(ハキミの話は続く)
少し掘ると、水がしみ出てくるような場所だ。
水浸しになりながら、敵の現れるのを待つ。
砲撃が始まった。
ありがたいことに、砲弾はうなり声を上げ、頭上を飛び越えて行く。
「近づくまで撃つな、敵はこちらの位置がわからないんだから。」
ファッサーが教えてくれる。
草原からエンジン音が聞こえてきた。
「戦車は動けないはずなんだが。」
緑色の車体が現れた。
「くそ、水陸両用戦車だ!」
味方の1人が、我慢できなくなり発砲する。
数台の戦車が歩兵を従え、射撃をしながら突進してきた。
僕は夢中でAK-47の引き金を引いた。
弾倉が空になる。
突然、先頭の戦車がガクッと止まり、燃えだした。
味方の対戦車ロケット弾が命中したのだ。
敵はサッと、後退していった。
戦車は爆発し、炎を大きく吹き出した。
------------
夜、総攻撃をかけることになった。
新しい弾倉と手榴弾が支給され、ナツメヤシが配られた。
僕は家族に手紙を書こうとしたが、書きたいことが一杯ありすぎてまとまらず、鉛筆を置いた。
真夜中、行動を起こす。
前の仲間の背中が見える程度の暗闇だ。
我々は分隊ごとに固まり、地面を覆って前進した。
時々閃光が走り、照明弾が上がる。
グワッ!
突然、大地が振動し、周りが真っ赤になった。
敵の弾幕の中に入ったのだ。
周りの兵士が人形のように吹っ飛ぶ。
火炎や熱い鉄片、土が雨のように降り注ぐ。
煙で方向がわからなくなった中、この地獄から抜け出そうと夢中で走る。
少し窪地になったところに飛び込む。
仲間が何人も飛び込んできた。
「助けてくれ!助けて!」
「落ち着け、敵は闇雲に撃っているんだ!」
最新の画像もっと見る
最近の「ペルシャ湾波高し」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- クリミアの歴史(7)
- 「オリエント急行」バルカンを行く(9)
- ウイルスって何だろう(6)
- 不死身の通信ネットワークを構築せよ!(6)
- ヒトラーのいない第二次世界大戦(7)
- 不思議な病気(8)
- 秀吉の野望と挫折(9)
- 生命の源「アミノ酸」(6)
- 「ドイツ民主共和国」の消滅(8)
- ナイルの水争い(8)
- ドン・カザーク(19)
- 貧者の空軍(9)
- 地震って何?(7)
- 遥かなる海へ(16)
- 北軍兵士の見た「風と共に去りぬ」(12)
- 脳内麻薬を捜せ!(9)
- 19世紀パリの光と影(9)
- 若宮丸の航跡(9)
- 原爆スパイ(8)
- 「北京の55日」番外編(8)
- 「地球外生命」はいるか?(5)
- 「林彪事件」の謎(8)
- 金(きん)(8)
- 国歌いろいろ(6)
- 悪党(鎌倉末期)(6)
- 老化を防げ!(5)
- 森の中に消えゆくトラ(4)
- テスラー成功と挫折(7)
- 国境とは?(25)
- 日記(0)
- 大西洋(696)
- ソマリアの青い海(20)
- 吹雪のバルト海(24)
- ペルシャ湾波高し(24)
- ロック・オン(20)
- ワレ「雪風」ト共ニ(20)
- 騎兵隊、前へ!(26)
- 惑星の動きを探れ!(19)
- 東方見聞録序章(25)
- 元素を捜せ!(25)
- レアメタルは戦略物質だ!(6)
- 種はどこから?(17)
- 智の都、アレクサンドリア(20)
- 文化大革命の嵐(22)
- 世界は微生物で満ちている!(19)
- 連合艦隊の誕生(17)
- 鉄砲見参!(18)
- 成功は失敗の始まり(17)
- 黒船の影(19)
- 石油の一滴は血の一滴(15)
- 前門の虎、後門の狼(8)
- 月をめざして(18)
- 水の不思議と太陽の恵み(17)
- がんの正体をあばけ!(10)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事