乳酸閾値の見方

2017年02月10日 | run
…という記事がTrainingPeaksのサイトに掲載されていたので、日本語化→掲載します。引用元はこちら

TrainingPeaksでは、ランについては「30分間でオールアウトするように走り、その内後半20分間の平均心拍数を『乳酸閾値に相当する心拍数』とする」と定義しています。吾輩もやったことがありますが、大阪府庁の前で年甲斐なくヘタりました。

乳酸閾値(に相当する心拍数)の高低は問題なのか?
Saturday, February 6, 2016 by Mike Schultz


 心拍数は運動強度の指標として最も広く利用されている。その一方で、最も誤解されているものでもある。乳酸閾値に相当する心拍数(以後”乳酸閾値”と表記)は特に誤解されている。乳酸閾値の高低は運動能力とは何ら関係は無い。むしろ、これまでの運動経験を表現するものに過ぎない。乳酸閾値は個人差が著しいし、必ずしも年齢とは関係無い。

そもそも”乳酸閾値”とは?
 乳酸閾値とは、10〜60分間(場合によってはそれ以上)の長時間に渡って維持し続けられる最大心拍数であり、身体能力(特に有酸素運動能力)によって決定される。また乳酸閾値は、同程度の時間に渡って維持し続けられる最大パワーとも関連する。
 乳酸閾値以上での運動は極めて強度が高い。その領域での運動に於いては、血糖は急速に消費→減少し、次第に最大酸素摂取量の領域に近づく。その領域での運動はほんの数分間程度しか継続出来ず、運動後は回復期間を要する。一方、乳酸閾値以下での運動は長時間継続可能である。乳酸閾値を正確に知ることは重要であり、それを基に運動強度を設定することは有益である。

乳酸閾値の高低について
 そもそも心拍数自体、個人差が著しいものである。競技者の中でも、乳酸閾値が高い者もいれば、低い者もいる。また、乳酸閾値と年齢は余り関係が無い。例えば、50歳の競技者と25歳の競技者で乳酸閾値が180拍/分で同じ、という例もある(ただ一般的には、若い競技者ほど乳酸閾値が高い傾向が見られる)。また、同一人物でも加齢に伴って乳酸閾値が低下する、という傾向も見られるが、これもあくまで「一般的には」という話に過ぎない(=この傾向に反する例もある、ということ)。
 心拍出量(訳者注:心臓から運びだされる血液量。心臓の機能を示す指標。心泊出量は一回心拍出量と毎分心拍出量に区別される。毎分心拍出量(L/分)=一回拍出量(L/拍)*心拍数(拍/分))、肺機能、最大酸素摂取量、身体の大きさ等が、筋肉に必要な酸素を供給する為の心拍数を決定する要因である。また、乳酸閾値を決定する要因は複数あるが、主要な要因の一つは心臓そのもの、特に左心室である。
 心臓拡張期に於いて左心室は酸素を含む(=肺から戻ってきた)血液で満たされ、続く心臓収縮期に於いて左心室は収縮し、血液は大動脈から全身へと送り出される。なので、一回拍出量を決定するのは、左心室の大きさと収縮力の強さ、ということになる。
 Scott Benson氏(医学博士、米国救急医学会会員、救急外科医、運動生理学者)は、「乳酸閾値は先天的なものよりかは、むしろ後天的に決定されるものである。若者の場合、心臓は様々な変化に対する適応能力が高い。加齢に伴いその適応能力は低下する」と説明する。この意見に従えば、中年期(40〜50歳代)の競技者で乳酸閾値が高い者は、(心臓の適応能力が高い)若年期に高い乳酸閾値を獲得し、その後の中〜高レベルの活動量のおかげでその乳酸閾値を維持し続けられた可能性が高いと思われる。

乳酸閾値を変動させる要因
 持久力系競技に取り組み始めたばかりの人の場合、その年齢に関係なく、乳酸閾値が急激に変化する例が見られる。これは、筋力&循環器系がトレーニング負荷に急速に適応したことによるものである。また、乳酸閾値の測定方法を学習したことにもよる。なお、変化の様態は様々で、トレーニング開始時の乳酸閾値が比較的高い(180後半〜190拍/分程度)人がその後僅かに低下するという場合もあれば、逆にトレーニング開始時の乳酸閾値が比較的低い(150〜160拍/分)人がその後わずかに上昇するという場合もある。大抵の場合、変化の程度は5〜10拍/分位である。持久力系競技に取り組み始めたばかりの人、及び長期間の休養を経て再開したばかりの人は、自らの乳酸閾値(の変動範囲)を定期的に確認することが重要である。
 乳酸閾値を変動させる要因には他にも、服用薬やトレーニングによる疲労が挙げられる。投薬治療を受けている人(特に心臓絡みの場合)は、運動することの可否(及びその程度)について、かかりつけ医の判断を仰ぐことが大切である。運動などについて許可が降りても、乳酸閾値を測定する前には、きちんと休養すること及び準備運動を行うことが重要である。
 筋疲労/全身疲労によっても、心拍数は低下する可能性がある。なので、乳酸閾値を正確に測定する為に、測定試験の前は過剰なトレーニングを控えるのが望ましい。
 最後に、測定に使用する道具にも注意が必要である。固定バイク/トレッドミルを利用するのは便利であるが、それらを使用することに慣れていない場合、乳酸閾値が実際より低くなる可能性がある。なので、一度は屋外の長い(途中で邪魔が入らないように!)上り坂で測定試験を行い、結果を比較するのが望ましい。
 
 トレーニング期間に於いては、休養が十分な状態/運動能力が絶好調な状態/身体が疲労している状態/オーバートレーニング状態、と身体は様々な状態にあるが、どのような状態にあろうとも、その状態に於いて乳酸閾値近辺で運動出来る能力は有益なフィードバックをもたらす。特に、その能力をパワー値(訳者注:機能的閾値=FTP?)として表現した情報は重要である。そのパワー値(の範囲)を決定するには多少の慣れを必要とするが、その情報は身体の疲労程度や運動能力を表現する貴重なものとなる。

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