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庭戸を出でずして(Nature seldom hurries)

日々の出来事や思いつきを書き連ねています。訳文は基本的に管理人の拙訳。好みの選択は記事カテゴリーからどうぞ。

あとがき

2005-01-10 18:13:00 | 大空
あとがき

 通販で購入した国産グライダーでスキー場上空を初めて滑空してから、既に20年が過ぎようとしている。前半の10年程はこの世界の云わば草創期でもあり、多くの先達や仲間たちと同様、私もずいぶん危ない試みを重ねた時期もあった。いまだにこうして生きて空を飛んでいられるのは、生来小心で慎重な性格によるということもあるが、ただ幸運の二字に助けられたところも大きいに違いない。いずれにしても、常に変動する目に見えないものを相手にする能力・技能の練磨に終着点はないように思われる。

 この拙い一書は、1996年から10年間に渡るPPG教習の過程で、練習生の多少の助けにでもなればとWEBサイト上に掲載してきた記事のいくつかを一つにまとめたもので、なるべく具体的に分かりやすくと心がけたが、まだまだ書き足りず充分な説明になっていない部分も多いと思う。読者の皆さんのご指摘を待ちたい。画像や図類のほとんどは筆者の手によるものだが、著作権等が問題にならない画像類も流用させて頂いている。

 これからこの世界に足を踏み入れようとしている人たちだけでなく、すでに大空の風を楽しまれているフライヤーの皆さんにも何かの参考になり、それぞれの飛行の更なる安全と自由を味わっていく上で、多少とも役立つところがあれば幸いだと思う。

 ただ、人間が大空での自由を得ようとする時に、地上や他人との関係で避けて通れない「フライトモラル」の問題や「飛行のための三要素」などについては、本書では触れることができなかった。これらについて少し腰を入れて書き始めたら、その内容は単なる飛行の技術論の範疇を大きく超え、人間の心理的領域や自由とは何かという哲学的領域にまで立ち入らざるを得なくなるだろう。それは今の私には少し荷の重い作業であるが、また次の続編とでも呼ぶべきもので更に拙い考察を進めてみたいと考えている。

  2007年3月21日  快晴の春分の日に

                      渡 辺 寛 爾