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第3話(4)

東プロイセン(4)

 背後の村が砲撃で炎に包まれた。
黒煙が林の中まで流れてくる。

 戦車のエンジンの低い轟音とキャタピラのきしむ音が聞こえてきた。
「来たぞ!!」
のどが、からからになる。
“ここで死んでも、日本の誰にも知られることはないだろう。”

 灰色の戦車が、木々を根こそぎ踏み潰しながら、怪物のように姿を現した。
戦車後部にはロシア兵が乗っている。
次から次へと戦車が現れ、前進してくる。

 突然、先頭の戦車がストップし、炎に包まれた。
パンツァーファウストがしとめたのだ。
パラパラと歩兵が飛び降りる。
後の戦車が砲撃しながら、突進してきた。

 あっという間に、佐慈たちのグループに近づく。
恐怖に駆られ、佐慈と少年は同時に引き金を引いた。
2発の砲弾は戦車をそれ、背後で爆発した。

 戦車は銃撃しながら、まともに佐慈たちのほうに、唸りを挙げて突っ込んできた。
佐慈は切り株に身体を投げ出した。
戦車のキャタピラが雪煙を上げ、眼前を通り過ぎる。
仲間の悲鳴が聞こえる。
近くで砲弾が爆発し、佐慈は意識を失った。

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 どれくらい時間がたったのだろうか。
寒さに身を震わせ、佐慈が意識を取り戻したときは、あたりは暗くなっていた。
佐慈の身体は半分、土と雪に埋もれていた。
切り株の影になったおかげで、敵兵に見つからず、助かったのだ。

 夢中で身体を掘り出した。
あたりに動くものの気配はない。
キャタピラで穿り返された荒地を、注意深く横切る。
廃墟の村を迂回する。
遠くで夜営しているらしい、ソ連軍のざわめきが聞こえる。

     
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