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庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

第一章 グライダー

2005-01-02 21:49:00 | 大空
グライダー

 PPGがエイビエイション(航空界)への初めての経験であるという人や、エアロフォイル翼(軟体翼)以外の航空スメ[ツからPPGに移行してきた人の多くにとって、その関心の割合はパワーユニット関係にあることが多く、飛行機材の中で最も重要なものが飛行翼(グライダー)であるという当然のことを、明確に自覚している人は比較的少ないかもしれません。

 空気力を使って空を飛ぶのに動力は必ずしも必要としませんが、飛行翼は絶対的に必要なもので、とくにPPGで使用するPG翼(グライダー)は本格的な開発がはじまって15年ほどしか経ていないにもかかわらず、非常に多くの種類の(つまり非常に多様な飛行特性を持った)グライダーが市場にあふれています。

 その理由はフットランチであるということも含めて、PG(パラグライダー)やPPGが極めて人間の身体能力に依存する比重の大きいものであるということ、未だに開発途上にあるということ、グライダーの飛行安定性と滑空性能など飛行性能の調和点をどこに置くかの好みが多様である為です。

 例えば、PG翼が初めて日本に紹介された15年程前は、滑空比が2~3でスカイダイビング用のグライダーに毛が生えた程度のものでしたが、現在は滑空比9を超える高性能翼も珍しくありません。ちなみに恐らく現在日本で最も多く使われているPPG翼はハトルのシンフォニーですが、これで滑空比6弱。飛行安定性を無視すれば、理論的には恐らく滑空比15程度のグライダーは簡単に作れるところまで来ていると思います。

 基本的に滑空性能が高いほど安全マージンは小さくなりますが、全てのグライダーがライズアップ性能、飛行速度、旋回性能、コラプスや失速からの回復性能、動力飛行との相性など・・それぞれ特有の飛行特性を持っているので、熟練したパイロットでも別のグライダーに乗り換えた場合は、充分過ぎるくらいの注意をしなければなりません。例えばDHVで様々な飛行テストをクリアしているからといっても、それはほとんど静大気に近い飛行環境で行われているもので、乱気流の中で確認されたものではないことを銘記しておいてください。



 さて、現在多くのPPGスクールで使われているグライダーがシンフォニーです。このグライダーはPPGでの動力フライトに適応するように設計されている為に、ピッチコントロールが容易で、ライズアップ性能や飛行安定性も極めて良好なものです。少々の乱気流でのコラプスやオーバーコントロールによるピッチングやローリングからの回復性も優れています。滑空性能も含めて主にエリア内で動力飛行を行うパイロットの技能レベルにかなり適したグライダーだということができます。

  メンテナンス

 グライダーは使っているうちにはっきり経年劣化していきます。それは何時間紫外線にさらしたか、どれ位地面を引きずりまわしたかで決まりますが、およその目安は紫外線下に200時間以上さらしたり、グランドハンドリングを200時間以上行ったグライダーはイエローゾーンにはいったと見てよいでしょう。毎回のフライト後、丁寧にブレークダウンしながら全体に目を通す習慣をつけることは、次回のセットアップをスムーズに始める為にも大事なことです。

 劣化具合の調べ方は、まずコーティングの剥がれ(水・唾でもよい・・をかけてみる。染み込んだら赤信号)繊維の色落ち、ャ鴻Vティ(空気漏れ・リーディングエッジの真中と両端に口に当てて吹いてみる。簡単に空気が通ったら赤信号)をチェックします。同時にサスペンションラインのキンク(折れ曲がり)、接続部分の縫い目の具合をチェックします。更にラピッドリングとカラビナのチェック・・・これはほとんど問題ないのですが、昨年はDHVのテストの最中に初めてのカラビナ破断事故があったので、参考にしてください。

  その他の飛行機材(計器類)

ヘルメットや無線機は全ての教習課程で必須です。アルチ・バリオは指定高度飛行の教習では必須です。レスキューパラシュートは中高度(50m~200m)以上の飛行では必須です。しかし、飛行類計器類が増えるに従って、その取り付け方の煩雑さやプリフライトチェックの項目が増えるので、装着ミスや機能不全が多くなることに注意しないといけません。

第二部 フライト教習

2005-01-02 21:45:00 | 大空
フライト教習課程は限られたエリア内を全て自己の責任において安全に飛行する技能の修得を目標としています。(エリアの具体的な範囲はそれぞれのエリアの状況に合わせて設定されています。)

 目  次 

第一章 機材の説明・取り扱い 
フライトに関わる機材説明と取り扱いに関する注意事項

第二章 ユニット非装備でのライズアップ 
キャノピーのみを装備してライズアップ、フロント・リバースライズアップ各々の練習とグランドハンドリング

第三章 助走姿勢・推力確認・アクセルワーク 
ユニットのみを装備して助走姿勢、推力の体感、アクセルワークを習得

第四章 ユニット装備でのライズアップ 
ユニットとキャノピーを装備し、エンジン非作動でのライズアップ

第五章 助走練習 
エンジンを始動しライズアップの後、安定した助走の練習

第六章 ジャンプ飛行 
離陸の後、高度1mほど浮かせ、飛行の感覚と着陸時のフレアー操作の練習

第七章 飛行プラン
(フライトプラン)気象、練習内容に応じた飛行プランに沿っての飛行練習

第八章 離陸 
安定した離陸の練習(画像在り)

第九章 上昇飛行 
直線、旋回飛行による上昇飛行

第十章 周回飛行 
トラフィックパターン(場周経路)に沿った周回飛行(画像在り)

第十一章 スラローム飛行 
角度の浅いスラローム、深いスラローム、8字飛行

第十二章 旋回 
8字旋回、360度旋回飛行

第十三章 高度維持飛行 
アクセル操作による高度維持飛行

第十四章 指定高度飛行 
低高度50m以下、中高度50~200m、高々度200m以上の各高度での飛行

第十五章 乱気流での安定操作 
ピッチング・ローリングからの安定飛行

第十六章 低高度飛行 
高度3m位を維持しての飛行

第十七章 高度処理 
高々度からの旋回、スラローム飛行を利用しての高度処理

第十八章 最終アプローチ 
着陸の為の最終アプローチ、直線飛行での進入

第十九章 着陸 
風の強さ、方向に応じて安全に着陸

第一章 機材の説明・取り扱い 
フライトに関わる機材説明と取り扱いに関する注意事項

エンジンユニット

 

機材のおおよその構成は グランドハンドリングの部で触れたので、ここではユニットに付いてもう少し詳しく説明したいと思います。パワーユニットは世界各国、様々なものが開発され、日本でも多くの種類が使用されている訳ですが、ここではDK(第一興商)のウィスパーGTというユニットをモデルにしてお話します。当然ユニットの種類によって、基本的な性能やメンテナンスの方法も変わってきますから、まず自分が使用しているユニットの特性をしっかりつかむ事が大切になってきます。

 ウィスパーGTは構造的にはアルミ合金のフレームマウントに単気筒エンジンが痘ァで取り付けてあるという、オートバイや自動車などに比べると非常にシンプルなものです。ただ、常に負荷がかかっていること、フルスロットル(最高回転域)や高回転域を使用する頻度が圧涛Iに高いのと、高速で回転するプロペラが体の近くにあるので日常のメンテナンスがユニットの寿命だけでなく、フライトの安全性にも大きく影響してきます。始業点検は主に以下の点に注意して念入りに行います。

・ボルト・ナット類の緩(ゆる)み ・燃料系統パイプのねじれ・つまり ・プロペラブレードのバランス。(不自然な振動はないか)



 プラグヘッドが下に位置する痘ァ型エンジンは、余計な燃料がヘッドに落下してプラグに付着しやすくなっています。これを防ぐには運転後、エンジンが停止するまで回して燃料を使いきっておく。キャブレターから燃料が流れ込まないようにキャブレターをヘッドより下に位置するように置いておく・・などの方法があります。               

  燃料

 レギュラーガソリンと化学合成オイルを25対1ないし30対1~40対1(場合によっては50対1)の割合で混合します。オイルの性質や燃料添加剤の使用の如何によってエンジンの調子がかなり変わってきます。燃料の燃焼効率は混合比が高いほど(オイルが少ないほど)良くなりますが、エンジン温度が上がるのでオーバーヒートの可能性も高くなります。



 一度混合した燃料は徐々に劣化が進んくるので3ヶ月くらいの内に使用するようにしましょう。推奨オイルはカストロールの2TSかTTSで、これらは世界中の様々なユニットで使用されており、その性能に定評があります。

 また、大気密度によってガソリンとオイルの混合費を多少調整する場合もあります。いずれにしても、暖機運転の時にエンジンから発生する音、排気音、排気ガスの色・濃度等に注意を払って、エンジンの調子を見るようにして下さい。

 およそ調子の良い時は、軽いエンジン音、少ない振動、薄いか無色に近 い排気ガスになります。
また、エンジン回転計があると、同じ燃料の噴射量と空気との混合割合でも大気密度によってアイドリング回転数や最高回転数が違ってくるのが数値的に分かるので便利です。また、オーバーヒートによる焼き付を予防する為のシリンダーヘッドや排気の温度(EHT・EGT)を計測する装置もあるので、好みによっては取り付けると良いでしょう。

  暖機運転

 必要な場合はキャブレターのH(High)とL(Low)のニードルで混合気の調整をします。この調整方法は非常に微妙なのものですが、おおよそ大気密度が低くてかぶり気味の時は、Hニードルを少し絞り込んで高回転域の混合比を低くします。 キャブレターの調整については「ダイアフラム型キャブレターの調整」を参考にして下さい。

 暖機運転はエンジンを始動してから回転数が安定するまで通常数分間行います。寒い季節は念入りに行って下さい。 ほとんどのエンジンで暖気運転のCHT(シリンダーヘッド温度)は100℃前後です。キャブレターのニードル調整もCHTがこの温度になってから行わないと意味がありません。暖機運転が終了したら、ゆっくり最高回転数まで上げて回転数を確認しながら適当なニードル調整を行います。大気密度によってエンジンの調子がかなり違ってくることが分かると思います。

 使用時間に比例してどうしてもシリンダー内にカーボンやスラッジが付着してきます。また、プラグも劣化してきます。理想的には15時間程度の使用でプラグを交換し、50時間程度でカーボンの除去やキャブレターやエアフィルターの清曹sえば良いのですが、日常的にメンテナンスを行い良いコンディションで使用すれば100時間以上問題なく動くように作られています。

 プロペラは最も損傷しやすい部品です。クラッシュなどで構造的な不具合ができた時はためらわず新品と交換して下さい。サンド・ブラスター(海岸などで使用する時、巻き上げた砂でプロペラを摩耗すること)などで先端部分が徐々に欠けてくることがよくあります。これらは、FRPやエャLシ系の接着剤で比較的簡単に修理することができます。また、プロペラブレードのバランス(これが狂ってくると 振動が発生し、場合によっては回転中に破壊する)は1ブレードはセンターを定めて軽く回してみる。複数ブレードはそれぞれの重量をそろえることによって調整します。

 プロペラブレードのバランスには静バランスと動バランスがあり、静バランスはセンターを固定して天秤計の要領を使えば簡単に分かりますが、動バランスは左右のブレードの重心位置の違いが回転モーメントの違いを生み出すことによって起こるので、計測することは容易ではありません。僅かなものでもプロペラの振動はプロペラ軸のベアリングの損傷につながり、さらに全体的な振動を招いてクランクシャフトへも影響してくるので、プロペラの補修は充分慎重に行う必要があります。

  ハーネス

 ハーネスのセッティングはフライトに直接的に影響してきます。フライト前には必ずシミュレータで自分の体型とフライト内容に応じてベルト類の調整をして下さい。
飛行内容に体重移動を使わないときは、全てのベルトは苦しくない程度にきつめに締めた方がフライトは安定します。またレッグベルトは地上ではゆるめにしておいた方が移動の際やテイクオフが楽ですが、その場合も上空でしっかり締めなおすようにします。フットバーはある程度安定飛行が出来るようになるまでは、アクセラレータと接続しないで、ハーネス下部に固定して使用します。