目黒治療室ブログ

当治療院における治療内容や症例報告です。どこそこのらーめん屋さんに行った等の記事は一切ございません。

眼瞼痙攣症例集2

2013年01月09日 | 眼瞼痙攣
-症例1-

31才 男性
約6年前、気が付いたら眼が勝手に閉じるようになる。眩しさも強く感じるようになる。都内の眼科病院にて眼瞼痙攣と診断され、12~14週に一度ボトックス注射を受ける。また、大学病院にて、神経伝達速度の検査時にシャルコーマリートゥース病も見つかる。
眼瞼痙攣発症後、鬱状態となり精神科を受診し、抗うつ剤のアモキサンを処方され、二年間服用している。
さらに、慢性疲労症候群も発症しており、座っているのもつらく、ずっと横になっていたいという状態が続く時もある。
その他には、頸と肩、背中の凝り感が非常に強く、「じっとしているのも苦しい」状態。
インターネットで当院を知る事となり、来院する。

鍼治療を開始した当初は、眼科病院の院長に、「眼瞼痙攣は治らない病気だ」と説明されていることもあり、鍼灸治療に対しても、やや懐疑的になっているような印象を受けました。

鍼治療は、週一回のペースでおこなう。三叉神経第1枝領域の低周波鍼通電をおこない、頸肩、背中の筋硬結、自律神経の安定を図る目的で夾脊穴に刺鍼、慢性疲労症候群の治療では、椎骨動脈の血流改善と頸部交感神経の抑制を目的に胸鎖乳突筋、斜角筋に刺鍼をおこなう。

-経過-

3週間を経過。眩しさがやや減弱してきた。
1ヶ月半経過。眩しさは殆ど気にならなくなる。頸や肩の凝り感は残るものの、以前ほどつらくはない。
2ヶ月経過。ボトックス14週目。ボトックスの効果は薄れてきている頃だが、眼瞼痙攣の症状は以前ほどつらくない。ただ、顔をしかめてしまうため、眉間に凝りを感じる。
3ヶ月経過。数日前ボトックス注射を受ける。今までで一番効果が良いように感じる。
5ヶ月経過。ボトックスが効いている間は、眼瞼痙攣の症状は殆ど気にならないようになる。アモキサンの服用を中止する。
7ヶ月経過。アモキサンの服用を中止してしばらくの間は、リバウンドのためか、倦怠感や鬱状態、眼瞼痙攣の症状が悪化したが、その後安定する。
7ヶ月経過。ボトックスの効果が切れている頃でも、瞼が重くなる程度。ボトックス注射を受ける。
10ヶ月経過。ボトックスの効果は切れてきている頃だが、症状は殆ど気にならない。日によって倦怠感を感じたり、気分が落ち込んだりするものの、以前よりは軽い。
12ヶ月経過。眼瞼痙攣の症状は、たまに瞼が重く感じることはあるものの、概ね調子良い。ボトックスは打たずに、様子を見てみることに。
15ヶ月経過。この頃より、瞼の重さを感じることは殆どなくなる。たまに倦怠感を感じる。気分は安定している。
18か月経過。眼瞼痙攣の症状が消失して三ヶ月ほど経つ。たまに倦怠感を感じるものの、眼瞼痙攣は寛解したので、鍼治療はここで終了とする。


-症例2無効例-

45才 男性

約3年前から左下瞼がピクピクと痙攣し始め、徐々に左瞼がギューっと閉じてしまうようになる。その後、左眼につられて右眼も閉じてしまうようになる。その他に羞明感、ドライアイ。
16週に一度程度、都内眼科病院にてボトックス注射を受ける。
症状は、左右では左眼の方が強く、朝よりも午後、夕方にかけて強くなる。休日には比較的軽い。人と対面している時は強くなるが、会議などで大勢の前でプレゼンや発表している時などには症状は出にくい。

身体所見:筋肉質で体格が良い。筋肉は非常に柔軟で硬結は殆ど見当たらない。肩こりなどの自覚は殆どない。

鍼治療では、三叉神経第1枝領域の低周波鍼通電をおこない、天柱、肩井や背部夾脊穴などに刺鍼。しかし硬結が無いため、どこに刺しても手ごたえの様なものが感じられなかった。
治療直後は症状が軽減するものの、数時間すると元にもどってしまう。
6回ほど治療したものの、治療効果が持続することは無かった。

本症例のように、筋緊張を殆ど伴わない眼瞼痙攣は非常に珍しいのですが、筋緊張(硬結)が無いという事は、鍼治療において治療するべきポイントがそもそも無いということになってしまうせいか、治療効果を上げることが難しいように感じた例でした。