カラヴァッジョ展
2019年10月26日〜12月15日
名古屋市美術館
カラヴァッジョ
《聖セバスティアヌス》
1606年、170×120cm
ローマ、個人蔵
魅力的な作品。
本作がカラヴァッジョの真筆かどうか私には分かりようはないが、そうではないとしても、魅力的な作品だと思う。
聖人は、身体に刺さった1本の矢の方向に視線を向けている。苦しげな表情。
不思議なのは、二人の刑吏が聖人を木にロープで縛りつけようとするまだその途上で、一発目の矢が放たれていること。考えられる説。ひとつ、執行人が誤射した説、ただ、刑吏たちが慌てている風はない。ふたつ、一発目の矢を放った時に聖人が暴れてロープが解けてしまったので縛り直している説。みっつ、矢は、実際にはまだ放たれておらず、これからを想起して苦悶する聖人が見た幻視である説。ひょっとすると、聖人ではなく、聖人の表情に想起された執行人の幻視、いや、執行人の役割を画家に担わされた画面の前の鑑賞者自身の幻視なのかもしれない。
ベッローリ「カラヴァッジョ伝」では、本作について、「カラヴァッジョの色彩が、絵画が尊ばれることろでは常に高く評価された」例として、「二人の死刑執行人から両手を後ろ手に縛られている《聖セバスティアヌス》は、彼の傑作の一つであるが、これはパリに送られた」と記している。
図録解説によると、本作は1945年から現所蔵者の一族の所蔵となっているが、その前の所蔵者であるモンパンシエ公が1877年にフランスからボローニャに移しているとのこと。
ロベルト・ロンギによる1951年のミラノの歴史的なカラヴァッジョ展に出品され、「カラヴァッジョ帰属作品」として位置づけられている。
本作と同様の図柄を持つコピー3点の存在が知られているとのこと(コモ大聖堂、ローマ個人蔵、他)。
ベッローリの伝記では本作の制作時期は明らかではないが、本展ではその画風から第一ナポリ滞在期に位置付けている。