目黒治療室ブログ

当治療院における治療内容や症例報告です。どこそこのらーめん屋さんに行った等の記事は一切ございません。

眼瞼痙攣の症例集

2012年04月04日 | 眼瞼痙攣
ここでは、眼瞼痙攣の症例をいくつか紹介していきます。
後半では、無効だった症例も紹介していきます。




-症例1 眼輪筋切除術を受けた60代女性の例-


この方は、3年ほど前から眼瞼痙攣が発症し、徐々に口元まで痙攣が拡大。1年ほど前に某県の大学病院にて眼輪筋切除術を受ける。その後、都内の大学病院にて12週に一度程度、ボトックス注射を受ける。リボトリールを服用。

おもな症状は以下の通り。


・瞼の痙攣は、パチパチ頻回におこるものと、ギューッと閉じてしまうものとの混合タイプ。

・とにかく眩しく、パソコン画面を見ることもできない。
・歩行時に瞼が閉じてしまい、よく人や物にぶつかる。
・瞼を頑張って開けようとすると、口が「パカッと」開く。
・口元がワナワナとふるえている。

このほかに頸から肩、背中にかけて「鉄板が入っている様よう」なコリ感がある。
治療は基本的に一週間に一度の間隔でおこなう。
初診時はボトックス注射を受けて6週目。

第1診
 身体はやせ形で、頸から肩にかけて筋肉が非常に緊張している。鍼治療は以前にも受けたことがあり、その時受けた低周波鍼通電は、終わってから身体がふらふらしてしまったので、あまり受けたくないとのこと。
非常に神経質そうな印象を受けた。おそらく鍼刺激にとても敏感なのだと思い、刺激量に気をつけながら、頸から背中のコリを治療し、今回は低周波鍼通電に抵抗があるとのことで、三叉神経の低周波はおこなわなかった。

第2診
 前回治療後は頸や肩のコリ感は少し軽減する。痙攣頻度は変わらず。治療は前回と同様。

第3診
 鍼治療後に気分が悪くなるようなこともなく、コリ感の緩和の実感も得られることから、治療に対する安心感のようなものがうかがえたので、三叉神経の低周波鍼通電の治療を追加することを提案する。上額部にかすかに感じる程度で1ヘルツの通電を追加する。

第5診
 頸肩のコリ感は緩和してきたが、ボットクス注射を受けてから12週経過しているので、だいぶ痙攣の症状がきつくなってきた。
しかし眩しさはかなり軽減してきている。
今までは眩しさのため、パソコン画面を見るのが苦痛だったが、今はそれほど苦にならなくなった。

また、ボトックスの効果が切れてくると、気分がものすごく沈み、大変憂鬱になるとのこと。
近日中にボトックス注射の予定。
治療は同上。

第8診
 今回のボトックス注射はかなり効いているとのこと(3週目)。眩しさはほとんど気にならない。
鍼の治療効果として、まず眩しさの緩和が現れることが多く、次いでボトックスの効き目がよくなることが多い。

第11診
 ボトックス注射から6週目。初診時も同じく6週目だったが、痙攣の症状は明らかに軽減しており、パチパチとじるのはほとんど消失したが、ギューっとつむってしまうのはまだ起きる。
電車にて通院しているが、電車内からホームにある駅名の看板やプレートをみることが出来なかったため、車内アナウンスを聞き逃すと乗り過ごしたりしていたが、看板やプレートを見ることができるようになっていた。
リボトリールの服用を中断したとのこと。

第15診
 リボトリールの服用を中断してから気分が沈みがちになる。それに伴い痙攣の症状も悪化。気分障害はリボトリールのリバウンドによるものと考えられる。

第18診
 リボトリールのリバウンドによる気分障害は消失する。気分はとても良いとのこと。ボットックス注射を受けてから13週が経過するが、痙攣の症状はほとんど気にならないとのこと。

第20診
 非常に調子がよい。治療は2週間に一回にする

第23診
 瞼、口元の症状はほぼ消失。

その後2回程治療をおこない、症状が認められなくなったので、治療を終了した。
本症例は、約8カ月の治療期間で緩解に至った症例である。
眼輪筋切除術を受けたが症状のつらさ自体はそれほど変わらず、むしろボトックスの効果が切れてくると、上下瞼の開閉のバランスがさらに悪くなり、物が余計見えにくくなると仰っていた(特に手元など下を見るとき)。
さらに、痙攣を抑えるために処方されていたリボトリールから離脱する時には、リバウンドで大変苦しまれていた様子だったが、ここを乗り越えたら一気に緩解へと向かった。



-症例2 30代女性 自律神経失調症を伴う症例-

3年前、クリニックにて自律神経失調症の診断を受ける。
症状はめまい、動悸、息切れ。
当院の初診時には、症状は発症時より悪化しているとのこと。

2年前、神経眼科にて眼瞼痙攣の診断を受ける。左頬にも痙攣が認められる。12週に1度、ボトックス注射を受ける。

 眼瞼痙攣の症状は以下の通り。
・瞼がギューっと閉じてしまう。
・左頬の痙攣。
・ドライアイ。
・眩しさはそれほど気にならない。

鍼治療は、途中間隔が空くこともあったが、基本的に1週間に1度の間隔でおこなった。


第1診

現在はボトックス注射を受けてから4週目なので比較的楽だが、精神的ストレスを受けると痙攣の症状が強くでる。
首が痛くてうまく眠れないという症状も訴えていた。
手足が非常に冷たく、べっとりと汗をかいている。
頸部の筋肉は非常に緊張している。
肩甲間部(特に五番胸椎以上)の立毛筋反射がみられる。

以上のことから交感神経の過緊張がうかがえた。

治療は、まず頸部筋の緊張や肩背部の筋肉の緊張を緩め、自律神経の安定を図った。
三叉神経の鍼通電は、感じが少し苦手とのことで、すぐに中止し、しばらくの間は見合わせることにした。

第5診

ボトックス注射を受けてから9週目。
ここまでは週一度の治療をおこなう。
首や肩が楽になってきた。夜も眠れるようになる。肩甲間部、特に五番胸椎直側の筋肉の状態が柔らかくなってきた。それに伴い動悸や息切れの症状にも改善がみられた。
痙攣の症状も軽くなってきているとのこと。

第6診

ボトックス注射から11週目。
首肩や自律神経の症状は安定している。
痙攣はまだでるものの、今のところはまだ比較的楽とのこと。

第9診

ボトックス注射から15週目。
ボトックスの効果が切れてきて、痙攣の症状はやや悪化するものの、以前ほどのつらさではないので、少しのあいだボトックスなしで頑張ってみるとのこと。

第12診

首肩、自律神経の症状はほとんど気にならなくなる。
痙攣は、ボトックスなしでも生活できるレベルではあるが、消失することはない。
三叉神経領域の低周波鍼通電を加えるよう説得し、了承を得たので今回より追加する。

第13診

鍼通電が功を奏したのか前回の治療後から、痙攣の頻度が軽減したとのこと。

第15診

ほとんど痙攣が気にならなくなる。
この後、さらにもう一回治療をおこない、痙攣の症状が認められなくなったので治療を終了した。


本症例では、首や肩の凝りの治療や、交感神経の緊張を抑制する治療で、痙攣症状は軽減するが、最後は三叉神経刺激が決め手となったように思う。
三叉神経の鍼通電の重要性を再認識させられた症例であった。



―症例3 40代女性 発症から比較的早期に治療を開始した症例―


本症例は、眼瞼痙攣の診断を受けてから約1カ月で鍼治療を開始した症例である。

夫の転勤に伴い他県から都内に移ってきて、新しい生活環境や、新しい職場になじめず、大変なストレスを感じているとのこと。
しばらくして左眼にごろごろとする違物感と羞明感を覚える。ほどなくして左眼が不随意に閉じるようになり、大学病院の眼科にて眼瞼痙攣の診断を受ける。
同病院にて、左上瞼のみボトックス注射を受けるが、その直後から、右眼瞼にも痙攣がおこるようになる。
その後、右瞼にもボトックスを受ける。

1週間に一度のペースで鍼治療をおこなう。

眼瞼痙攣の症状は以下の通り。

・ボトックス注射を受けるまでは、左眼のみに症状が出ていたが、今は両側性で左右差は無い。
・眩しい。パソコン画面やテレビモニター、さらに携帯画面も眩しく感じる。
・瞼が閉じてしまう。特に精神的ストレスを受けた時や、歩行時などは顕著に現れる。
・頸の付け根(天柱穴)のコリ感が強い時に症状が強くなる。


第1診

左天柱に非常に硬い硬結が認められる。

治療点は印堂と上星(それぞれ三叉神経第1枝)、左天柱、左の肩甲挙筋と胸鎖乳突筋にそれぞれ低周波鍼通電をおこなう。

治療後、瞼を開けるのが非常に楽になったとのこと。

上記の治療を第8診までおこなった。ボトックス注射の効果もほとんど切れていた頃だったが、この時点で痙攣の症状はまったく認められなくなった。
天柱の硬結は、だいぶ小さくやわらかくなり、コリ感を覚えることもなくなったが、また、もとのような状態になると症状が再発する可能性もあるので、自分でストレッチやマッサージなどを、こまめにおこなうように指導し、治療を終了した。

本症例では、8回(2か月程度)の治療で緩解に至った例であり、今まで経験した中で、治療期間が最も短いものであった。
その後、発症して2カ月の患者を治療する機会があったが、その症例も週1回で、12回程度の治療で緩解に至った。
いずれも発症から間もなく治療を開始できた症例であり、罹患期間が短いほど緩解までの期間が短かくなる可能性が示唆される。




-症例4 40代男性-

3年ほど前から眼の乾燥感が強くなり、眼がしばしばするようになる。その後、羞明感を覚えるようになってから、瞬目回数に増加がみられるようになる。眼科を受診したところ、ドライアイの診断を受ける。
その後、症状が改善せず、そのうち瞼が不随意にギューっと閉じるようになり、都内の眼科病院を受診したところ眼瞼痙攣の診断を受ける。
同病院にて12週に1度、ボトックス注射を受ける。


眼瞼痙攣のおもな症状は以下の通り。

・眼の乾燥感。
・羞明感。
・歩行時、会議中、精神緊張時に特に眼が閉じてしまう。
・頚がこって痛くなると痙攣が出やすくなる。

治療は1週間に1度の割合でおこなった。



第1診

 左右の天柱に非常に硬い硬結を認め、さらに肩甲骨内上角の肩甲挙筋付着部にも硬結を認める。いつもその部位がつらくなるという。また左右の胸鎖乳突筋と斜角筋も筋肉全体が硬結化している。
普段、眠りが浅く、いつも頭がぼーっとしていてなかなか集中できず、常に疲労感を覚えるという。これらの症状は頚筋の緊張により、頸部交感神経の緊張が引き起こす、椎骨動脈の循環障害による慢性疲労症候群による症状と思われる。

治療は、上記の緊張している筋肉と、印堂と上星にそれぞれ低周波鍼通電をおこなう。

第3診

 首肩のコリ感はやや改善するが、痙攣症状に変化はみられない。

第5診

 首肩のコリ感は回を追うごとに改善している。眼の乾燥感と眩しさも少し和らいできた。慢性疲労の症状も以前に比べれば改善傾向にあるとのこと。痙攣症状には、明確な変化は認められない。

第8診

 眼の乾燥感と眩しさは、ほとんど気にならなくなった。瞼の痙攣は徐々に楽になってきた。疲労感は8割がた改善してきたとのこと。先日ボトックス注射を受ける。

第10診
 
 天柱の硬結は、初診時にくらべ柔らかくなり、大きさもソラマメ大から小豆大になる。それにしたがい痙攣の頻度にも低下がみられる。
ボトックス注射の効き目は、以前に比べるとはるかに良く効いているとのこと。

第16診

 コリ感、疲労感はほとんど気にならないが、痙攣症状は横ばい状態。

第19診
 
 ボトックス注射から12週が経過して、効果はだいぶ切れてきているころだが、前回の同じ週数の時よりも楽にすごせる。しかし、まだボトックス注射は必要とのこと。

第21診

 ボトックス注射が非常によく効いているので、日常生活ではまったく支障は無いが、痙攣はいまだ消失していない。
再度、頚部の筋肉を細かく触診すると、斜角筋と胸鎖乳突筋の胸骨頭部の筋緊張が、治療しているにもかかわらず、改善しきれていなかった。筋筋膜連鎖の影響を考慮して上腕二頭筋と小胸筋部などを触診すると、著名な圧痛と筋緊張が認められたので、これらの筋も合わせて治療する。

第22診

 斜角筋と胸鎖乳突筋の弛緩が認められた。痙攣症状にも改善がみられた。

第26診
 
 痙攣はほとんど気にならなくなる。

第33診

 ボトックス注射を受けてから13週が経過。痙攣はほとんど気にならない。

この後、3回治療をおこなったが、その間痙攣症状が認められなかったので、治療を終了した。


本症例は、斜角筋と胸鎖乳突筋部の筋緊張が残存していたため、治療に抵抗し、なかなか症状の消失をみなかった例である。





ここでは、効果が認められず、鍼治療を中止した例を紹介します。

-60代女性-

・眼瞼痙攣発症から約2年半。
・右目の方が痙攣の症状が強い。
・室内では比較的楽に過ごせる。
・ドライアイ
・眩しさが非常に強い。
・屋外だとほとんど眼を開けていられない。

-50代女性-

・眼瞼痙攣発症から約2年。
・左目の方が症状が強い。
・室内では症状は全く現れない。
・眼の異物感。
・口元にも不随意運動が認められる。
・眩しさが非常に強い。


以上の2例はいずれも10回程度、鍼治療を施したが効果が認められなかった。
また、両名とも以前にボトックス注射を受けたことがあるが、かえってつらさが増したとのことであった。
結局、眩しさがつらいのもさることながら、視覚にものが入り込むこと自体が刺激になり、眼をとじたいのに閉じることが出来ないので、非常につらかったと、それぞれ仰られていた。

多くの眼瞼痙攣患者は、そのままの状態では生活に支障をきたすため、ボトックス注射を受けて症状の軽減をはかるのが一般的である。また、そのような方々に鍼治療をおこない、症状の改善がみられることを多く経験してきた。
しかし、上記の2例のように、ボトックス注射をすると、逆につらくなるというのは、鍼治療の適不適の一つの鑑別ポイントになるのかもしれない。


-40代 男性-

・眼瞼痙攣発症から約10年。
・最初は左眼が開けづらくなり、次第に両側まぶたがギューっと閉じるようになる。
・右眼を閉じる時に、右口角が連動して上がる病的協調運動が認められる。
・都内眼科病院にてボトックス注射を数回受けるが、効果は2週間ほどで切れてしまう。現在はボトックス注射は受けていない。

また、過去に10年ほど抗鬱薬の服用歴がある。現在もパニック障害の症状がでることがある。本症例の眼瞼痙攣は、薬剤性のものかどうかは不明。

本症例は、置鍼中に身動きが取れないためにパニック発作が起きてしまい、治療を断念した例である。


そのほかに、妊娠中の30代女性の眼瞼痙攣患者が2名、来院した。いずれも妊娠前より眼瞼痙攣を発症していたが、つわりが始まってから一気に症状が悪化した。病院の方針で2名ともボトックス注射を受けることが出来ず、非常に苦しんでおられた。鍼治療をそれぞれ数回試みるも、治療効果が認められず中止した例である。