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壊血病:クック船長の成功

 壊血病(4):クック船長の成功

 1769年、謎の南方大陸を探すという密命を帯びたクック船長は、事前に壊血病に関する多くの報告を調査した。

 そして、乗務員の壊血病予防のためには、船内環境と食事が大切であることを理解する。

〇船内を清潔に保ち、換気に心がける。

〇航海途中に、たびたび生野菜と水の補給のため、港に立ち寄る。

〇抗壊血病剤として、麦芽汁、ザワークラウト(キャベツなどの漬物)、

 ニンジンのマーマレード、蒸留水、濃縮果汁などを用いる。

 クック船長は南太平洋各地の調査を行い、オーストラリア大陸を発見したのち、イギリスに帰国する。

この2年間にわたる航海で、壊血病による死者を一人も出さなかった。

これは、当時としては、観測船による航海であることを考慮しても、画期的なことだった。

 

 「食事(果実や野菜)で壊血病は防げる。」

 しかし、この体験は海軍本部に正確には伝えられなかった。

当局は、「治療は安く、手軽でなければならない」との考えのもと、水や生鮮食料の補給は2の次にされた。

そして、麦芽汁など、効果のない抗壊血病剤が使用され続けた。

 その結果、18世紀末、英仏戦争の際、2か月間海上にいたイギリス艦隊の乗務員のうち、その7分の1が壊血病になった。

壊血病による死者は、戦闘による死者をはるかに上回っていたのである。

 

 19世紀に入り、壊血病撲滅が戦力維持のためには必要不可欠であることを、ようやく当局が認識する。

 各艦に、樽に詰めたレモン果汁やオリーブ油漬けにしたレモンが積み込まれた。

 レモンは高価だったが、その効果は抜群で、壊血病による死者はほぼ“0”になった。

 参考図:「壊血病」、スティブン・バウン、国書刊行会、2014

     

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