大型船舶による輸送も最初は成功したが、敵の空軍力が増すにつれ、損害が増えていった。
11月9日に行われた第3次輸送では、駆逐艦4を含む6隻が護衛し、戦闘機による上空援護がついていたにもかかわらず、輸送船6隻のうち、4隻が沈められている。
日本軍の小型船による輸送にも、攻撃の手が伸びてきた。
本田らの哨戒艇も、昼間は島影に隠れ、日が落ちてから航行を続けた。
あいにく、今夜は満天の星だ。
月明かりに照らされ、海面が幻想的に輝いている。
木下と金井甲板員が甲板に腰をおろし、こっそりと煙草をふかしている。
「女っ気のない生活も半年だな。」
「こう、動き詰めじゃあ、頭も身体もおかしくなりますよ。」
「カツオの群れを追い回していたときは、大漁の喜びがあったがな。」
「ああ、陸に上がってビールを飲みたい!」
ブーン
飛行艇がやってきた。
こちらの船を見つけたらしく、グッと高度を落とし、船のまわりを旋回し始める。
「皆、外に出て手を振れ!」
現地人のシャツをはおり、両手で目一杯手を振る。
本物の漁船と思ったのか、雑魚なので見逃してくれたのか、弾がなかったのか、グワーと翼をひるがえし、飛び去った。
「やれやれ、いつまでもこの幸運は続かんぞ。」
ただ飛び去ったのではなかった。
マスバテ島に近づいたとき、島影から浮上した潜水艦が現れ、近づいてきた。
ぐっと船速を落とし、50mほど離れて並走しだした。
艦橋からこちらを双眼鏡で観察している。
艦橋から“停船せよ”の光信号。
海に飛び込むか、一か八か反撃するか。
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