ユニゾホールディングスの破綻をめぐり、経営陣への責任追及が始まりそうだという記事。
まず、親会社への巨額貸付金の問題があります。
「問題は、非公開化後にユニゾHDが買収費用の返済に走ったことだ。2021年3月期の有価証券報告書によれば、ユニゾHDはチトセア投資に対して2571億円の貸し付けを行っている。巨額の貸付金はチトセア投資を経由後、ローンスターへの返済に回された。
貸し付けする資金を捻出するために、ユニゾHDは不動産を多数売却することになった。財務も著しく悪化し、2021年3月末時点での現預金は412億円と、1年間で1200億円以上も減少した。
チトセア投資はユニゾHDの親会社である以外何らの事業も行っておらず、返済余力には乏しい。2000億円超の貸付金が焦げ付いていると考えれば、ユニゾHDは実質的に債務超過の状態にあった。」
「倒産後の債権者集会で代理人弁護士は「チトセア投資の保有資産はほぼユニゾHDの株式のみで、貸付金はほぼ回収の見込みがない」としている。ARCMの懸念が的中した形だ。」(ARCM:社債権者である香港ファンド)
会計処理の面でも、この貸付金について、ユニゾは貸倒引当金をほとんど計上していなかったようです(2022年4-9月半期報告書)。また金融商品時価の注記では、簿価と時価は同じになっています。
貸付先である親会社に、連結ベースの貸借対照表を作成させて(作業的には難しいことではない)、それをもとに検討すれば、回収可能性ははっきりしていたはずです。
また、債権保全の合意書を締結していたようですが...
「2020年2月、ユニゾHDはチトセア投資との間で合意書を結んだ。ユニゾHDからチトセア投資に対して資金の移動を行う場合、借入金や社債に対して「担保差入れその他の方法により債権保全を図るか、又は、期限前弁済を行うことに合意する」という内容だ。チトセア投資への貸し付けによってユニゾの財務が悪化し、既存債務の返済に支障をきたせば、合意に反する。」
「すでに複数の疑義が呈されているEBO。9日の債権者集会では、債権者から「(チトセア投資への貸し付けが)関係法令に照らして妥当だったのか、回収可能性がないといつ分かったのかは重要な問題だ」と指摘があった。代理人弁護士も「しかるべく進めて参りたい」と応えた。」
そのほか、この東洋経済記事ではふれていませんが、2021年3月期に500億円超の配当を行っています。これも、会社法上、違法性はなかったのでしょうか。
調査の対象には、監査法人も含まれているそうです。
「今後、弁護団はEBOにまつわる金額や契約関係、意思決定プロセスについて調査し、損害賠償請求の可否を検討する構えだ。ユニゾHDの小崎哲資前社長を含む当時の取締役に加えて、弁護士や監査法人、買収費用の拠出やユニゾHDに役員を派遣していたローンスターも調査対象となる可能性がある。」
もともと、新日本監査法人が監査していましたが(2020年3月期有報まで)、EBO後(逃げるように?)退任し、新日本出身の会計士が、引き継いでいます。監査法人というのは、新日本だけではなく、後任監査人である個人の会計士も含まれるのでしょう。
ちなみに、チトセア投資も、借金の規模からすれば、会社法監査の対象のはずですが、誰が監査していたのでしょうか。ユニゾと同じであれば、貸付先の実態を知らなかったという言い訳はできなくなります。
(補足)
ユニゾHD、債権者説明会を開催 ~ 最初の関門は「担保権者との交渉」 ~(東京商工リサーチ)