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第1話(1)

 嵐の予感(1)

 私は徐文立、今春(1966年)南京工業大学を卒業し、紫金山天文台付属機械研究所に入所することになった。

 卒業生の就職先は、政府により振り分けられる。

 誰しも、都会で安定した公共機関に入りたい。
父はコネを利用し、党幹部に頼み込み、私の今の職場を確保してくれた。

 我が祖国、中華人民共和国は建国以来17年、数々の困難を乗り越え、発展しつつある。
私は、科学技術を通し、国の発展に寄与したいという熱意に燃えていた。

 機械研究所では、天文台で使う天体望遠鏡の開発、製作を行っていた。

 主任の宗さんが説明してくれる。
「ここではレンズの設計、製作から望遠鏡の設計、製作、組立まで一貫して行っている。」
「毛主席の言われた“自力更生 ”の精神で、外国の力を借りず、我々だけでやっている。」

 「君は数学が得意と言うことだから、ゆくゆくは光学系の設計を担当してもらおう。」
「しかし、その前に製作現場を知る必要がある。」


 研究所にはレンズの製作工場や、機械部品の製造工場があった。
工場では数人の労働者が、薄暗い作業場でレンズの研磨作業をしていた。

 研磨粉で灰色になった一人が顔を上げる。
「主任、マスクが足りない、新しいマスクを支給してくれ。」
「わかった、工場の責任者に伝えるよ。」

     
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