紙の原料は靱皮繊維という木の皮です。
楮、三椏、雁皮など。
楮で説明すると、木と言っても低木の木で毎年刈り取ります。
株で栽培しているので、
春に芽吹き、茎を伸ばし葉を付けていきます。
冬に葉が落ちるまで芽欠きや害虫駆除を行い製品として出荷出来るように手を入れて栽培してくれています。
石州や細川、雪晒しをする小国や山中和紙などは和紙職人が栽培もして刈り取り、黒皮のたくりまで行っています。
その作業自体、冬に行われるので、紙漉きに良い時期と被るのです。その為、人手がある工房でしか出来ません。
美濃では昔から栽培地と和紙職人は別で、原料を仕入れて使っています。
現在本美濃紙の原料は那須楮と決められてるのですが、その昔は「津保草」というものを使っていました。
津保川流域や下呂や飛騨地方などで収穫されたそうです。
しかし、乱獲が進み、うまく栽培もしてなかったのか、無くなってしまいました。
その津保草に似た繊維が那須楮だったので、使うようになったと聞いています。
しかし今年は津保草が復活、購入出来るようになりました(もんのすごく高いけど)
美濃で楮を栽培してくれているのは「楮生産組合」の方々。美濃市の管理する団体で、多くはシルバーさんが働いてくれています。
毎年春になると競りのようなものがおこなわれます。あ、市の方から文書でお知らせが届くので、金額は決まっているのですが毎年少しずつ?大幅に?値上がりしています。
予算内で何をどれだけ購入するか?
他の和紙職人の様子を見ながら、必要分を確保します。
来年からまた上がるよ、言われたので今年は無理をして購入。白皮を多めに、いつも購入するものは控えました。悲しいし申し訳ないのですが背に腹をかえられず。
津保草、少量ですが手に入れることが出来ました。欲し人が多くて一貫だけ。
黒皮は一度水に浸けてアクを流すとカビにくくなるのですが、今年はちょいちょい雨が降るのでタイミングが合わず未だ処理しきれていないものもあります。
黒皮は一度水に浸けてアクを流すとカビにくくなるのですが、今年はちょいちょい雨が降るのでタイミングが合わず未だ処理しきれていないものもあります。
暖かくなる前に終わらせたい。。
原料の値段が上がってると書きましたが、
原料の値段が上がってると書きましたが、
これはかなりの痛手。
紙の値段も上げないとやっていけません。
和紙職人は原料の値上がり、道具の値上がりに加えて、燃料や施設使用料の高騰をうけて、さらに人件費も上がっていますが、
それを和紙の値段にのせると、高すぎると言われ安い方に流れます。
しかし赤字になってまで作るなんて無理。
板挟みです。
悲しい。悲しすぎる。
和紙職人が居なくなるわけです。
やっていけません。
高いなんて言われないよう、良い紙を作り、
もっと和紙を知って貰わないといけないな、と強く思います。
しかし良い紙を作れるようになるには、紙を沢山漉く必要があります。
「そこに到達するまで」がとても苦しい時期なのです。その為、美濃では専業でしている工房は少なく、主に旦那さんの扶養内でしている方や副業をしていたり、ほとんど稼働してない工房も多いです。
かくいう私も紙の仕事と被らない時間帯に副業をしています。
和紙職人が居なくなると多くの文化芸術がなくなる恐れがあるので、そんな人達は必要とされているという「使命感」だけで仕事してるね、なんてよく話しています。
それでは、この先残っていかないでしょう。
いくらこの仕事は素晴らしいと言っても、ちゃんと「食べていける仕事」にならないと次に繋げることも出来ません。
無くなってからでは遅いのです。
どうしたら残せるのか、業界全体の意識が変わらないと難しいのかもしれません。