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赤表紙本「指輪物語」と、その他愛する本たちの読書記録とあれこれ

「ディダコイ」(ネタばれあり)

2006年03月19日 | 
「ディダコイ」

ルーマー・ゴッデンさんの本はやっぱり面白いです。
(以下、ネタばれあり)




ディダコイとは、ジプシーと白人との混血児のこと。どちらにも属しているようで属していない。
少女キジィは7歳。ジプシーの祖母と荷馬車で暮らしている。学校へ通いだすが、子供たちは(一人を除いて)キジィを受け入れない。やがて、高齢の祖母は亡くなり、キジィは愛馬を売られまいと、老提督の元へ駆け込む。そのまま病で寝付いたキジィを、我が子のように手厚く看護する提督。
元気になったキジィをどうするかでもめる大人たち。引き取ることを希望したのは独身女性のブルックさんだった。
ブルックさんは、キジィの心に踏み込みすぎず、何とかキジィが安心して暮らせるように心を砕く。しかし、彼女が心を許すのは老愛馬と、提督、それに提督とともに暮らすピーターズとナットだけ。
ある事件があり、クラスメートにますます心を閉ざすキジィ。
しかし、とある事件で、少しずつキジィは自分というものを確立してゆく・・・



事件もあれこれと起こるのですが、それよりも、登場人物の心が息つく間もなく読ませる本です。簡単にキジィが心を開かないのがいい。彼女にとっては、周りの環境はそんなに簡単なものではなかったはずだから。
その分、提督の暖かい気持ちや、ブルックさんの賢明でキジィの心の側にたった行動、クレム・オリバーの少年らしい元気の良い気遣いなどが、胸を打つ。

解説には、一種のシンデレラ物語という言葉があるが、むしろ、キジィの自己発見(周りにとっては、キジィの自己発見を発見する)物語と思える。いや、シンデレラ物語自体が自己発見物語でもあるのかな。
その他にも、解説には、ゴッデンを「人生の冷静な観察者」と表現しているが、これにはいたく同感。熱いのに冷静なストーリー運びは、心地よく、読後感が良く、心に残る。

「人形の家」も、「バレエダンサー」も良かったけど、この「ディダコイ」も大変面白かったです。

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