レーダー基地は小高い丘の林の中にあった。
基地隊本部の中尉が説明してくれる。
「まず、敵編隊をあのフライヤ警戒レーダーで捕捉、追跡する。」
中尉の指差した先には、木立の上に突き出した、格子状の巨大レーダーがあった。
「最大探知距離は120キロだ。ただし、敵機の高度情報は得られない。」
「40キロまで接近してきたら、このビュツブルグ邀撃レーダーが敵機を探知、追跡する。高度情報も得られる。」
それは直径が3メートルほどのパラボラアンテナで、回転台に乗っている。
「このレーダーで得られたデータは逐次、88mm対空砲に送られ、有効弾を敵に与えている。」
「実際、昨夜はイギリスの重爆を2機撃墜した。」
「その内の1機は、畑のあの黒くこげているところに火の玉となって落下したんだ。」
「レーダーの精度は十分ですか?」
「いや、敵機のスピードが速くなっている。探知距離、精度とも不十分だ。技術開発に期待している。」
佐慈は、レーダーと対空砲が連動している技術の高さにショックを受けた。
「サジ、帰りに夜間戦闘機隊の基地に寄ってみよう。」
「面白い話が聞けるぞ。」
夕暮れの飛行場には数十機のBf110双発戦闘機が引き出され、整備兵が機体に取り付いて忙しく働いていた。
燃料、弾薬の補給、エンジンや無線機、火器の調整などを行っているのだ。
Bf110の機首には、鹿の角のように長く突き出たリヒテンシュタイン・レーダーが設置されている。
整備兵に話を聞く。
「この夜間戦闘機には、パイロット、無線手、後部銃手が乗り込みます。」
「無線手がレーダー操作を兼務し、敵機を探します。」
「探知すると、今、真っ直ぐなこのブラウン管上の陰極線にギザギザが現れるのです。」
「探知能力はどれくらいですか?」
「最大探知距離は5000mで、まあ有効なのは2000mぐらいです。」
参考図:「ドイツ夜間防空戦」、W.ヨーネン、光人社NF文庫、2001
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