(ハキミの話は続く)
弾幕が後方に移動していった。
モストフィーが皆を再編成する。
小隊の人数は、半分になっていた。
「これから、全部隊が全力で夜襲をかける。」
「我らがジハードに後れを取るな!」
前方一帯が、連続する爆発で明るくなった。
無数の曳光弾が飛び交う。
第1陣が攻撃を始めたのだ。
味方が負傷兵を抱えて退いてくる。
我々は前へ進んだ。
敵陣から銃砲弾がひっきりなしに飛んできた。
匍匐前進に切り替える。
動かなくなった兵士の脇を通る。
“ピーッ”
一斉に立ち上がった。
「アッラー・アクバール!」
「アッラー -------------------」
曳光弾の矢が自分めがけて飛んでくる。
身体を2つに折り、AK-47を腰だめに撃ちながら突っ込む。
撃っていると、不思議と恐怖心が薄らぐ。
曳光弾の束が襲いかかってきた。
味方がバタバタ倒れる。
戦車の黒い砲塔が見えたと思った瞬間、火の玉が近くで膨らんだ。
一瞬、気を失った。
続けざまの爆発で、我に返る。
閃光の中、味方が次々と突撃し、次々と倒れていく。
痛みは感じないが、身体が動かない。
罵っていると、誰かが駆け寄ってきた。ファッサーだ。
「味方は全滅だ、後退しよう。」
「身体が動かない、放っておいてくれ。これで天国に行ける。」
「これじゃあ、天国は満杯だ。次の機会にしよう。」
僕はファッサーに半ば引きずられながら、後退した。
まだ、攻撃は続いている。
前進する部隊の間に爆発が起きる。
ファッサーが呟く。
“滅茶苦茶だ。こんな戦いってありか。”
-------------------------------------------------------
軍医が回ってきた。
「早く元気になって、また一緒に仕事をしよう。」
ハキミは、初田の手をそっと握り返した。
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