カラヴァッジョ展
2019年10月26日〜12月15日
名古屋市美術館

カラヴァッジョ
《リュート弾き》
1596-97年、96×121cm
ロンドン、個人蔵
カラヴァッジョの真筆として出品されている本作品。
この図柄は、エルミタージュ美術館所蔵作品と、ニューヨーク個人蔵作品の2バージョンが真筆として知られている。
エルミタージュ作品は、ヴィンチェンツォ・ジュスティニアーニの注文により制作され、モデルは、カラヴァッジョと同時期にデル・モンテ枢機卿の館に住んでいたスペイン人カストラートとされている。静物、少年、光線の描写。画家初期の風俗画の頂点を示す傑作、と宮下規久朗氏は評している。
ニューヨーク個人蔵作品(2013年までメトロポリタン美術館に寄託されていたとのこと)は、デル・モンテ枢機卿がジュスティニアーニの作品を見て自分も欲しくなり、レプリカを注文したものと考えられている。宮下氏は、単独で見ると悪くはないが、モデル不在で描いたためか、エルミタージュ作品と比べると見劣りがし、同じ画家が描いたとは思えないほどである、と評している。
一方、本展出品作。
その来歴であるが、1726年以前は不明で、1726年にイギリスのボーフォート公がイタリアで購入し1960年まで一族が所蔵。1960年からロンドンの個人蔵。1969年からギリシャの個人コレクション。2001年にサザビーズのオークションにカラヴァッジョのコピー作品として出品され現所蔵者に。その後、複数の研究者によりカラヴァッジョの真筆と同定されたとのことである。
図録解説では、本作は、エルミタージュ作品やニューヨーク個人蔵作品より早い時期に、デル・モンテ枢機卿のために描かれた(つまり枢機卿は同じ図柄の作品を2点持っていた)とする新説が紹介されている。バリオーネのカラヴァッジョ伝における「リュート弾き」の図柄に関する記述に、他2作品は一致しないが、本作は一致することが根拠の一つとされている。
私は、エルミタージュ作品もニューヨーク個人蔵作品も実見したことはないが、エルミタージュ作品の少年の妖しさぶりは、ベルリン美術館所蔵の《勝ち誇るアモール》と同等かそれ以上ではないか、と勝手に想像している。
その勝手な想像を基準としたためであろう。本作にはピンとくるようなところがない。エルミタージュ作品をいつの日か見たいなあ、と思いつつ本作を見ている。勝手な思い込みで基準を上げてしまったようである。