秋山が基地で艇のエンジンの調整をしていると、操舵手のブラドックが話しかけてきた。
「どうだ、大分慣れたか?」
「ええ、何とか。中尉殿の厳しいのには、まだ慣れませんが。」
「中尉は親父を朝鮮戦争で亡くしたこともあり、アジア人を信用していないんだ。」
「但し、指揮官としては立派なんで、ジョーもしっかり仕事をすれば、認めてくれるよ。」
お互いの故郷のことを話していると、非常呼集がかかった。
「6号艇がやられたらしい、救助に行くぞ!」
4隻のPBRが全速力で中州の島を目指す。
1時間ほどして、目的地付近に到着する。
すでにガンシップ(武装ヘリコプター、ベルUH1B)が何機か、100mほどの低空を舞い、ロケット弾や機関銃を撃ちまくっている。
「サンパンを追跡して入った水路で、待ち伏せを食らったようだ。」
爆煙をすかして、丸太でブロックされた水路の入口が見える。
「あの丸太を引っ張り出そう。」
3隻の援護射撃の中、秋山の乗った艇が近づく。
艇の周りが敵の銃弾により、泡立つ。
後進して丸太にぶつけるが、ダメだ。
秋山はとっさにアンカーを投げて、丸太に引っ掛けた。
「前進してくれ!」
丸太は沈みながら、ゆったりと動き出した。
「いいぞ、全速前進!」
カーター中尉が叫ぶ。
障害物が取り除かれた水路の奥から、1隻のPBRがスクラップになったPBRを曳航して現れた。
2隻とも銃弾で穴だらけだ。1隻はロケット弾を艇後部に食らっている。
死傷者も出たようだ。
2隻を護衛して基地に戻る。
「ジョー、よくやった!」
中尉が始めて、穏やかな表情を秋山に見せた。
3人の死者は黒いパンチョにくるまれ、ヘリコプターで空港に運ばれた。
負傷者はドンタンの野戦病院に送られる。
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