2人の開発した装置を下図に示す。
アルファ線源ABからのアルファ粒子が直接感光板Sに当たらないよう、鉛板Pを設置する。
金属薄膜RRから反射されるアルファ粒子を感光板Sで受け、顕微鏡Mで発光点を観測する。
「先生、ごく少量ですが反射されるアルファ粒子がありました!」
「金属薄膜の種類や厚さを変えてやってみよう。金箔ではどうかな?」
数種類の金属薄膜で試みたが、反射される粒紙数に差はあるものの、跳ね返されるアルファ粒子があるという結果に変わりはなかった。
「アルファ粒子のように重い帯電粒子を曲げるには、強力な磁場が必要だ。」
「金属薄膜の中にそんな力があるとは思えない。不思議だ!」
ラザフォードは頭を抱え込んでしまった。
ガイガーらは、さらに実験を続けた。
そして、厚さ0.4ミクロンの金箔にアルファ粒子を当てたとき、大角度で散乱される粒子数は入射粒子の1万分の1程度であることを確かめた。
入射粒子一万個のうちの1個を見つけるのである。
ラジウムから放射されるアルファ粒子との、我慢くらべの実験だった。
ガイガーとマースデンは交代で真っ暗な部屋の中、実験を続けた。
2人の眼は真っ赤にはれ上がってしまった。
参考図:「こうして始まった20世紀の物理学」、西尾成子、裳華房、1997
