モスクワ北東のカリーニングラードにある隔離された研究所で設計、製作を行う。
ドイツ人技術者はマグヌスという、背の高い神経質そうな男だった。
「君はジャイロスコープについて、経験があるかね?」
「いいえ、原理程度は理解していますが。」
「それでは、傍で見ていたまえ。但し、邪魔はしないでくれよ。」
私は片言のドイツ語を、マグヌスは片言のロシア語を話せる。
マグヌスは図面を引っ張り出し、調べ始める。
「それは何の図面ですか?」
「***の部品図だ----------------」
ワシリエフは仕事が終わった後、ドイツ語の辞書を片手に、必死に図面を辿る。
また、文献や本を借り、猛勉強した。
マグヌスは、最初はワシリエフの矢継ぎ早の質問に、面倒くさそうに答えていたが、ワシリエフの熱意が伝わったのか、そのうち丁寧に教えてくれるようになった。
ロケットの誘導装置は、ロケット・エンジンと共にロケットの最重要部である。
V-2ロケットは慣性航法により飛行する。
ロケットに搭載された水平、垂直、積分の3つのジャイロスコープにより、設定方向からの角度偏移を測る。
その情報を、姿勢制御装置に入力して軌道修正を行い、ロケットを目標に到達させる。
ワシリエフは週末に、1週間分の仕事内容を詳細なレポートにして、本部に提出する。
V-2ロケットは12基復元する予定だ。
ドイツから持ち帰ったジャイロスコープを修理、調整するのとは別に、新たに製作しなければならない。
ジャイロスコープは極めて精密な装置だ。
参考図:ジャイロスコープ-Wikipedia
最新の画像もっと見る
最近の「月をめざして」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- クリミアの歴史(7)
- 「オリエント急行」バルカンを行く(9)
- ウイルスって何だろう(6)
- 不死身の通信ネットワークを構築せよ!(6)
- ヒトラーのいない第二次世界大戦(7)
- 不思議な病気(8)
- 秀吉の野望と挫折(9)
- 生命の源「アミノ酸」(6)
- 「ドイツ民主共和国」の消滅(8)
- ナイルの水争い(8)
- ドン・カザーク(19)
- 貧者の空軍(9)
- 地震って何?(7)
- 遥かなる海へ(16)
- 北軍兵士の見た「風と共に去りぬ」(12)
- 脳内麻薬を捜せ!(9)
- 19世紀パリの光と影(9)
- 若宮丸の航跡(9)
- 原爆スパイ(8)
- 「北京の55日」番外編(8)
- 「地球外生命」はいるか?(5)
- 「林彪事件」の謎(8)
- 金(きん)(8)
- 国歌いろいろ(6)
- 悪党(鎌倉末期)(6)
- 老化を防げ!(5)
- 森の中に消えゆくトラ(4)
- テスラー成功と挫折(0)
- 国境とは?(25)
- 日記(0)
- 大西洋(696)
- ソマリアの青い海(20)
- 吹雪のバルト海(24)
- ペルシャ湾波高し(24)
- ロック・オン(20)
- ワレ「雪風」ト共ニ(20)
- 騎兵隊、前へ!(26)
- 惑星の動きを探れ!(19)
- 東方見聞録序章(25)
- 元素を捜せ!(25)
- レアメタルは戦略物質だ!(6)
- 種はどこから?(17)
- 智の都、アレクサンドリア(20)
- 文化大革命の嵐(22)
- 世界は微生物で満ちている!(19)
- 連合艦隊の誕生(17)
- 鉄砲見参!(18)
- 成功は失敗の始まり(17)
- 黒船の影(19)
- 石油の一滴は血の一滴(15)
- 前門の虎、後門の狼(8)
- 月をめざして(18)
- 水の不思議と太陽の恵み(17)
- がんの正体をあばけ!(10)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事