モミジとふみの大人？の会話

【出演】
ミジ：４０歳寸前？　最近２０歳近く年下の後輩に心奪われているらしい。
ふみ：モミジの恋の行方の証人としてのキャリア２０年。


モミジ：１週間、生理が遅れちゃって心配した。眠れなかったよ。
ふみ：なんか覚えがあるわけ？　恋人いない歴２年とか言ってたじゃない、この前飲んだとき。
モミジ：ケイスケに言って、どうするつもりよって！って詰め寄るつもりで、ドキドキして朝を迎えたら…、生理が来た。
ふみ：だからさ、覚えがあるの？　ケイスケって誰よ。聞いたことないよ、そんな名前。
モミジ：会社の後輩。仕事は全然できないけど、ちょっとかわいい。性格がいいのよ。
ふみ：性格がよくても仕事できなかったら苦労するよ。モミジはいつもそうなんだから。…いや、そういう問題じゃなく、そのケイスケって子といつから付き合ってるのよ。
モミジ：付き合ってはいないよ。付き合ってるなんて、あたし、いつ言った？
ふみ：そうは言ってないけどさ、でも子どもができた、どうしてくれる！って迫るって言ってたじゃない。付き合ってないけど、そういうことしちゃったわけ？　ま、それはそれでいいけど。別に責めないけど。
モミジ：あたしはちゃんと確信をもてなければ、男と寝たりしないよ。ふみとは違うんだから。
ふみ：確信ってなによ。じゃあさ、妊娠なんてするわけないじゃん。
モミジ：わかってるよ、そんなこと。だから別に妊娠してないもん。
ふみ：ふ～。意味がわかんないよ、モミジの話。なんなのよ。例によって妄想？　いい年して、まだそういう趣味からのがれられない？
モミジ：いい年って…。そういう言い方しないでくれる？　年は関係ないよ、むしろ年とればとるほど、妄想は深く濃くなっていくっていうもんよ。
ふみ：なに威張ってるのよ。で、なに？　今度はどんな妄想しちゃったわけ？
モミジ：だからね、ケイスケと私が結婚するわけよ。
ふみ：ケイスケっていくつなの？
モミジ：２２。
ふみ：どひゃ。いくら年下食いっていっても、年齢差最高記録？
モミジ：まあね。そういうことなの。年々、好みは若くなってく…。
ふみ：なに、遠い目してんのよ。で、結婚してどうなるわけ？
モミジ：そりゃ、もちろん幸せな毎日なんだけど、でもかわいい女の子が生まれたころから、事態はちょっと変わっていくのよね。
ふみ：どう変わっていくわけ？　ああ、ケイスケが年上妻に飽きて若い子に走っちゃう、とか？
モミジ：そんな妄想はしないわよ。違うのよ。つまり、それまで私一筋だったケイスケが娘の誕生でそっちにメロメロになっちゃうわけ。
ふみ：よくあるケースね。
モミジ：よくあるけどさ、でもこっちは大幅に年上っていうハンデがあるわけ。で、娘はどんどんかわいくなって、それでこっちはどんどん衰えていく。ケイスケはちっとも老けないから、娘を歩いてても親子なんて見られないわけ。
ふみ：ああ、そのパターンね。
モミジ：それで、思春期突入くらいの娘を連れて三人で寿司屋なんかにいくと、向こうが夫婦で私が母親に見られたりするわけ。
ふみ：悲しいねえ。
モミジ：私は怒って帰ってきて、必死でパックなんかして対抗して、それでケイスケに聞くんだよね、ねえ、私、老けた？とかさ。せつないでしょ。そうすると、ケイスケは優しいから、前と全然かわんないよ、とか言ってくれて。
ふみ：いいやつじゃん。
モミジ：まあね。でもそのうち私のほうがやばくなってきて、訳のわかんないこととか言い出すようになるの。
ふみ：認知症ってやつ？　この妄想、どこまでいくのよ。
モミジ：それで、ナナが言うの。
ふみ：急に新しい登場人物？　ナナって誰よ。
モミジ：娘よ。娘はナナっていうの。
ふみ：聞いてないわよ。ま、いいわ、で？
モミジ：ナナがね、父親に言うわけ、「お父さん、大変だね」って。ケイスケはわがままな私の世話を一手に引き受けて献身的なんだよね。なにしろまだ若いし。それで娘に言うの。「お母さん、今はこんなになっちゃったけど、昔はかわいかったんだよ。年上だけどかわいかったんだよ、ってね。……。
ふみ：どうしたのよ。泣いてんの？
モミジ：泣いてないけど、ちょっとしみじみしちゃうじゃない。あ～あ。
ふみ：ねえ、もっと楽しい妄想しなさいよ。これじゃ、あまりに悲しすぎるよ。
モミジ：そう？　でも私、こういうの、ちょっと好きなのよね。ねえ、私って、こうやって妄想だけして年とっていきそうだよね。
ふみ：それでいいわけ？
モミジ：だって、妄想の中に出てくる男以上にかわいいやつには一度も出会ったことないものね。


はい、おしまい。最初に言ったように、オチはないですから。オチを期待してたら、ごめんなさい。って、まさかオチなんて期待されてないよね（笑）。