7月下旬、ムンダへのアメリカ軍の総攻撃が始まり、ニュージョージア島の陥落は時間の問題となった。敵軍の次の目標と予測されるコロンバンガラ島の防衛強化が急務になり、駆逐艦による兵員と軍需品の輸送‐「東京急行」‐が何度となく行われた。これを阻止すべく、敵艦隊もそのつど出撃した。
8月1日、輸送駆逐艦3隻とそれを護衛する駆逐艦、「天霧」の計4隻がコロンバンガラ島を目指した。これを知ったアメリカ軍は、レンドバ島の基地から15隻の魚雷艇を出撃させた。その中の1隻に、17年後にアメリカ大統領になる、ジョン・F・ケネディ予備大尉が艇長として乗っていた。
我が魚雷艇隊も、6隻が哨戒にあたっていた。
「左舷40度、魚雷艇らしきもの。」
低速で、黒い影がいくつか接近して来る。
「撃て!」
3本の赤い射線が敵艇を包み込む。
敵はあらぬ方向に射撃しながら、全速力で方向を変え、闇の中に走り去った。
30分ほどすると、コロンバンガラ島よりの海域で、駆逐艦の砲撃の閃光と砲撃音が、連続して起こった。途切れ途切れに魚雷艇の出す唸り声が聞こえる。
アメリカ軍魚雷艇隊は、隻数はあったが共同して戦わず、単独攻撃を繰り返したため、日本の駆逐艦に簡単に撃退された。その中の1隻、ケネディ艇は駆逐艦「天霧」に体当たりされ、沈没してしまった。ケネディ艇長は背中を負傷したが、部下10人を率いて無人島に泳ぎ着き、5日間の苦闘の後、救助された。
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