
<総括>
文責 PL3回生T
本年度最後の本合宿は入山初日以降11日から2日間比較的荒れた天候に見舞われる事となった。その為予定を変更し初日に西駒山荘まで上げることとなり。二日目は悪天の為冬季小屋で停滞、三日目は午前中比較的天候が穏やかであった為小屋周辺で雪上訓練、そして四日目最終日に木曾駒ケ岳アタックと下山を行った。そして結果として木曽駒ケ岳に9人全員で無事登頂し下山出来た。しかし詳しくは後述の事故報告書で述べるが、その道中で1回生Nと1回生Oの一回生2名が滑落未遂を起こしてしまうなど重大事故が起こってもおかしくない状況であった。この滑落未遂の原因としてはアイスバーン状態でのアイピン歩行経験・訓練不足。そして上回生による一回生のサポート不足が考えられる。このように本年度最後の合宿であったが課題も依然残る結果となった。その為反省点をここと事故報告書に良くまとめ来年度の活動に活かしたい。また、この合宿をもって自分含む3回生3人は現役での活動を終えた。色々あった本合宿ではあったが無事登頂に成功して終えられた事を嬉しく思うと同時に、共に頑張ってくれた仲間たちに感謝したい。
<反省と改善>
文責:SL3回生I
反省
・バテてしまうメンバーがおり、初日にパーティーが大きく分裂してしまう時があった
・アタック中に滑落未遂をしたメンバーがいた
改善
・長期休暇中であっても各々トレーニングをして体力をつけておく
・アイスバーン等のシチュエーションを想定し雪上訓練に十分な時間をかける
<行動日程>
文責 1回生N
3月10日
時間 |
場所・行動内容 |
所要時間 |
8:10 |
ゲート前・行動開始 |
|
8:40 |
桂小場登山口・ダウン1 |
0:30 |
9:00 |
同上・出発 |
0:20 |
10:10 |
1616m地点・ダウン2 |
1:10 |
10:20 |
同上・出発 |
0:10 |
11:25 |
1910m地点・ダウン3 |
1:05 |
11:35 |
同上・出発 |
0:10 |
12:30 |
2160m地点・ダウン4 |
0:55 |
12:35 |
同上・出発 |
0:05 |
13:45 |
2495m地点・ダウン5 |
0:10 |
14:05 |
同上・出発 |
0:20 |
15:20 |
将棊頭山頂・ダウン6 |
1:15 |
15:30 |
同上・出発 |
0:10 |
15:35 |
西駒山荘避難小屋・行動終了 |
0:05 |
3月11日
時間 |
場所・行動内容 |
所要時間 |
|
西駒山荘避難小屋・停滞 |
|
3月12日
時間 |
場所・行動内容 |
所要時間 |
|
西駒山荘避難小屋・停滞&滑落停止訓練 |
|
3月13日
時間 |
場所・行動内容 |
所要時間 |
4:00 |
西駒山荘避難小屋・起床 |
|
5:05 |
同上・行動開始 |
1:05 |
5:50 |
2726m地点・ダウン1 |
0:45 |
5:55 |
同上・出発 |
0:05 |
6:40 |
2871m地点・ダウン2 |
0:45 |
6:50 |
同上・出発 |
0:10 |
7:30 |
木曾駒ケ岳山頂・ダウン3 |
0:40 |
7:45 |
同上・出発 |
0:15 |
9:35 |
西駒山荘避難小屋・撤収 |
1:50 |
10:20 |
同上・出発 |
0:45 |
11:35 |
2505m地点・ダウン4 |
1:15 |
11:45 |
同上・出発 |
0:10 |
12:30 |
大樽避難小屋・ダウン5 |
0:45 |
12:40 |
同上・出発 |
0:10 |
13:45 |
1498m地点・ダウン6 |
1:05 |
13:50 |
同上・出発 |
0:05 |
14:40 |
ゲート前・行動終了 |
0:50 |
<気象報告>
文責 1回生O
3月10日
登山口から西駒山荘までの経路は雲はほとんどなく快晴で、気温は昼で0度付近と暖かかった。
3月11日
西駒山荘で停滞したが、午前中は雲も少なく気温も前日と同じくらいだった。午後からは雲が増えてゆき、しだいに山頂が見えなくなった。
3月12日
気温は前日と同じくらいだったが、一日中曇りで薄い霧がかかっていた。
3月13日
ほとんど雲はなく、気温は前日に比べても温暖で樹林帯ではメリノウール一枚で用土いいくらいだった。稜線では20m/sの強い風が吹いていた。
<食料報告>
文責 2回生N
【1日目】(3/10)
朝・・・各自(パンなど)700~900㎉
夕・・・9人分鍋(みそ)
→《具材》
- バラ肉 2㎏
- 白菜 3/4玉
- 舞茸 1パック
- プチっと鍋(みそ) 12個
- もやし
- 白ネギ 1束
- サリ麺3袋
- 水 5ℓ
【2日目】(3/11)
朝・・・各自(パンなど)700~900㎉
夕・・・9人分鍋(寄せ鍋)
→《具材》
- バラ肉 2㎏
- 白菜 3/4玉
- 舞茸 1パック
- プチっと鍋(寄せ鍋) 18個
- 白ネギ 1束
- ソーセージ
- サリ麺3袋
- 水 5ℓ
【3日目】(3/12)
朝・・・アルファ米(各自)
夕・・・9人分鍋(キムチ)
→《具材》
- バラ肉 2㎏
- 白菜 3/4玉
- 舞茸 1パック
- プチっと鍋(キムチ) 18個
- 白ネギ 1束
- スライス餅
- 豆腐
- サリ麺3袋
- 水 5ℓ
【4日目】(3/13)
朝・・・カレーメシ
→《反省・改善》
前泊のホテルで恐らく食料が溶け始めたため、また想像以上に気温が暖かかったため、1日目の夜は食料が完全に解凍されてしまった。避難小屋の氷の中に入れて凍らせはしたが、茸ともやしは傷んでおり、特に3日間の茸は噛んだ瞬間に苦味があった。そのため来年は前泊や登山環境の気温に気を付け、また茸やもやしに関しては思い切って持っていかないという選択肢も視野にいれるべきである。
しかし、水と食料の量に関してはちょうど良かったと言える。ソーセージや餅は入れるとかなり美味しく、かさばりはするが、余裕があるなら今後も採用して良いと言える。
<衛生報告>
文責:1回生M
衛生装備の使用はなかった。
<装備報告>
文責:2回生T
ガス缶小(極地用)を9個使用した。3泊4日において、もう2つか3つくらい必要であると感じた。
〈反省と改善〉
文責:1回生S
(田部)
反省
・テントシューズを計画書に記載し忘れた上、持ってくるのも忘れてしまった
・危険箇所通過時に間隔を詰めすぎてしまった
・隊列構成時に前後両端に上回生を集中的に配置してしまった為に中間部の一回生を見切
る事が出来なかった
改善
・計画書の見直しを上回生全員で行う事を徹底する
・必ず声がけし間隔を開けさせる
・隊列構成を出発時により深く考える
感想
現役最後の合宿として無事登頂・下山出来て本当に良かった。しかし、滑落未遂が発生等大きな課題も多く見つかった為来年度の事を考え今のうちにしっかり対策したい。
(SL3回生I)
反省
・前の一回生を見るのに気を取られ、後ろの一回生を十分に見られなかった
改善
・前後しっかりと目を配りながら行動する
感想
最後の合宿を完遂できてよかった。
(3回生K)
反省
・テルモスを落としてしまい冷たい水しか携帯できなかった
・シャリバテ塩分不足により、体調が悪くなってしまった
改善
・荷物の外付けはしない
・塩分チャージ、アミノバイタルの補給
感想
現役最後の山行とのことで山頂を踏めてよかった。
(2回生T)
反省
・CLであるのにも関わらず、後ろの人に気を配った行動ができていなかった
改善
・自分が行けるから、ではなく全員ができるような歩き方、ルートの選択をする
感想
今回、後輩が危険な目に遭ってしまったという事実を真摯に受け止め、今後一切このようなことが起こらないよう、パーティーメンバー全員に気を配らなければいけないと感じた。
(2回生N)
反省
・1日目が前回ほどではないが少しバテてしまった
改善
・歩荷やランニングといったトレーニングを行い、体力を取り戻す
感想
今年度の集大成である春期が、自分の今までの合宿の中でもトップレベルの好天候でよかった。次からは3回生が居ないのが寂しいが、自分達が最高学年になるのでしっかり責任を持って、来年度も頑張りたい。
(1回生N)
反省
・脚力の不足で行動時間を引き延ばしてしまった
・アタック中の滑落によりメンバーに精神的負担をかけることになってしまった
改善
・ランニングや歩荷だけでなく、登山に使う筋肉を意識してトレーニングを行うことで改善に努める
・アイゼンをしっかりと刺してグリップを得られているかを確認しながら慎重に登ることで事故の再発防止に努める
感想
アイゼンとピッケルを使った登攀がとても楽しかった。また、初日とアタック日の天候がとても良く景色を楽しむことができ嬉しかった。
(1回生M)
反省
・行動中靴紐が緩み、遅れを生んでしまった
改善
・休憩中に靴紐、アイゼンの点検を行う
感想
天候に恵まれ、最高の景色を見ることができた。ヒヤヒヤする場所もあったが、冬山の魅力を十分に感じた合宿だった。
(1回生O)
反省
・不注意により滑落しかけた
改善
・楽しくなりすぎて警戒心がなくなってしまっていたので、もっと気をつける
感想
怖い思いをしたが良い経験になったし楽しかった。
(1回生S)
反省
・下山時、気の緩みから数回転倒した
改善
・下山といって気を緩めず、集中する
感想
絶景とスリルを十分味わえた。
2024年度雪山班木曽駒春期合宿事故報告
<概要>
文責 1回生O
発生時刻:3月14日 6:30頃
木曾駒ケ岳山頂へ向けたアタックの最中、アイゼンとピッケルを使い傾斜の大きい地点を登っていた。先行しているメンバーが落下してきた場合に巻き込まれてしまう可能性を考え横方向に移動したところ、アイゼンの前爪を斜面に刺すことができておらず、足を滑らせ約1mずり落ちた。ピッケルをすぐに斜面に刺したことで停止することができた為、怪我などの被害はなかった。しかし、斜面の状態が悪かった場合は下にいたメンバーを巻き込んだ大きな事故に繋がる可能性があった。
<発生場所>
<対策>
斜面を登る際、アイゼンがしっかりと刺さってグリップが効いているかを確認しながら一歩ずつ慎重に行動することで再発防止に努める。
<概要>
文責 1回生O
発生時刻:3月14日 8:40頃
角度が60度くらいのアイスバーンと岩の混ざった短い坂をカニ歩きで坂を下りていました。坂をおり終えたところで道に少し深めの穴が開いているところがあり、その中に足を置こうとしたところバランスを崩し背中から転びました。坂の終わりが近かったので坂が緩くなったところで止まるだろうと思っていたのですが、思ったよりアイスバーンが続いており減速しなかったためそのまま滑落しそうになりました。中山が自分の前に飛び込んで止めてくれたので助かりました。
<発生場所>
<対策>
カニ歩きではなく後ろ向きで降りたほうが安全だった。当時は気が緩んでいて警戒が不足していた。雪山はちょっとしたミスで命を落とすこともあるので自分が思っている以上に慎重に行動するよう心掛ける。
<PL対策>
文責 PL3回生T
原因の一つとしてアイスバーン状態でのアイピン歩行経験・訓練不足が上げられる。本合宿では3日目にアイスバーン斜面での雪上訓練を行っていた。しかしそこでは装備なしでの滑落停止しか行わなかった。今思えば、そこでアタックザック装備状態でアイピン歩行含めた複合的な訓練を行い、かつ滑落停止では押すなどして不意に落ち滑落停止するなどいったより実践的な訓練を行えばより経験を積めたと考える。その為次回以降は工夫を凝らしより実践的な訓練を時間かけ行うべきと考える。
1回生Nの事例では、そもそもの滑落原因として危険個所にも関わらず間隔を詰め過ぎたというものがあった。これは「これぐらいなら大丈夫であろう時間が惜しい」と上回生を始めとして慢心してしまった結果といえる。状況を冷静に見極め判断することが慢心せず判断し危険箇所は必ず広く間隔を取り安全に通過することが重要だと考える。またこの事例では、足の疲労により歩調がおかしくなっており危険だと判断し事故発生箇所の手前で急遽休憩させ後ろの者を先に行かせた事もあり1回生3名が後部に集中しそれに対し監督出来るのが自分一名と一人一人に対し的確に指示を出すことが出来ない状況になっていたことも滑落未遂の原因になったとも考えられる。このため、隊列の並び順は慎重に考え上回生1名に付き監督する1回生は最大でも2名とするべきだと考える。
次に1回生Oの事例では、本人も述べている通り最大の難所を超えた後であり油断していたのが最大の原因と考えられる。対策としてPL SLを中心として気を抜かないよう声掛けをする事が重要であると考える。また今回のような暴風下で声の通らない環境では上回生一人一人が自覚を持ち周囲に声をかける事も重要であると考える。また、事故発生箇所手前の難所で本来安全を考え後ろ向きで降りるべきところ先頭が本人の技量では前向きで問題なく降りれると判断した為前向きで降り、それに釣られて後続の1回生も前向きで降りる場面が見られた。この事より、先頭は後続の見本となるよう安全を第一に危険個所の通過方法を考え、必要に応じ注意喚起や通過方法レクチャー。そしてそれを後続はその後続へしっかり伝えることが重要だと改めて感じる結果となった。
活動時の写真等当部インスタグラムより