなるよ。本当の被害者はその彼なんじゃないのかい? あんた、少しばかり自分が綺麗だからっていい気になりすぎているんだよ。男を金づるとしか見ていない自意識過剰のわがままお嬢様にはいい薬だね」と、取り合ってくれなかったのだ。そして警察のストーカー男への中途半端な対応のせいで、彼女が警察に自分を通報したことに切れた男は、ある朝、大学に行く途中の彼女を待ち伏せして刺し殺したのだった。
 それをすぐ近くで見ていた佐野瑞樹はストーカー適用法が創設され、幾分マシになった警察でもそれを信用できなかったのだ。
 また佐野瑞樹の母親も今も警察を相手取って裁判をやっている犠牲者となった娘の友人の家族を知っていて、その家族に対して警察がどういう態度を取っているかも知っていたからやはり彼女も本心からは警察を頼る気にはなれなかったらしい。また丁度その頃に警察官がやくざにからまれて殺された大学生を見殺しにした事件もテレビで報道されていたし。
 そこで佐野瑞樹とその家族は知人から紹介された小松原探偵事務所を頼ったのである。
 姿の見えない悪質ストーカー。彼らの正体を突きとめるのは困難に思われた。しかし有能な名探偵小松原めぐみとその助手、愛華にとってそれは困難ではなかった。
 まずは愛華の知能とパソコン技術が彼らの正体を突きとめるカギとなった。
 西園慶と勝崎徹。2人は佐野瑞樹もその家族も別人であると思っていた。
 しかしめぐみさんも愛華さんもそのメールの受信記録を見て西園慶と勝崎徹が同一人物であることを見抜いたのだ。
 それはなぜかというと、二人からメールが送られてくる時間がすべて13時から13時50分までに統一されているからだ。つまり犯人は2人の人物を装って2種類のメールを送ってきていたということだ。
 13時から13時50分の時間に限定されているということからストーカーは仕事の休憩時間にメールを送ってきているのだと考えられる。
 愛華さんは佐野瑞樹から彼女のノートパソコンを借りると、そのノートパソコンに残っていたメール受信記録から辿ってサーバーを割り出した。それはアメリカのサーバーを経由して送られてきていたメールであったのだが、それでもそれを辿ってサーバーが与えた番号を割り出した彼女の有能さにあたしは驚いた。
 そのサーバーが与えた番号を調べた結果、犯人は名古屋のインターネットカフェからメールを送ってきているがわかったのだ。
 ここでめぐみさんの特異能力、サイコメトリー能力がその圧倒的に神秘的なる力を示す。
 佐野瑞樹のノートパソコンに送られてきたストーカーのメールに残る想いの残滓をサイコメトリーしたのだ。あたしはこの話を聴いた時、思わずそんなのもありなんですか? などと興奮した子どものように大きな声で訊いてしまった。
 サイコメトリー能力によってめぐみさんが見たビジョン、それが今あたしがいるインターネットカフェの看板だった。
 めぐみさんのサイコメトリー能力と愛華さんのパソコン技術、神秘と科学によって裏付けされたその証拠に、小松原探偵事務所は次の行動に移る訳だ。
 それがよくテレビドラマや漫画、小説で見られる張り込みという奴だ。
 あたしはインターネットカフェ内で張り込み。
 めぐみさんと愛華さんは外の車の中でこのインターネットカフェを見張っている。
 13時から13時50分までの間にこの店に出入りする人間を写真に写し、その写真を佐野瑞樹に見せて、ストーカーを突きとめるという訳だ。
 あたしはイラストレーターのホームページが映っているディスプレイの下、時計の表示を見た。時刻は12時59分から13時に変わる。
 あたしはごくっと唾を飲み込むと、全身を緊張させて、さりげなくしかし注意深く店の出入り口を見つめた。


 →Megumi4へ


 本当にサイコメトリー能力などがあったら、私は警察の捜査とか、あとは超能力で事件を解決するテレビ番組に出て、捜査協力するなー、と思います。
 衝撃的な能力は外国の能力者で、眠っている時に意識が運命の図書館に飛ばされて、そこで人の名前が書かれている棚を引き出し、そこにある書類を読んで、その人の運命を言い当てるというモノ。
 これをテレビで見た時は本当に衝撃的でした。色々な意味で。


 すみません。
 メールですがどうにも何とも出来ない感じで、メールチェックは一日に一回しかできない状態ですので、反応が遅いです。どうもすみません。

 ビデオ、まだ見ていないのに上書きをしてしまった。(-_-;


シーンⅢ 8月9日 Megumi3

2005年10月10日 | 銀の指輪のジンクス

 Megumi3



「ようこそ。我が小松原探偵事務所に。私、当事務所の所長、小松原めぐみです。我が探偵事務所はお客様にお得なリズナーブルなご料金で、行方不明になってしまったペットの捜索、家出人の捜索、ストーカーの撃退、浮気調査などをやらせてもらいます。さて、今日のお依頼は何でしょうか?」
 私は営業用のスマイルを浮かべてそう言う。
 私の前に座る依頼人は緊張しきった顔でかちんこちんになって席に座っている。まあ、無理もない。こんな探偵事務所など、今時の若い女の子に無縁な物だし、そうでなければ困るのだから。
「愛華。向こうに飲み物が用意されているから持ってきてくれるかしら」
「はい」
 愛華はたおやかに微笑んで、向こうのキッチンに用意しておいた飲み物を持ってきてくれる。少し肩苦しい緊張の空気が漂っていた空間にコーヒーの芳ばしい匂いとミントの爽やかな匂いが漂う。幾分緊張がそれに和らぐ。
 私はコーヒーの匂いを楽しんでそれを口にする。
「うーん、美味しい」
 私は口の中に広がったコーヒーの苦みと喉を落ちていく温かみに満足げに頷いた。
「あなたもどうぞ。えっと…」
「かなみ。綾瀬かなみです」
「綾瀬かなみさんね」
 私はそう言って頷いた。
 彼女はじっと私をうかがうように見つめている。少し戸惑っているようだ。それとも何かを躊躇っているのだろうか?
 私は彼女が冷たいミント・ティーを飲んで小さく息を吐いたのを見てから彼女に問いかける。
「それで綾瀬かなみさん。今日はどのような御用件で?」
「えっと…」彼女は膝の上で忙しそうに両手の指を組んだりほどいたりしている。切れ長な瞳も忙しなく動く。どんな風に説明をすればいいのか考えているという感じだ。
 私は少し挙動不審な彼女が自分の考えをまとめるのを、コーヒーを飲みながら辛抱強く待つ。
「あの…この銀の指輪の持ち主を見つけたいんです」
 銀の指輪をテーブルの上に置いてそう言う彼女に私はこくんと頷く。彼女が言い終えるまでは自分の言葉を挟むようなことはしない。
「この銀の指輪でわかっているのはAforKっていうイニシャルとこれを拾った廃屋だけで…。わかりますか、これだけで…?」
 彼女は上目遣いで私を見つめながらそう訊く。
 私はふむと、少し意識して彼女を…性格には彼女の後ろを見た。
(なるほどね…)
 こうやって私と因縁が繋がったという訳か…。
 私は愛華に視線を移して、
「愛華。あなた、彼女にあれについては説明したの?」
「いえ。それはめぐみさんから説明された方がいいと思いまして」
「そう」
 私は愛華に頷くと、左手を綾瀬かなみの顔の前にかざした。彼女は私の顔を不思議そうに見つめる。
「私には特異能力があるの」
「特異…能力…ですか?」綾瀬かなみの不思議そうな声。
「ええ。サイコメトリー…それが私の癒えない傷を負った心が発現させた特異能力。この左手でね、人や物に触れればその人の想いやそれに残る人の想いの残滓の映像を見ることができるの」
「サイコメトリー…なんかすごいですね…」
 私は彼女のその言葉に心の中で苦笑いを浮かべる。
「この能力を使えばその銀の指輪からそれの持ち主を見つけられるかもしれない。いや、見つけてみせるわ。だからあなたも本当の事を話してくれないかしら? 普通は依頼人が隠したい事を詮索したり、それについて聞いたりするなんてのはルール違反なんだけど、私たち探偵ってのは例え依頼人が嘘をついていたとしてもそれが命に関わること以外なら見て見ぬふりをして依頼を遂行するのが常。だから無理には聞こうとは思わない。だけどもしもよければ聞かせてもらえるかしら? あなたが背負っているすべてを…。例えそれがどんなに非常識な事でも」
 私は静かな声で彼女に訊いた。
「幽霊に出会ったんです…」
 彼女は無意識に髪を掻きあげながらぽつりと言った。
「あたしがその銀の指輪を拾ったのはおとついで、その場所はあたしの従兄弟が住んでいる家の近くにある廃屋で、それでその時はただ単に無意識にポケットに入れたんだけど、それを昨日、廃屋に返しに行ったら、そこであの娘に…自分の名前すら忘れてしまったその廃屋から離れられない女の人の幽霊に出会ったんです。彼女、その時泣いていて。置き忘れられたソファーの上で道に迷った小さな女の子のように体を丸めて…。だからあたしは…自分の名前すらも忘れてしまった彼女のために何かをしてあげたいって思って。この銀の指輪。彼女はこの銀の指輪に彫られたイニシャルを読むあたしの声を聴いて何かを思い出しそうになったって言っていて…。だからこれが彼女の物なんじゃないかって思って…。それであたしはこの銀の指輪からその持ち主を見つけてもらいたくって…ここに…」
「なるほどね」
 私は訥々と語りながら頬を涙で濡らす彼女に小さく頷いた。泣いている彼女にハンカチを渡す愛華はそんな彼女をどこか眩しそうに見つめている。
「手がかりは銀の指輪と彼女が閉じ込められている廃屋だけ。確かに厳しいわね。だけど私と愛華なら…それは可能だわ」
 私は彼女に大胆不敵に微笑んで見せる。そんな私を見て彼女はその哀しみにくしゃくしゃだった顔をまるで花が咲いたような微笑みに変えた。
「あの、お金は払います。今は手持ちがないけど、今月末になったら絵画教室のバイト代が入るんでそれで何とか…」
 私は組んだ足を組み替えて、右手をひらひらと振って、砕けた表情を浮かべた。
「何とか? あなた、学生さんでしょう。そのバイト代だって後期からの大学生活に必要なんでしょう?」
「え、あ、はい。定期代とか、画材代、お昼代とか、まあ色々…」
 私は困ったような顔をする綾瀬かなみに微笑む。
「まあ、こっちもプロで慈善活動じゃないのだから、だから今日一日を使って依頼料は体で払ってもらうわ。そう、その若さあふれる体でね」
 ウインクする私に彼女は引きつった表情をした。

 →Kanami8へ


 おニューのパソコンとうとう始動です! でもメールが使えません、何故か! しかもOSも前まで使っていた奴よりもヴァージョンが古くなってます! 何故か容量があるのに容量が無いとインストールしてくれません! 何故だ!(><。


 太宰を見ています。
 なんだか昔やった文学史の授業とかを思い出します。^^
 あとは6番目の小夜子の作者さんの違うお話。そのお話で書かれていた昔の作家の表現が面白くってそんな所で感動した覚えがあります。(^^
 もう一度去年やった内山理奈の樋口一葉を見たいですね。^^


シーンⅢ 8月9日 Kanami7

2005年10月07日 | 銀の指輪のジンクス

 Kanami7


 アイアイさんとの待ち合わせ場所は新舞子駅前の喫茶店アモール。
 あたしは待ち合わせ時間の9時半よりも20分早い9時10分にそこに到着した。
 扉を開けるとカラーンと扉につけられた鐘が澄んだ音をあげる。それに続いて聞こえてくるのは食器を洗い流す水の音にウエイトレスの「いらっしゃいませー」という声、触れ合う食器が奏でるメロディーと店内にいる客の楽しそうな声だ。
 あたしの鼻孔をくすぐるのは芳ばしいコーヒーの匂いにパンの焼ける匂い。
 あたしは横髪を耳の後ろに流しながらクーラーの効いた涼しい店内を見回した。席はすべて埋まっている。あたしが先入観で考えるアイアイさんらしい人はいない。
「どうしよう…。外で待ってようかしら…」
 ふと店の奥のボックス席にいる高校生ぐらいの女の子と眼があった。童顔のなかなかにかわいらしい娘だ。にこっと笑った顔は花が咲いたようで見ていて微笑ましい。思わず女のあたしもにへらーとしてしまいそうだ。
 ん? にこっと笑う?
 まさかな、と思うあたしに向かって彼女は右手の甲に張ったバンドエイドをあたしに見せる。
「えー!」
 あたしは口の中で驚きの声をあげる。
 まさかあのアイアイさんがあたしりも年下の女子高生だったなんて。本当に驚きだ。
 あたしは事実は確かなのだがそれでも信じられない驚きを感じながらその席に行った。
 彼女が立ち上がる。
「どうも。アイアイこと大村愛華です」
「あ、ども。かなっぺこと綾瀬かなみです」
 あたしたちはお互いに頭を下げあって簡単な自己紹介を済ます。
 あたしは少し…いや、だいぶ挙動不審で席に座っても落ち着かない。
「うふふふ。あたくしがこんな小娘で驚かれました?」
「え、いや………はい」
 あたしが小さく頷くと、彼女はまた小さな口に手をあててくすくすと笑う。その格好はひどく彼女に似合っていてとてもかわいらしい。
「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
「んと、アイス・レモン・ティーを」
「はい。………どうぞ。お待たせしました」
 ウエイトレスは笑顔を浮かべてあたしの前にアイス・レモン・ティーとモーニングセットのバタートーストと野菜サラダを並べると、カウンターの方へと戻っていく。
 愛華さんはにこりと笑ってフォークで突き刺したトマトをぱくと口の中に頬張って、
「ここの野菜サラダのドレッシングはこの店のオリジナルですのよ。りんごをミッキサーでジュースにしてそれにしょうゆう、磨り潰したごま、からし、レモン汁、からしニンニク、おろし生姜、サラダオイルをミックスして作るんですの。なかなかに美味でしてよ」
「へー」
 あたしもキャベツをフォークですくってはぐと口に頬張る。なるほど、美味しいドレッシングだ。そのドレッシングの美味しい味に思わず顔が綻ぶ。
「ようやく笑ってくれましたわね。やっぱり美味しい料理と素晴らしい音楽は鬼をも和ませる力を持ってますわよね」
「確かに。いい物はどんな人の心の琴線にも触れるもんね」
 あたしたちはにこりと微笑みあう。最初はそれこそあたしと同じ歳か年上だと思い込んでいた愛華さんがあたしよりも年下ってのに面食らったけど、この美味しいサラダドレッシングのおかげでいつものメール上の雰囲気を取り戻せた。
「あのそれでメールに書いた銀の指輪の事なんだけど…」
 あたしがそう言うと、彼女はにこりと笑いながら、
「それは事務所に着いてからにしましょう。めぐみさんにも聞いてもらわないといけないんですから。あ、めぐみさんというのはこれからあたくしがかなみさんをお連れする探偵事務所の所長さんですの。彼女は22歳と若いですけど、依頼達成率は100%の有能な探偵さんですわ。今は詳しくは言えませんけど、彼女ならその銀の指輪とそれを拾った場所からそれの持ち主を探し出すのは可能ですわ。そう、それだけの情報があればね」
 彼女は不敵にさらりと言ってのけた。そこには自慢げな感じとか誇張している感じとかってのはない。ただ事実を述べているだけという感じだ。
 あたしは武者震いをした。腕を見れば鳥肌が浮かんでいる。やはり愛華さんを頼って正解だった。
あたしたちはメール交換の時と同じようにとりとめもないおしゃべりをかわすと、店を出て、小松原探偵事務所へと移動した。
「ここのビルが小松原探偵事務所ですの」
 そこは3階建てのビルだった。一階は駐車場。二階の窓ガラスには小松原探偵事務所というテープが張られている。三階は何だろう?
「三階はめぐみさんの自宅ですわ」
 愛華さんがにこりと笑って教えてくれる。
「さあ、どうぞ」
 あたしは駐車場の横のエレベーターから二階へとあがる。
 エレベーターを下りるともうそこはその階のフロアーだった。
 エレベーターを出てすぐのこの小さなスペースは待合室なのだろう。小さな安物のソファーとテーブルがあるだけの簡素な空間だ。
 フロアーを仕切る壁の右隅にあるドアを愛華さんがコンコンとノックをする。
「どうぞ」
 中から聞こえてきたのは若い女性の声だった。
 愛華さんがドアを開いて、あたしを先に中へと案内してくれる。
 そのフロアー半分以上を使った広い空間に置かれたデスクに座っている女性、彼女は若く綺麗でそして凛とした光りをその切れ長の瞳に宿す凛々しい女性だった。
 彼女はその綺麗な顔に優しい笑みを浮かべて、あたしに席を勧めてくれる。あたしは勧められるままに席に着いた。
「ようこそ。我が小松原探偵事務所に。私、当事務所の所長、小松原めぐみです。我が探偵事務所はお客様にお得なリズナーブルなご料金で、行方不明になってしまったペットの捜索、家出人の捜索、ストーカーの撃退、浮気調査などをやらせてもらいます。さて、今日のお依頼は何でしょうか?」


 →Megumi3へ


ラストアクション、前半のシーンが飛ばされている。うーん、あの家を飛び出して、映画館まで行くシーン、好きだったのですが。(-_-;





シーンⅢ 8月9日 Megumi2

2005年10月04日 | 銀の指輪のジンクス
 シーンⅢ 8月9日
 Megumi2


 私は事務所のソファーに座って濃いブラックコーヒーを飲みながら朝のニュースを見ていた。
 今日も朝からくだらない芸能人が離婚するとかどうとかとやっている。
「ほかっとけばいいのに、人の自由なんだから」
 などととりとめもない毒舌を吐いていると、事務所の電話のベルが鳴った。
「もしもし、こちら小松原探偵事務所です」
『あ、もしもし、めぐみさん。愛華です』
「ああ、愛華か。どうかした?」
『いえ。実はこれから1人新しい依頼のクライアントを連れて行くんでお願いします』
「クライアント?」
 まあ、来る者拒まず…っていうかうちの事務所に拒んでいる余裕なんてないから新しい仕事が来るのは全然かまわないのだが…
「そのクライアントってどんな人なのよ? 愛華の知り合い?」
 同伴出勤なのだから愛華に直接依頼が入ったことになるのでそういう事だろう。
『ええ。あたくしのメル友ですの』
 メル友、ね。まあ、愛華の事だから大丈夫だろう。彼女は17歳の癖に私よりもしっかりしている。ストーカー予備軍の馬鹿男にひっかかる娘ではない。
『9時半に待ち合わせで、事務所に着くのは10時になりますのでよろしくお願いします』
「あいよ。それじゃあ、また後でね」
『はい』
 私は受話器を置くと、軽い頭痛を感じて眉間を指で押さえた。胸には軽い鷲掴みされたような痛みを感じる。脳裏に浮かぶのはあの例の彼女だ。
「ひどいな…」
 私は椅子の背もたれにその身を任せると、そのままずるずると体をだらしなく落していく。まるで無気力な女子高生のように。そして今の自分のだらしない姿を第3者として眺めて思わずくすくすと笑ってしまう。
 今のこの私の姿を見たらきっと愛華は「めぐみさん。凛々しい女探偵はそんなだらしない格好をしてはいけませんわ」などと立てた人差し指を振りながら唇の先を尖らせてそう言うに違いない。
 どうやらあの娘の中では私の凛々しい女探偵像が刷り込まれているらしい。
 私は自分の服装を見つめる。デザイナーズブランドの黒のスーツに真っ白なワイシャツ。化粧は素顔に近い薄化粧。髪型は腰まであるロング。まるでテレビか小説に出てくるような美人女探偵のようだ。あの娘がここで働くようになるまでの半年はそれこそ普段着のノーメイクでここにこうしていたのに、あの娘はここに転がり込むと、どこからかこの服装一式を7着分調達してきて、あのかわいらしい童顔でにっこりと微笑んで「これからはお仕事はこの服装でお願いしますわね、めぐみさん。それとめぐみさんみたいな美人さんにはお化粧なんて必要ありませんけど、殿方に一番受けのいい素顔に近い薄化粧もお願いしますわね。めぐみさんはこの事務所の顔なんですから」ときたもんだ。しぶしぶ着替えた私を見て、「やっぱりこれよねー」などと軽く頬を赤らめて呟くし。
「あの娘もなー。なかなかどうして変な娘よねー」
 愛華は実は文部省公認のIQ200の天才児で実はもう既に飛び級でアメリカのコロンビア大学を卒業しているのだ。実家は旧華族の良家だし。
 その彼女がうちみたいな小さな探偵事務所でそこらのファーストフード店よりも安い時給で働いているのだからもったいないというかありがたいというか。
 私は唇に手をあててくすくすと笑った。
「ふぅー。ようやく笑い終わったわ」たっぷりと笑って私。
 私は立ち上がると、これから出勤してくる有能な相棒のためと彼女が連れてくるクライアントのためにティーの用意をし始めた。


 →Kanami7へ



 …………やっちまった。
 治したい事の一つ。散々迷って、自分的にはものすごく高い買い物をして、でも高いから買った事にもう既にちょっぴりと後悔し始めて、お金だけ払って、品物を貰い忘れて去ろうとして、店の人に呼び止められる事。
 根っからの貧乏性。一般市民。

 
 

シーンⅡ 8月8日 Kanami6

2005年09月25日 | 銀の指輪のジンクス


 Kanami6

 
アイアイさんはあたしのメル友だ。彼女とはメールの交換だけで実際に会って話したことはないけどそれでも彼女が頭がいいことは彼女のメールからわかっていた。それに前にも彼女には友達の事とか絵の事、彼氏の悩みを相談してそれについて的確なアドバイスなどをもらったりもしている。そう、アイアイさんはとにかく頼れる人なのだ。
 だからあたしは彼女を頼ることに何の抵抗もなかった。あたしは自分自身の限界を知った。普通ならもう少し自分自身の力で何とかしようと足掻くべきなのかもしれない。だけど今はそんな体裁とか気にするべきじゃないと思う。言い方は悪いかもしれないけど利用できる物は利用する。そんな風にしなければここあの本当の名前を知ることなんかできないんじゃないかと思ったりもする。
 それでも彼女にここあの事を話すのは躊躇われた。信じてもらえないと思うしそんな事を書けば彼女にファンタジー話かと思われる可能性もある。実際あたし自身だって今、こうやってパソコンのキーボードを叩きながらここあと会った事は夢なんじゃないのかとも思ったりもするし。
果たしてアイアイさんからの返事はあたしが彼女にメールを送って4時間後に返ってきた。


 どーも、かなっぺさん。アイアイです。
 どうやらかなっぺさんは何やら大変な物を拾ってしまわれたようですわね。
 さてさて、かなっぺさんは拾った指輪を持ち主に返してあげたいんですのよね?
 しかし指輪を返そうにも持ち主はわからない。わかっているのはAforK のイニシャルと落ちていた場所だけ。
 うーむ、確かに情報が少なすぎますわ。普通ならね。だけどそれだけでも何とかできる方法を知っていましてよ、あたくし。
 実はあたくし、凄腕の探偵さんと知り合いですの。彼女ならばきっとその指輪の持ち主を探し出してくれますわ。
 そう、あなたが彼女の心を震わせることができたのなら、ね。
 かなっぺさんの明日の御予定はどうでしょう?
 もしもその指輪の件を依頼するのでしたらあたくしも御一緒についていきますから。
 お返事をお待ちしております。




「探偵さん……か…」
 うーむ、確かに探偵さんの仕事にはそういう物が含まれるとは思うけど…だけど…。あ、でも探偵さんなら独自ルートとか使ってあの廃屋の持ち主とか見つけられるかも。だとしたらそこから…。
 あたしは急いでアイアイさんに返事のメールを打った。


 →Megumi2へ



 足がすごく痛いです。
 何故だ? 結構身体は動かしているのですが。。。筋肉が違うのかな?
 


 漆原友紀先生のフィラメントを今更読んだのですが、すごく面白かったです。迷い猫、すごく好きですね。(^^
 一話目のお話もすごく好きだったし。
 やっぱりこの先生のお話はすごく好きです。しんみりとして、リズムが心地良くって、懐かしくって。
 うーん、蟲師のアニメ、楽しみです。^^ 世界が壊れていないといいけど。というか、このお話でアニメオリジナルをするとしたら、脚本家さんは本当に大変だと想う。やっぱりこの蟲師の世界を書けるのは先生だけだと想うから。


 うわぁ。蝉しぐれとかは小説が並べられているのに、何故に甲賀忍法帳は並んでいないのだ。。。ネットで買うのは何だか怖いからな~。図書館はあるだろうか?
 でも原作の朧はちと雰囲気が違うんですってね。うーむ。朧の萌え。。。。


 さっきまでマグマのお話の洋画を見ていたのですが、凄かったです。
 本当に地震とか、そういうお話を見るたびに東海大地震デットゾーンに住んでいる身としては人事ではないな、と想います。


 災害系の映画で一番印象に残っているのは伊勢湾台風物語でしょうか?
 この映画は小学校の時に体育館で見せられたのですが、これも結構後を引き摺った映画でした。
 お兄ちゃんが妹をおんぶしたまま死んでいた、という光景が本当にお兄ちゃんとしては、辛かったです。死ぬ時の会話とか、そういうのを想像して本当に沈んだし。父親がだけが生き残って、引き摺りながら生きているのも辛かったし。男は仕事があって、それで家に居られないで、家族を守りきれなかった、というお話がやっぱり辛いかな。
 でも本当に火乗るの墓と伊勢湾台風物語はもう二度と惨すぎて、見たくない映画で、やっぱりこの二作品を平然と最初から最後まで、ふーん、辛いね、という感じで見られる人が信じられません。。。



シーンⅡ 8月8日 Aika1

2005年09月23日 | 銀の指輪のジンクス


Aika1



 あたくしの名前は大村愛華。小松原探偵事務所で所長の小松原めぐみさんの秘書兼事務員、調査員をやっていますの。
 あたくしの雇い主である所長の小松原めぐみさんは今年で22歳。あたくしよりも5歳上のお姉様。
 元々はこの小松原探偵事務所はとある理由で警察をおやめになっためぐみさんのお父上様がやっていた事務所だったんですけど、そのお父上様が引退して、彼女が事務所を引き継いだんですの。
 パソコンのキーを叩いて、クライアントに提出する報告書をプリントアウトすると、それを机でリズミカルにトントンと整えて、端をホッチキスでとめる。
「めぐみさん。今回のクライアントに提出する報告書が出来上がりましたわ」
 あたくしがそう言うとソファーに寝転んでいためぐみさんはむくりと上半身を起して乱れた髪を掻きあげる。
 どうやらちゃんと眠らなかったらしいですわ。
「おっ、もう仕上げてくれたの? ありがとう。そこに置いておいてくれる。もう一眠りしたら私がクライアントに持っていくから。ご苦労様。愛華はもう帰っていいよ。疲れたろ。今日は早く帰って明日のためにゆっくり休みな。今回はめずらしく連ちゃんで仕事が入ってるからね」
 あたくしはひょいっと肩をすくめる。めぐみさんは凄腕の探偵なのだがいかんせん昨今の不況のせいで一つ仕事を仕上げると、次の仕事が入るまでしばらくの間開店休業状態に入ってしまうのが常なのだ。今回のようにこの次にも仕事が入っているのは本当に珍しい。
 実はめぐみさんにはある特異能力があって、その能力をいかせばよくテレビドラマや映画、漫画に小説に出てくる探偵のように事件を解決できる人なのだが、彼女はその特異能力を無暗に使うのを嫌っている。彼女がその特異能力を使うのは本当に困っている善良なる人々を助ける時だけだ。そんな彼女だからこそあたくしも彼女を慕ってここで働いている。
「あのめぐみさん。それはあたくしが持っていきますから、めぐみさんは眠っててくださいな。それとレンジの中にエビピラフを作っておいたので、後で食べてください。冷蔵庫に野菜とフルーツを使った特製のミックスジュースも冷やしてありますから」
 めぐみさんはにこっと笑って、
「本当に愛華はいい娘だねー。どう、私と結婚する?」
「な…なな。女の子同士は結婚できませんよ」
 耳まで真っ赤なあたくしを見てめぐみさんはくすくすと笑うと、大きなあくびをして、
「それじゃあ、お言葉に甘えてもう少し眠らせてもらうわね。よろしく」
「はい」
 あたくしは新舞子のオフィス街の外れにある事務所から出ると、真っ直ぐに今回のクライアントの元に向かう。クライアントに報告書を提出し、依頼料を受け取ると、あたくしはそのまま同じ新舞子にある自宅のマンションに戻った。
 あたくしは部屋のクーラーをつけると、バスルームに入って、シャワーのノズルをひねる。
 熱いシャワーの迸りは、あたくしの体をゆっくりと撫でて、足の指先からタイルに広がって排水溝に流れていく。
 あたくしは鼻歌を歌いながら自分の裸身を確かめるように洗う。豊かな胸の双丘も美しい腰のくびれも腰から下の優雅な婉曲もあたくしの自慢だ。それらをいつか出会う旦那様のために綺麗に洗うと、シャワーのノズルをひねって、濡れた頭をぶるっと震わせる。
 濡れた髪を絞って、
「ふぅー。髪、だいぶ伸びましたわね」
 あたくしは濡れた前髪をぴっと指で弾いた。
 バスルームから出て、バスタオルで頭と体をふくと、バスタオルを体に巻いて、うなじを流れる水滴はそのままにあたくしはリビングに移動して、パソコンを起動させた。
 キッチンの冷蔵庫から冷たいアイス・コーヒーを取り出して、それを飲みながらパソコンの前に座る。
「あら、かなっぺさんからメールが来てますわ」
 かなっぺさんはあたくしがよく行くホームページの管理人さんだ。彼女は何でも美術の先生を目指す美大生さんで、彼女のホームページにはいつも綺麗な絵が載せられている。あたくしのパソコンの壁紙も彼女の描いた妖精の絵だ。彼女の性格の良さがよく出ている幻想的で綺麗な絵である。
 あたくしはキーを叩く。画面に出てきた彼女のメールの文章は、


 こんばんは、アイアイさん。
 実はちょっと相談したいことがあるんだけど、えっと、アイアイさんだったらAforKと彫られただけの銀の指輪からそれの持ち主を探そうと思ったらどうしますか?
 えっと、わかっているのはだからその銀の指輪とそれが落ちていた場所だけ……これだけの情報だけでその持ち主の名前を見つけられると思いますか?
 いや、何言ってんのかしら、この娘? とかって思われるかもしれないんだけど、その…ちゃんと答えてもらえたらすごい嬉しいです。
 今、あたし、すごい困っていて…。その…あるきっかけで拾った銀の指輪の持ち主を見つけて返してあげたいんです。だけどわかっているのは彫られたイニシャルと落ちていた場所だけで…。返してあげたくっても情報が圧倒的に少なくって…。
 アイアイさん、あなただったらどうしますか?


「ふぅーむ。それは確かに情報が圧倒的に少なくってね。これだけではかなり苦しいですわ。だけど…」
 だけど安心してください、かなっぺさん…あたくしは得意げにくすりと微笑む。
 濡れた髪の毛をゆっくりと掻きあげて得意げに微笑むあたくし。
 確かに普通に調べようと思ったらそれだけでは苦しいですわね。だけどあなたがもしもめぐみさんの心を震わせることができたなら…
「きっとあなたなら大丈夫ですわ。だからかなっぺさん…」
 あたくしはパソコンのキーボードを叩き始めた。


→Kanami6へ



 うわぁー、色々と想う所のあるこのシーンですが、カットせずに自戒も込めてUP。
 小説を持ち込んで、編集者さんに読んでもらった時のアドバイスを本当に思い出します。。。。や、これではない小説ですけどね。これは2002年製ノベル。
 でも想いっきりけなされたけど、勉強になりました。うん。
 ちなみに漫画とかもちこんで、それで漫画の感想とか指摘以外にどういう事に興味を持っているとか、趣味は何だとかそういう漫画以外の事を訊かれると脈があるらしいです。^^



 仕事が終わってからバジリスクの映画を見てきたのですが、感想は・・・・やちゃった、ですかね? 何の予備知識も無しに見たら面白いと想うけど、最終回を引き摺ったまま見に行ったので、ちょっと、その、脚本家、放課後に校舎裏に来い、ってな感じ? いや、教えてもらっていたけど・・・・。ねぇー?(-_-;
 め組みの大吾もめさめさふざけるなぁー! 漫画をおまえはちゃんと読んだのかぁ――――って感じで、脚本家とかを小一時間ほどねちねちくどくどと問い詰めたかったけど。。。うん。第一話のくだらなさに見るのをやめため組みの大吾。
 そういえばタッチもやっちゃった、っていう感じらしいですね。。。(^^;
 H2も酷かったしなー。っていうか、配役が。。。。
 やっぱり漫画や小説の人気にあやかって、&俳優とかだけで人気を得ようとしたらダメで、脚本家はちゃんと原作を読んで、余計な事はするな、っていう感じですかね? 特にキャラの立ち位地を変えるな、とか。うん。うん。うん・・・・・・・・(;;
 本当に何で脚本家とか監督はあーやってくだらない余計な事をするかな? うーん。


 という事で次は原作です。甲賀忍法帳1巻。
 ネットで色々と調べたら知らずに見ていたあの映画もそうだったのか、って感じでびっくりとしました。^^ 図書館にあるかなー。どきどき。
 ちなみに原作は漫画以上に面白いのだとか! 本当に楽しみです。
 そして全てを1巻から5巻まで読んで、また読み直したり、最終回を見直したりすると、こう、また色々と切なくなりますね。(;;
「大好きです、弦之助様」
「朧。朧」
 自害するシーンと、朧を抱きしめながら弦之助が名を呼ぶシーンは本当に。
 本当にもう二人で逃げちゃえば良かったのに、と想ってしまう。でも弦之助は無理かな、それは。。。。。(ー_ー;
 そしてネット巡りで見つけた蛍火の胸の膨らみは危険、という漫画を見て笑ってしまいました。^^
 多分きっと、絵が描けたら、バジリスクの絵ばかりを描いているのだろうなー、と想いました。
 




シーンⅡ 8月8日 Kanami5

2005年09月19日 | 銀の指輪のジンクス


 Kanami5


 さてと、胸叩いて見栄張って得意げにあーは言ったものこれからどうしよう?
 あたしは公園のベンチに座り込んで抜けるように青い空を見上げて考え込んだ。だけど夏の暑さにだれて思考が上手く働かない。
 セミの大オーケストラと眩しすぎる太陽の光りにあたしは辟易して冷たいクーラーが効いている喫茶店トライメライに入った。
 扉につけられた鈴の澄んだ音に続いて、「いらっしゃいませー」とウエイトレスの明るい声が店内に流れる。
 あたしは店の奥にある席に着く。
 店内に流れるのは有線放送から流れるクラシック。お客の笑い声。食器が奏でるメロディー。鼻孔をくすぐるのは芳ばしいコーヒーの匂い。
 あたしはしばらくぼーっとする。
「お待たせしました。どうぞ」ウエイトレスはあたしの前に冷たいおしぼりと水滴が浮かんだ冷水を置いて、メニューを渡してくれる。
「んと、アイス・ティーね。あと…(20秒ほど理性と欲望の葛藤の沈黙)チーズケーキ」
 うぅ…目指せ5キロ減だったのに…。だけど夏の暑さに疲れた体が甘い物を要求するの。
「はい。アイス・ティーとチーズケーキですね。これですとケーキセットになりますから、アイス・ティーは300円になります」
 ウエイトレスはころころとした笑顔を浮かべてそう説明すると、メニューを受けとってカウンターの方へ。
 あたしは冷たいおしぼりで手を拭くと、冷水を一気に飲み干した。喉の渇きはそれで潤って、感じていた暑さも幾分安らぐ。
 あたしはすぅーっと額に汗で張りついた前髪を掻きあげる。そして憂鬱げにため息。
 頬杖をついてお店のウインドウの向こう…手をつないでプールに行く小学生の女の子たちの背を見送りながら考える。
「それにしても手がかりはこの指輪だけなのよね…」
 あたしは手の平の上の銀の指輪をじっと見つめる。
 この指輪を調べればOKって…何がよ、あたし? あの場では勢いであーは言ってしまったけど…さてさて、どうしたもんか…。
「おまたせしました」
 ウエイトレスは丁寧にアイス・ティーとチーズケーキを並べてくれる。
「ごゆっくりどうぞ」
 あたしはチーズケーキをフォークで切って、ぱくと口に入れる。
「うーん、美味しい」
 と、感じてあたしはわずかばかりの罪悪感に襲われる。ここあは今あたしが感じたこのチーズケーキを美味しいと思うことはもうできないのだ。ううん、それだけじゃない。これからあたしが感じるであろう人生の様々な喜びを彼女はもう永遠に…
 一体彼女はどれぐらい前からあの廃屋にいたんだろう?
 もう自分がそこにどれぐらい居たのかもわからなくなるぐらいにあそこに独りいた彼女。
 そう。そんな彼女のためにもあたしはこんな少々の困難に負けていられない。
「うん、そうよ。あたしはここあのために絶対に彼女の名前をつきとめてみせるんだから」
 がんばれ、あたし。負けるな、あたし。すべてはここあのために。うん…あたしは両手を握り締めて頷いた。
「…と言ってもよ……どうすればいいのよ…。イニシャルはKなのよね。まさかAはないわよね。いや、考えられなくもないか…。女の子から男の子へのプレゼントってのも考えられなくないものね」
 あたしはストローに口をつけてアイス・ティーを一口口に含む。うーむ…
 あたしは天井を振り仰ぐ。天井にはセンスのいいアンティークのランプがぶらさがっている。それから降り注ぐ柔らかな橙色の光りは上品よくどこか心地よく感じられる。
 あたしは腕を組んでうーんと考え込む。
 ここで今あたしの手にあるカードを整理してみよう。
 ここあの名前を知る手がかりになりそうなのは銀の指輪。その銀の指輪には製造番号なんてのはない。デザインはそこらで売っているようなよくある物だ。おそらくそこらの露天商で売られていた物だろう。彫られたイニシャルはAとK。それだけだ…。それだけなのだ…。手がかりが圧倒的にない。
「はぁーあ」
 あたしは組んだ足を組み替えて頬にかかる髪をぞんざいに掻きあげた。
 ストローでアイス・ティーをかき混ぜる。からーんとかすかに氷が奏でるメロディー。
「あの廃屋は……何か関係があるのかしら?」
 ここあはあそこから動けないと言っていた。って事はよく聞く自縛霊という奴か。色んな心霊番組から仕入れてきた情報が正しいなら要するにあそこは彼女が死んでしまった場所だということだ。もしくはものすごく思い入れのある場所か。
「だったらあそこを調べれば何かわかるかも…」
 その予感にあたしの顔は嬉しさに崩れる。
 あたしは行儀悪く残りのチーズケーキを一気に口に頬張って、アイス・ティーで口の中のそれを無理矢理流し込むと、会計を済ませて店を後にした。
 あたしはすぐそこにある本屋に飛び込んで住宅地図を広げる。しかしあの廃屋の場所には名前が書かれていない。
「ちょっと、書いてないじゃないのよ」
 あたしは舌打ちをした。
 じろじろと迷惑そうにあたしを見てくる店員の目も気にせずにあたしは他の住宅地図も広げるがやはり書いていない。ちぃ、ほんと役に立たない。
「ごっほん」
 と後ろから嫌味っぽい咳払い。振り返れば店員がいてわざとらしくあたしの横で本の整理をし始める。はいはい、すみませんねー。
 あたしはぷいっと本屋から出ていく。自分でも自分の事を嫌な客だと思う。
 あたしはその後、新舞子中の書店や図書館を回ったが結果はどれも同じだった。
「うー、限界かしら…」
 家路につく人々の雑踏の中で立ち止まって見上げた空はゆっくりとその色を青から紫紺色に変えていく。西側の空は橙色だ。泣きたくなるぐらいに綺麗な空。あたしはその時の心情もあって本当に泣きそうだった。ものすごく寂しくって物悲しい。
「市役所か法務局に言っても一介の女子大生に教えてくれるとも思えないし……うーん、どーしよう…」
 あたしは道に迷った子どものように途方に暮れながら夕方の空へとその色を塗り替えていく空をいつまでも見上げ続けていた。


 →Aika1へ



 今、TBS(うちの方はCBC)でやっているスポーツゲーム番組を見ているのですが、面白いですね。^^
 中学高校は運動部に入って、身体を鍛えて、かめはめ波を撃てるように(最低でも通背拳は撃ちたかった!)修行していたのでこういうのは昔の血が騒ぎます。
 サスケとかを目指して身体を鍛えている人もいますものね。
 うーん、面白そうだなー。
 でもほんと、風雲たけし城は出てみたかったです!(笑い
 あの頃はチョンパ、という遊びが流行っていて、たけし城系のキャップも集めていたなーと懐かしく。^^
 何百枚とあったはずなのに、どこへ行ってしまったのだろう?
 でも一番はまったのはミニ四駆、ですねー、小学校時代の想い出は。
 ミニ四駆はお小遣いを貰うたびに玩具屋に走って、コロコロコミックや、ミニ四駆の専門誌を片手にシャーシをキリで穴だらけにして、モーターを取り替えて、それから車軸をガスコンロで焼いて、鍛えて、ホイルに穴を開けようとして、逆にホイルがころぉっと転がって、ホイルを持っていた手にキリをぶすっと刺したり。。。。血だらけになって改造して、日曜日に近所のおもちゃ屋のレースに参加したり、名古屋のデパートに公式レースに出たり。おわぁ、懐かしい。(><
 ラジコンとかすごい高い物は高いから手が出なかったけど、ミニ四駆は安かったしで、ちょくちょくと改造できて面白かったしで、本当に楽しかったかな。^^
 漫画のようにマシーンの名前を叫ぶと、ミニ四駆が早くなったりしたらもっと面白かったのだろうけど。<おい。
 でも漫画の設定で何がおかしい、って、どうしてミニ四駆の学校があったり、ミニ四駆で世界が征服できるんだ!ってそこ等辺がちょっと笑える。(^^
 ああ、でも高い物は買うのを躊躇するくせに単価の安い奴はには容易に手を出して、そして計算するとすごい額になっているのは昔から変わらない私の性格。。。。。


 子どもの頃に漫画で一番実現して欲しかった技術はやっぱりプラモデルを機械にセットして、頭にヘンテコなヘットギアをかぶると、意識がバーチャル空間に飛んで、そして自分が自分のプラモデルのコクピットにいるような感じで戦う奴、あれが現実化してほしかったですね。あれが現実になったら本当に凄いと思う!
 最近と言ってももう5年くらい前だけど、月間エースでそういう漫画もありましたしねー。^^
 あれは本当に子どもの夢かな?^^
 や、でもバーチャル空間に意識が飛ぶのは少し怖いですね。
 クラインの壺のような感じになったら、本当に怖いですし、実際問題未来においてこういう技術ができたら、クラインの壺の主人公のような事件に巻き込まれる人もいるだろうし、それこそゲームと現実の区別がつかない人も出るだろうし。むむむ。



 だけど例えばまた話が凄い飛んで、あれなのですが、こういうバーチャル空間が実用化すると、戦争って、どうなるんでしょう?
 国の代表チームを決めてバーチャル空間に飛ばして、そして戦って、戦って、戦い抜いて、最後の勝者の国が地球のリーダーになるとか、そういうのがあったりするのでしょうか?
 そういうのは血の流れない理想的な戦争とかって、もてはやされるのでしょうか?
 あとは大好きで尊敬している物書きさんのサイト(本当にいつかまた書きたいと思えるようになったら、絶対に小説書いてくださいね。^^ 本当にすごく尊敬していますし、世界観が大好きだったので。^^)にあった小説のように、犯罪者に自分やった事件をバーチャル空間で体験させる刑なんてのができたりもするだろうし。
 や、刑は賛成かな。そうすれば絶対に再犯だなんて事はしなくなるだろうし。




 今日は午前中にちょっとごちゃごちゃとやって、午後から図書館に行ったのですが、うちの方の図書館は本当に書庫が豊富で、普通にライトノベルなんかもあったりして、嬉しいです。^^ QEDを借りてしまった。そしてまたICOは借りられていた。。。。
 狂笑面を借りに行ったのですが、無かった。。。。
 反応ありがとうございます、Tさん。(><
 おお、そうなのですか! お母さんが教授の本を持っていたとか、それを語る女の人の表情が意味ありげだったから父娘なのかと思っていました。^^
 


 でも図書館に行くと、皆、本当に観覧席で勉強していますね。
 私は図書館まで行く時間がもったいない&何事も自分のペースでやりたい派だったので、家で普通に勉強していたのですが。だけど何となく、勉強できる、というのが羨ましかったかな。ここら辺は本当に学生の時には感じなくって、ただただ勉強というのは苦痛でしかないんだけど、でも本当に学校を卒業してしまうと、勉強が出来る学生が羨ましいですね。や、やる気さえあればいつだって自分で勉強は出来るんですけど、でもそういうのとはやっぱり違うから。
 小中高大生の皆さん、しっかりと勉強して、自分の夢、掴んでくださいましね。^^

シーンⅡ 8月8日 Megumi1

2005年09月18日 | 銀の指輪のジンクス

 Megumi1


 私は心の中で大きくうんざりとしたようにため息を吐いた。
(これでもう何度目かしら? 最近はなかったってのに。っとに、鬱陶しいったらありゃしない)
 私は憂鬱そうに金縛りにあって唯一自分の意志で動かせる瞼を開いた。
 周りは深夜の闇だ。その闇の中にあって唯一ぼぅっとした青白い光りに包まれた10代後半から20代前半ぐらいの女が私の上に乗っている。
 彼女は白いワンピースを着ていて、綺麗な顔をしている。しかしその綺麗な顔に浮かんでいるのは深い憎悪と哀しみ、絶望の表情だ。成仏できないでさ迷っているのだからそれはまあ、当たり前だが…。
 私がじっと女を見つめていると、女はその細い腕を伸ばして、私の首に指を絡める。細い指に意外に強い力が込められた。
 女は私の首を絞めながら何かを呟いているが、その呟く声が小さいためと酸欠のせいで全身の感覚が痺れて麻痺しているせいで聴き取ることができない。私は彼女のその青い唇の動きで彼女が何を言っているのかを読み取る。彼女はこう呟いていた…


それは本当に嬉しい色だったのにあいつらのせいで…あいつらのせいで…それは黒に塗り潰されてしまった。私は絶対に許さない。許さない。許さない。あいつらを許さない…


 私は茫洋となっていく意識の中でお経を唱えた。転瞬、私の上に乗っていた女が周りの闇に溶け込むようにして消える。それと同時に金縛りが解け、激しく咳き込む。今更ながらに全身からどっと冷や汗が流れる。全身の毛穴は恐怖で開いていた。
 あの日から見るようになったこの世のならざる者。哀しい彼らの姿を見慣れることはない。
 今度は哀しい彼女を追い払うためではなく、彼女の哀しい魂が成仏できるようにお経をそっと心の中で唱える。
「それにしても…」
 私は首を押さえながら掠れた声で呟いた。
 それにしても彼女はどうして私の前に現れたのだろうか? 何か私に因縁が繋がったのだろうか?
 私は汗に濡れた顔を片手で覆った。指の隙間から暗い天井をじっと見つめる。
 時計を見れば時刻はam2時50分。いくら夏でもまだ夜が明けるまでにだいぶある。昨日の徹夜もあってまだ寝たりない。しかしもう一度寝直す気にはなれなかった。私の心に彼女の魂を染める哀しみの残滓が残っているから。
「シャワーでも浴びてコーヒーを飲むか…。やりかけのゲームもあるし…」
 私は起き上がると、汗で額に張りつく前髪をそっと掻きあげた。
 ノズルをひねると同時に迸った熱いシャワーに身をゆだねる。
 熱いシャワーの迸りは私のうなじから胸の双丘の間を流れて、腰から太股を優しく撫で、そして指先からタイルに広がって排水溝へと流れていく。それはとても優しく心地いい心安らぐ時だった。
 茫洋な光りを宿す瞳に映るのは白い湯気で覆われたバスルーム。しかし私が見ている光景はそこではない遠い昔。そう、16年前の6歳の時の私が見ていた光景。
 私の頬を濡らすのは熱いシャワーの迸りではなく瞳から流れた涙。
 私の父は私が2年前に受け継いだ探偵事務所を開く前に刑事をやっていた。
 刑事であった父は私の自慢の父だった。彼はテレビに出てくる刑事のように優しくそして強く正しい刑事であったから。
 しかし正義があれば悪がある。正義と悪は相成れない。
 その人がどんなに正しかろうが人を想う人の心は千差万別。
 私にとっては正義の味方、正しい刑事であった父も、彼を憎む輩も当然いる。
 そしてそんな輩があの日、ついに父に牙を剥いた。とても卑劣で卑怯に。
『お母ぁーさん』6歳の私は泣きながらお母さんに助けを求めた。
『めぐみぃー』お母さんの叫ぶ声には狼狽と恐怖。
『死ねぇー』犯人の狂喜に染まった声。
 そう、昔、父に逮捕されたそいつは父を逆恨みして、父がいない時に家に侵入してきて、6歳の私を出刃包丁で殺そうとしたのだ。その時の私は恐怖に泣き叫んで母の名を呼んだ。
 振り下ろされる出刃包丁の切っ先を私は恐怖で大きく見開いた瞳に映していた。しかし次の瞬間、その大きく見開かれた瞳に映ったのは私の血に染まった包丁ではなく顔を苦痛に歪めながらも娘を守り抜くのだという強い母性の光をその涙に濡れた瞳に宿す血に濡れた母の顔。
 そう、私の母は出刃包丁が振り下ろされるよりも前に私を抱きしめて盾となってくれたのだ。


 出刃包丁に刺し貫かれる度に、その出刃包丁が抜かれる度に小刻みに痙攣する母
 母の体を伝って私に触れる母の熱い血
 母の死体に出刃包丁を何度も刺しながら狂ったように哄笑する犯人の笑い声


 それらは私の心に深く深く傷を刻み込んだ。決して癒えることのない傷を。その傷は今も癒えることなく私の心をじくじくと腐らせていく。
 それはいつだってリアルに私にその光景を見せる。
 癒えることのない傷口から流れ出る赤い血に染まる私の心はあの日その力を発現させた。
 目の前で母が殺されたショックと自分が殺されそうになったショック、自分のせいで母は死んでしまったのだという罪悪感、醜すぎる人の憎悪と殺意、それらに心が壊れてしまった私は人形のように無表情になってしまい、壊れた心は何も感じられなくなっていた。
 ただただ母を恋しがりすべてに恐怖して泣きながら過ごす日々。
 しかし母が殺された時に身につけていた指輪に左手で触れた瞬間…



 めぐみは…めぐみだけは…めぐみだけは絶対に守ってみせる
 めぐみは絶対にあんたなんかに殺させない
 お願い神様。私に…私にめぐみを守る力を授けて
 生きて、めぐみ。あなただけは生き伸びて…



 それは母の指輪から私の壊れた心に流れてきたあの時の母の想い。それは優しく私の心に刻まれた癒えない傷をそっと撫でていく。その度に感じる母の愛と温もり、そして鋭い痛み。それらが私に今自分が生きていることを痛いほどに教えてくれる。



 母が守ってくれた命
 母が望んでくれた生



 だから私は心に癒えない傷を抱きながらそれでも生きている。心の慟哭をあげながら。
「ふぅー」
 紅唇から吐き出された白い息は周りの湯気に溶け込む。
 私は顔を上に向ける。勢いよく顔を叩くシャワーの迸りは私の顔を濡らす涙を洗い流してくれる。
 母の想い。そう、私はさっきのあの哀しい彼女に母を見たのだ。
「やりきれないな、本当にさ…」
 私は幼い少女のように小さく囁くように呟くと力無く首を振った。
 なんとなく…いや、これから私はあの哀しい彼女に関わりを持つのだと、無意識のうちに私は確信していた。



→Kanami5へ


 わー。わー。今日発売のブリーチやナルト、すごかったですね。(><
 ネタバレはコメントに書いておきます。^^


 なんだか今日のレイは見ていて辛そうでした。そっかー。レイもテロメアが短いのですね。そっかー。なんだか本当にかわいそうだった。(--
 クルーゼもわりかしと好きだったですし。もしも第三部があるのならそれの最終回はグレミーのニュータイプ部隊のようにたくさんのクルーゼの部隊が見てみたいなーと。ってゆーか、ラクスの怒った顔、ブスですね。(-_-; やっぱりラクスは種の最初の頃の天然が一番良いと思う。うん。


 歴史の教育でも思うんだけど、古代史にちょっと時間をかけすぎだと思う。中学、高校も同じように1、2年で古代史に時間をかけまくって、近代史はさらりと流すだけですものね。近代史を重点的にやった方が良いと思うのだけど。そこら辺も中国とかの歴史問題のズレの大きな違いの一つだし。むむ。


 Tさんの日記に反応して。
 乙一作品面白いですよね。(>< 乙一作品は全部面白いですが、私は心の携帯電話のお話と、花娘のお話、暗黒童話、GOTHがお気に入りです。^^ うわぁー、携帯電話と花娘はどの文庫本に収録だったかな? とにかく本当にこれは感動するので、お勧めです。調べたら乗せますので、よろしかったらお読み下さいまし。(拳)
 暗黒童話は結構ぐろいです。^^;GOTHもだいぶダークですが、面白いですよ。^^
 キーリやMissingも本当にお勧めです!

『狂笑面』、私もドラマを見ていたのですが、あれって、あの主人公の女教授さんとオープニングで殺された教授って、父娘なのですか? なんとなく見てて思ったのですが、説明が無かったので。むむ。
 民俗学大好きで、本気で通信教育で大学の講義を受けようかな? とか思っていたりするので、ちょっとこのシリーズの本、気になります。^^
 Missingででも色んな民俗学の知識や、オカルトの知識を仕入れたのですが(ふっ。所詮私の知識などこんなものさ)、本当に面白いですよね。八雲もすごく面白いですし。^^
 あぁー。でも十二国記、良いなー。羨ましいなー。買い揃えようにもでも置き場が。。。。んー、図書館置いてくれないかなー。。。。電波を飛ばしてみよう。((((((←電波



シーンⅡ 8月8日 Ghost3

2005年09月16日 | 銀の指輪のジンクス

 Ghost3


「かわいそうに。哀しいね。とても哀しいよね。だけどあたしにはあなたに気の利いた言葉をかけてあげることができないの。だからね、あなたが泣き止むまであたしはあなたの隣にいてあげる。そしてあたしもあなたと一緒に泣いてあげる。ごめんね、今のあたしにはそんな事しかしてあげられないの。ごめんね」
とても優しい声でそう言ってくれるのはいつの間にか私の隣にいた昨日の女の子。
『……ありがとう…』
 私が顔をあげてそう言うと彼女は小さく顔を横に振った。そしてとても綺麗に微笑んだ。その瞳に私の哀しみを自分のことのように哀しんでくれる優しい光りを浮かべて。
「ごめんね、こんな事しかしてあげられなくって」
 頬を伝う涙をそのままにそう言う彼女。私はそんな彼女の涙をぬぐってあげたくって手を伸ばすけど、今の私は誰にも触れられないことを思い出す。彼女の頬に伸ばされた手は哀しげに宙をさ迷うのだけど、その私の手を彼女はそっと優しく握ってくれた。
「優しいんだね」
『ううん、そんな事…。あのね、私、すごい嬉しかったの。あなたが一緒に泣いてくれて。私はずっとここに独りぼっちだったから…』
「………そっか…」
 彼女はとても哀しそうな顔をした。だけどその後に花が咲いたような綺麗な笑みを浮かべた。
「だけどこれからはもう1人じゃないよ。私がいてあげるから。私たちもう友達だよ」
 そう言ってくれる彼女に私は笑顔を浮かべた。心から浮かべる幸せの笑みを。そんな私の笑みを見て彼女はまた微笑んだ。とてもとても嬉しそうに。
「わぁー、やっぱり綺麗ね。あたしね、あなたを初めて見た時、あなたがそんな風に笑ったらきっとものすごく綺麗なんだろうなーって思ったの。うん、ものすごく綺麗」
『あ、あの…ありがとう』
「どういたしまして。えっと、あたしは綾瀬かなみ。あなたは?」
『…あの……私………わからないの………自分の名前……』
数秒沈黙して俯いたまま私がそう言うと、かなみちゃんはまた自分の事のように哀しい顔をしてくれた。
「そっか…。…………あ! ねえ、この銀の指輪ってあなたの?」
かなみちゃんは黒のパンツのポケットからあの銀の指輪を取り出した。
『ううん、わからない。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない…。だけど…』
「だけど?」口篭もる私の顔をかなみちゃんは小首を傾げながら見つめてそう繰り返す。
『その指輪…。昨日、あなたがその指輪に彫られたイニシャルを口にした時、ほんの一瞬だけど…何かを思い出しそうになったの…』
私がそう言うと、かなみちゃんは嬉しそうな顔をしてぱちんと指を鳴らした。私はそんな彼女を見て、まるでとっておきの悪戯を思い付いた悪戯好きの子どもみたいと思った。
『あの、かなみちゃん?』
「この指輪よ。この指輪を調べればあなたの事がわかるかもしれない」
『え? あ、でも……そんな……可能なの?』
 上目遣いに彼女を見ながら私が不安そうにそう言うと、かなみちゃんは3文オペラの登場人物のようにぱしんと胸を叩いて得意げに、
「どーんと任せておいてよ。大船に乗ったつもりでさ」
幼い子どものように得意げに鼻の穴を膨らませるかなみちゃんを見て、つい私は、
『ぷぅ』
 と吹き出してくすくすと笑ってしまう。そんな私を見て、かなみちゃんはぷぅーとかわいらしく頬を膨らませて、
「んま、この娘ったらなんて失敬な。せっかくこのあたしが一肌脱いであげようと思ったのに。ぶつぶつぶつぶつ」
『ごめんなさい』とくすくす笑いながら言う。
「さてと。そうと決まったならあたしは早速調査に行きましょうかねー。ここあちゃんの本当の名前を調べにさ」
彼女が悪戯っぽく笑ってそう言った言葉に私は大きく見開いた眼を丸くして瞬かせる。
『ここあ?』
「そう、ここあ。あたしが生まれた時に両親が買ってくれたテディーベアーの名前。指輪に彫られていたイニシャルだってKだったじゃない? だからさ、同じKから始まる訳だし、ここあっていう名前もかわいいからいいでしょう?」
ここあ…それがかなみちゃんが名前を忘れた私につけてくれた名前。欲しい物が2つも手に入ったこの日を私は絶対に忘れたくない。
 私はかなみちゃんにとても嬉しそうに微笑んで頷いた。


ここあ、いい名前だね。ありがとう、かなみちゃん。



 →Megumi1へ


 OTL の意味をはじめて知りました。
 これってずっと何なのだろう? と想っていたのですが、人の姿を象ったものだったのですね!
 説明されてからなるほど、という感じで騙し絵のように人のように見えるようになりました。面白いですね。^^
 Orzも同じように人なのですかね?
 こういうの、まったく知らないので本当に面白いです。
 それですごいなー、と思うのは点とか線だけで絵を描ける人。今日の電車男を見ていてすごいなー、って。^^
 あ、あの2ちぇんねるの猫の絵の名前を知ったのに、それを忘れてしまった。/(>_<)\
 電車男は来週で最終回? 楽しみです。
 



シーンⅡ 8月8日 Kanami4

2005年09月13日 | 銀の指輪のジンクス


 Kanami4


 その光景を見て、その心の奥底から絞り出されているような哀しみに染まった心の慟哭を聴いて、あたしは彼女を怖いと思う気にはなれなかった。
 雑草が伸び放題の荒れた庭から壊れた窓枠の向こう、昼間だというのにとても薄暗い、埃塗れのそのリビングに置き去りにされた古い傷みきったソファーの上で親とはぐれた幼い迷子のように体を丸めて泣いている半透明の彼女を見るあたしの胸に湧き上がるのは深い哀しみ。
 庭に植えられた木にとまって鳴くセミの陽気な鳴き声もその彼女の慟哭に重なればとても物悲しく感じられる。
 知らないうちにあたしの頬を伝う涙はそのままにあたしは薄汚れたリビングに入って、彼女の隣に座っていた。
泣いている彼女はあたしに気がつかない。ただその小さな肩を震わせている。
「かわいそうに。愛しい人とはぐれてしまったのね。哀しいよね。とても哀しいよね。だけどあたしにはあなたに気の利いた言葉をかけてあげることができないの。だからね、あなたが泣き止むまであたしはあなたの隣にいてあげる。そしてあたしもあなたと一緒に泣いてあげる。ごめんね、今のあたしにはそんな事しかしてあげられないの。ごめんね」
 泣きながらそう言った言葉に彼女は顔をあげた。そして彼女はその深い哀しみに染まった顔に笑みを浮かべた。それはとても綺麗なだけど哀しい儚い笑み。
あたしと彼女はうるっさいくらいにセミが鳴くその場所でいつまでもいつまでも泣き続けた。それに終わりなんてないように思えた。


 →Ghost3へ