2.パリへ
サジュールは何か未来をつかもうと、パリへ行くことを決意する。
祖父は、孫が皇帝のそばに近づけると喜び、父、兄はホッとした表情を見せる。
1スー銅貨20枚(バゲット1本2スー)を小袋に入れ、憧れの都、パリを目指す。
途中、農家の麦刈りの賃仕事をしながら、徒歩で進む。
12日目、パリに着いた。
市門を入ると、びっくりするような光景が広がっていた。
大勢の人が行きかい、石畳の上を紳士、淑女を載せた2輪馬車が通る。
しかし、少し進むと、薄汚れた建物、狭くて薄暗い通りがゴミゴミと広がる。
異臭がする。
馬やロバが引く荷車が行きかう。
忙しく行きかう人々の顔には、穏やかさは見られない。
サジュールらは、カルチェ・ラタン地区の安宿にもぐりこむ。
一部屋に粗末なベッドが6つあり、12人が詰め込まれる。
「やれやれ、田舎の方がましな暮らしだったな。」
「働いて小金をためれば、快適なアパートに移れるさ。」
同室の男たちは、皆、出稼ぎにきた日雇い労務者だった。
参考図:「19世紀パリ時間旅行」、鹿島茂、青幻舎、2017