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第2話(1)

空襲(1)

 前線でのレーダー部隊の活躍を見たいと思い、ベルリンの武宮秘書官に頼み込んだ。

 運良く許可が下りたので、パリ行き列車に乗り込んだ。

 灰色の列車の乗客は軍人と軍属ばかりだった・
固い長いすの隣に座った中尉は、北フランスに配置されている装甲師団の主計将校だった。

 「部隊は東部戦線で消耗したので、北フランスで再編成中だ。」
「運良く10日間の休暇が取れたんだ。命の洗濯をしたよ。」
「東部戦線は激戦が続いているようですね。」
「ひどいものさ。本国やフランスに居る連中に、いくら話しても理解できないだろう。」
中尉は急に暗い顔になり、車窓の外に眼を向けた。

 憧れのパリは、静かで人通りも少なく、シャッターを閉めた店が多く見られた。
リポリ街にあるドイツ占領軍報道班にいき、ブルターニュ半島軍事施設の取材許可証をもらった。

 パリから補給部隊のトラックに便乗し、ブレストに向かう。
緑豊かな、美しいフランスの田園地帯を走りぬける。
“戦争など、遠い国の出来事だな。”
それが間違いだ、とブレストについてすぐわかった。

 ブルターニュ半島には、ブレストの他、ロリアン、サンナゼールなどにドイツ海軍基地があり、そこからビスケー湾を通って大西洋にUボートや水上艦船が出撃している。
そのため、各基地はイギリス空軍に激しく爆撃されていた。

 ブレストの基地内は、ドックや貯蔵庫、工場などが破壊され、まるで廃墟だ。
それでも港には駆逐艦や掃海艇、Uボートなど小艦艇が数隻、係留されている。
司令部を探していると、突然、空襲警報のサイレンが鳴り出した。

 人工の煙霧がもくもくと港を覆い始める。
兵士や港湾労働者が走る方向に駆け、防空壕に滑り込む。
カカカカカッと甲高い対空機関砲の音を押しのけるように、グワッという爆撃機の飛翔音。

 “くるぞ!”
ドカドカドカン!
壕内が激しく揺れる。
     
     
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