中国船からの情報は、次のようなものだった。
〇中国では皇帝陛下(道光帝)のもと、安定した治世が続いている。
〇しかし銀の価値が上昇し、住民の生活を圧迫している。
〇この原因は、イギリス人らが阿片を中国に持ち込んでいるためである。
その代金として中国の銀が流出しているのだ。
〇皇帝陛下は民に害をなす阿片を持ち込むこと、および使用することを禁止する旨、命じられた。
〇その結果、取締り当局と密売しようとするイギリス人や中国人との間に争いが起きている。
〇しかし、遠い広東(日本への出発港、中国寧波より南へ1千キロ余)で起こっていることなので、詳細は分からない。
中国を支配している清帝国は中華思想のもと、海禁政策をとり、海外との貿易を禁止していた。
しかし、需要があるので、認めざるを得ない。
そこで、密貿易の形をとらせ、民間商人に貿易管理と徴税を行わせていた。
ただし、日本の長崎と同様に、海外との貿易は中国南部、広東の広州一港に制限していた。
長崎奉行所では以前より、中国における阿片の流行およびイギリスがアジア進出をうかがっていることを把握していた。
山中は、恐る恐る与力の不破に尋ねた。
「イギリスもひどいことをしますね、武力を用いるでしょうか?」
「わからん。しかし、相手は徳を持たない野蛮人だ。弱みを見せたら、身ぐるみはがされる。」
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