アンツィオから出撃した第5軍はドイツ軍の退路を断つ計画だったが、途中でそれを変更し、主力をローマへと向けた。
実より名を選んだのだが、クラーク将軍としては、間近に迫った北フランスのノルマンディ上陸作戦の前に、イタリア戦線を檜舞台に上げておきたかったのだろう。
側面援護だった第100大隊の前を、第1機甲師団の戦車、装甲車、自走砲、トラックの長い列がローマを目指して驀進して行く。
6月6日、ローマ陥落。
翌日、ノルマンディ上陸をラジオ放送が伝えた。
「我々を、新聞見出しに1日しか載せてくれなかった。」
とは、クラーク将軍の嘆きだが、兵士には関係ない。
栄光より、1日も早くこの忌々しい戦争を終わらせたいのだ。
第100大隊はローマ郊外を通り、北上を続ける。
その間にも、二世部隊に新しい動きがあった。
本土で訓練を受けていた二世部隊の本隊、第442連隊戦闘団がアンツィオに上陸し、第100大隊も第442連隊に編入された。
ゴトーたちが道路際で休憩している前を、真新しい制服を着て、汗を浮かべ、緊張した顔つきの第442連隊の兵士が通る。
「いよ、新兵さん。待ちくたびれたよ。」
「ドイツ野郎が来ても、ママのスカートの中に隠れちゃだめだぜ。」
「9ヶ月前は、俺たちもあんなだったんだな。」
「一冬で10歳も年取った感じだ。」
連合軍はローマ解放後、1日約10キロのスピードで北上、ドイツ軍の橋梁破壊や待ち伏せ攻撃を跳ね除け、2週間後にはローマの北200キロの線に達した。
第442連隊はイタリア半島の西側ルートを北上する。
輝く陽光を浴びると、冬のカッシーノの寒さが嘘のように思える。
多くの町を通過する。
“ウエルカム、解放者”の旗。
「あんた達に会えてうれしいよ。でも、なぜこんなに長くかかったんだい?」
「ここに来る途中で、仲間が大勢死んだからさ。」
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