目黒治療室ブログ

当治療院における治療内容や症例報告です。どこそこのらーめん屋さんに行った等の記事は一切ございません。

眼瞼痙攣治療の備忘録

2019年11月06日 | 眼瞼痙攣

日々の眼瞼痙攣の鍼治療を通しての、気づきや印象に残った事象を備忘録的にまとめた記事です

 

運動型と感覚過敏型

眼瞼痙攣には大きく分けて運動型と感覚過敏型、それらの混合型がある。

運動型は瞼がギューッと閉じてしまったり、パチパチとした瞬目が主症状。

感覚過敏型は、高度な羞明やゴロゴロとした異物感など、瞼の不随意運動はないが、眩しさや痛みを感じてしまい、開瞼が困難なもの。

実際は、不随意運動に眩しさや、異物感を伴う混合型が圧倒的に多い印象がある。

運動型と混合型では鍼治療の効果が高く、高度な感覚過敏型では、効果が上がらないケースが多い。

 

薬剤性の眼瞼痙攣

抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、チエノジアゼピン系薬物(抗不安薬、睡眠導入剤)の服用により発症したもの。

以前は、薬剤性眼瞼痙攣は鍼灸治療の対象外と考えていたが、明らかに薬物性が疑われる症例でも緩解するケースがある。しかし、運動型と混合型に限られる。

 

眼瞼下垂の手術後に発症する眼瞼痙攣

眼瞼下垂の手術で、ミュラー筋短縮術やミュラー筋と腱膜を瞼板に縫合する術後に発症することがある。

今まで5例の経験があるが、鍼治療はいずれも良好な経過をたどった。顔や頭部の一部がこわばるなどの強直性が多く、羞明などの感覚過敏は認められないか、ごく軽微であった。

 

座位、臥位での症状の軽重

座位や立位に比べ、臥位だと症状が軽くなることが多い。これは何を意味するのか。

座位や立位では交感神経が優位になり、臥位だと副交感神経が優位になることに関連するのか、または単純に座位や立位よりも、臥位の時のほうが頸部にかかる負担が軽くなることに関係があるのか。ちなみに座位で頸部を牽引しても同様に症状の軽減がみられる。牽引をやめると症状は瞬時にもとに戻る

臥位の時には枕が顔面部に接触するし、牽引時では患者の頸部に施術者の手掌部が接触するので、この時に知覚トリックが作動していることも否定できないが、治療に応用できないか検討の価値は大いにありそう。

ちなみに知覚トリック自体は、全く治療に寄与するものではない。

 

眼瞼痙攣と皺眉筋

眼瞼痙攣では、眉間に皺を寄せる運動が多くなるため、皺眉筋が非常に凝る。グミのような非常に厚みのあるコリを蝕知することもある。このような場合には皺眉筋への鍼治療は大変有効で、皺眉筋のみの鍼施術で頸部や肩の筋緊張まで和らぐことがある。そして開瞼が楽に行えるようになる。

 

食いしばりと眼瞼痙攣

眼瞼痙攣患者には、高頻度で食いしばりや噛みしめが見られる。これは、開瞼困難時に、ミュラー筋を作動させるために歯を食いしばる、もしくは舌で歯を押す行動をとるようになるために起きる現象である。

しかし、開瞼困難から脱した眼瞼痙攣患者にも、食いしばりが見られることがある。

これは、そもそも食いしばりや弄舌癖が眼瞼痙攣のようにジストニアの範疇に入る可能性があるのではないかと思う。いずれにせよ、眼瞼痙攣患者は、食いしばりを伴うことが多い。

この場合は、側頭筋と咬筋への施術がとても重要になる。

 

眼輪筋への鍼施術

眼瞼下垂の鍼治療では、眼輪筋への鍼治療が大変有効。

眼瞼痙攣でも、眼瞼下垂のように瞼の重さを訴える患者がいる。

このような患者数例に眼輪筋の鍼治療を試みてみたところ、全く効果がなかった。

同一症状でも機序が異なるからなのか、興味深い結果となった。