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第2話(2)

敵軍迫る(2)

 夜中に緊急出動命令が出た。
「マニラ港の入り口で輸送船が雷撃され、沈没した。本船は直ちに救助に向かう。」

 全速力で現場海域に向かう。
昼間の暑さが嘘のようで、夜風が気持ちよい。
ドーン、ドーン
遠方で爆雷の爆発音が聞こえる。
水上機から投下された照明弾が、海面をぼんやりと照らしている。

 航海士と機関士以外、甲板に出て周囲に目をこらす。
突然、右舷側から真っ黒い駆潜艇が前を横切る。
航走波を受け、哨戒艇は飛び上がる。
「くそ、気をつけろ!」

 「速度落とせ、右30度に浮遊物。」
木片や、荷の一部、キャンバスなどが波間に漂っている。カンテラで照らす。
「哨戒艇だ、誰かいるか!」
 オーイ  オーイ
波間からか細い声が聞こえる。
沈みかけた浮遊物にしがみついている人間の頭が、そこここにある。

 舷側越しにロープやネットを投げ入れ、掴まった漂流者を甲板に引き上げる。
海水に濡れているため、とても1人では引き上げられない。砲手とチームを組み、2人でロープを引き、1人が人間を引き上げた。
他の漁船員だった乗組員は、手馴れたもので、ひょい、ひょいと漂流者を引き上げている。

 甲板に引き上げられた兵士らは、目もうつろだ。
中にはひどく怪我をしている者や、重油まみれの者もいる。

 2時間ほど捜索して、30数人を救助した。
皆に白湯をくばる。
「突然ドカンときて、10分もたたないうちに沈んでしまった。」
「下の船倉にいた者は、ほとんど助からなかったろう。」
「戦う前からこれでは、やりきれん。」

 9月、フィリピンを目指した輸送船のうち、無事に着いたのは20%だった。

     
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