東京でカラヴァッジョ 日記

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【再訪】「みちのく いとしい仏たち」(東京ステーションギャラリー)

2024年02月05日 | 展覧会(その他)
みちのく いとしい仏たち
2023年12月2日〜2024年2月12日
東京ステーションギャラリー
 
 
 北東北3県(青森・岩手・秋田)における民間仏の展覧会を再訪する。
 
 第1章は平安から鎌倉時代のものが並ぶが、第2章からは江戸時代の民間仏で、計約130点の出品。
 
 
 
「民間仏」とは。
 
 近世になり、幕府や諸藩によって、寺院が「本山」とそれに属する「末寺」という体制に整理され、本堂の形状や荘厳は宗派ごとに均一化される。まつられる仏像の制作地は、大阪・京都・江戸・鎌倉に集中し、高い技術をもつ工房による端正で美しい仏像・神像が舟運などを介して列島各地に送り届けられる。結果、全国の寺院において、本堂内陣須弥壇上の本尊仏の大半が江戸・上方のものとなる。
 
 いっぽう、地方の小さな村々では十王堂(地蔵堂、閻魔堂)や観音堂など集会所を兼ねた場所が人々の拠り所であった。
 こうした場所や民家の神棚に祀られた十王、地蔵、観音、大黒天・恵比須などの木像は、仏師ではなく地元の大工や木地師らが彫ったもの。これを「民間仏」という。
 粗末な素材を使って簡略に表現された民間仏は、日常のささやかな祈りの対象として大切にされてきた。
 
 
 撮影不可の本展。
 以下、出品仏のいくつかについて関連画像とともに記載する。
 
 
フォトスポットより。
 
《山神像》
江戸時代、兄川山神社(岩手県八幡平市)
 本展のメインビジュアル。
 奥羽山脈最奥部の林業従事者に今もあつく信仰されているという山神様。
 ぶっ飛んだプロポーション。大きな頭部。顔の木目(特に口周り)。直方体の長い首。箱のような胴体を彫って表した腕。横から見ると薄い。強烈な造形。
 
 
《菩薩坐像》
江戸時代、観音寺(青森県青森市)
 小さな仏像。解説は「仏像につきものの整った姿やおごそかさと無縁で、何の説明もいらない「これでいいのだ」像の代表」と語る。
 
 
 
入場時に渡される入館記念券より。
 
 本展では、絵柄が6種類用意されているようだ。
 
 私は3種類入手(つまり3度訪問)。
 「い」の形をそれぞれ変えている。仏像が手を合わせている様子を表現しているという。
 
 うち1種類はフォトスポットの《菩薩坐像》。
 他2種類は。
 
《毘沙門天立像》
江戸時代、個人蔵(青森県五戸町)
 煤けた毘沙門天。
 帯を噛む獅噛は、本来は獅子型だが、鬼の面になっている。しかもにこやかな顔つき。
 
 
《達磨像》
江戸時代、個人蔵(青森県南部町)
 木彫の達磨像は意外と少ないという。
 簡潔明瞭な表現。
 
 
 
 チラシの裏面より。
 
 このなかで2選。
 
3番
《六観音立像》のうち《聖観音像》
江戸時代、宝積寺(岩手県葛巻町)
 6体の観音立像。特別な背景があったのだろう、良材が使われ、衣の装飾にも力が入れられている。足以外のすべてを一本の材から彫り出していて、そのため腕の形がやや不自然。その顔立ちは、みちのくの人々を写したのだろうか。
 「みちのく民間仏の頂点にある」という6像は、本展の最大の見どころの一つ。
 
 
7番
《鬼形像》
江戸時代、正福寺(岩手県葛巻町)
 正福寺から、十王像、司命・司録像、鬼形像、業火に焼かれる亡者像、すりつぶされる臼像など、地獄ジオラマ像計11点の出品。
 この鬼の左の足元には、引きずられる女性がいる。
 
 
 
【本展の構成】
1 ホトケとカミ
2 山と村のカミ
3 笑みをたたえる
4 いのりのかたち 宝積寺六観音像
5 ブイブイいわせる
6 やさしくしかって
7 大工 右衛門四良(えもんしろう)
8 かわいくて かなしくて
 
 
 監修者で北東北の民間仏を長年にわたり調査研究してきた須藤弘敏氏(弘前大学名誉教授)による作品解説も楽しい本展。
 
 
 日本で最初の大規模な民間仏の展覧会だという本展は、岩手県立美術館、京都の龍谷ミュージアムを巡回し、東京ステーションギャラリーが最後の巡回地である。


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