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第2話(1)

 現地残留(1)

 8月15日、日本は連合国に無条件降伏した。

 強烈な陽光の下、司令部全員が整列した。
「我が国はポツダム宣言を受諾した。動揺することなく、現在の任務を遂行し、指令を待て!」

 まずは助かったという安堵感と、これからの不安感が一度に押し寄せてきた。

 「国に帰れるかな?」
「シベリアかどこかに送られ、死ぬまで働かされるぞ。」
「内地は焼け野原だそうだ。帰っても住む家も食べ物もない。」

 イギリス・オランダ軍が進駐してくるまで、日本軍が治安維持に当たることになった。

 日本の敗戦をきっかけに、インドネシアでは、インドネシア人による独立の動きが急速に高まった。
スカルノ、ハッタら民族主義者らは、8月17日、スカルノを首班とするインドネシア共和国の独立を宣言した。

 共和国政府は、日本軍政下で結成された郷土防衛義勇軍の元将兵や青年団、左翼グループなどを集め、人民治安軍を結成した。
そして、共和国側は日本軍に武器引き渡しを求めた。
日本軍は連合軍に、独立派への兵器引き渡しを厳禁されていたため、各地で衝突が発生した。

 北村は、ジャカルタ近郊の港に集められた十数隻の哨戒艇の管理を任されていた。
哨戒艇と行っても、漁船を改造したり、現地で建造した船に機銃を付けたものに過ぎない。

 港の基地の周りも騒がしくなった。
日本軍の物資、装備の払い下げを求め、群衆が押し寄せてきた。

 そんなある日、ルカナ中佐と名乗るでっぷりしたインドネシア人が面会を求めてきた。
元郷土防衛義勇軍の幹部だったとかで、カタコトの日本語がしゃべれた。

 「インドネシア、オランダ追い出す、独立。」
「日本、同じアジア人、助ける。」
「オランダと戦う、君の船、必要。」

 参考図:「残留日本兵の真実」、林英一、作品社、2007
     
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