中部ソロモンから日本軍が駆逐されたため、連合軍はブーゲンビル島への攻勢を強めた。ブインへの空爆は激しくなり、連日、百機を越す戦爆連合が襲ってきた。日本軍もブイン周辺に数十機の戦闘機を配置し、邀撃したが、度重なる空戦でその数を減らしていった。
ある日には、魚雷艇隊のいるショートランド島に真昼間、敵駆逐艦隊が接近し、艦砲射撃を加えた。たまらず、水上機隊、魚雷艇隊とも基地を引き払い、ブーゲンビル島に移動した。
ブインの港には沈没船が横たわり、基地周辺は焼けただれ、穴だらけになっていた。定期便の爆撃が終わり、ショートランド島との間の海峡に落とした、敵の機雷を処理するため、掃海艇と魚雷艇が出動した。魚雷艇で残っているのは、わずか3隻で、その内の1隻は損傷して、半分の速度しかでないポンコツだ。
夜活動してきた目には、昼間の太陽がことさらまぶしい。
「右170度、機影!」
ゴマ粒のような黒点が数個、こちらにまっすぐ向ってくる。
「味方機にしては、動きが変だ。」
「対空戦闘、用意!」
火力を最大限に発揮するため、3隻が横に並んだ。
「前進一杯!」
損傷艇がたちまち遅れる。
「敵機だ、グラマン戦闘機だ!」
遅れた魚雷艇が機銃掃射を受け、切り裂かれたように艇の破片が飛び散る。
後続の、突っ込んでくる戦闘機の機首がはっきり見える。
日下部上水の機関砲が、その機首に向って火を吐く。
「面舵一杯!」
敵戦闘機の主翼に発射の閃光が光る。
着弾の水柱が、旋回した艇の横を走る。
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