東京でカラヴァッジョ 日記

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1987年のゴッホ展 -《ひまわり》安田火災

2017年12月29日 | 西洋美術・各国美術
ゴッホ「ひまわり」特別展覧
1987年10月13日〜12月27日
安田火災東郷青児美術館



   1987年3月30日、ロンドンのクリスティーズで競売にかけられたゴッホ《ひまわり》は、24.7百万ポンド(39.9百万ドル、58億円)で落札される。
   当時の美術品取引史上最高額の3倍以上の額である。
   落札者は、日本企業。安田火災海上保険(現、損保ジャパン日本興亜)である。
   


   《ひまわり》前の美術品取引額ベスト8

1:The 12th-century Gospels of Henry the Lion.
11.9 百万ドル、1983年

2:マンテーニャ《マギの礼拝》
8.1百万ドルまたは10.4百万ドル、1985年

3:マネ《Rue Mosnier With Street Pavers》
 7.7百万ドルまたは11百万ドル、1986年

4:レンブラント《Portrait of a Young Girl Wearing a Gold-Trimmed Cloak》
10.3百万ドル、1983年

5:ターナー《Seascape: Folkestone》
10.0百万ドル、1984年

6:ゴッホ《Landscape With Rising Sun,》
9.9百万ドル、1985年

7:ブラック《Woman Reading》
9.5百万ドル、1986年

8:ターナー《Juliet and Her Nurse》
7.0百万ドル、1980年



   糸井恵著『消えた名画を探して』によると、《ひまわり》のアンダービッター(競い負けた「二番手」)から落札の翌月には安田火災に対して譲渡の申し出があったという。「値段に10%上乗せする。それにすぐにというのも名残惜しいだろうから、5年後でいい」。安田火災は断る。
   1987年3月の落札・同年10月の公開から30年が過ぎた現在も、西新宿の本社ビル42階の美術館にて、美術館の顔として公開され続けているのは本当に有難いことであり、永遠にそうあって欲しいところである。



   10万ドルが一つの壁であったかのような美術品取引、一度大きく超えた取引が発生すると、以降は当たり前のように発生するようになる。


   3ヶ月後の1987年6月、同じくゴッホの作品《トランクターユの橋》が11.5万ポンド(18.6万ドル、27.5億円)で落札され、《ひまわり》に次ぐ美術品取引史上第2位となる。

   さらに、5ヶ月後の1987年11月、やはりゴッホの作品《アイリス》が、《ひまわり》を超える49百万ドル(66.4億円)で落札される。《ひまわり》が記録した史上最高の地位は、その年のうちに更新されたのである。

   ちなみに、ゴッホ《アイリス》の落札者は《ひまわり》のアンダービッター。ただ、彼は最終的に代金を用意することができず、作品はポール・ゲッティ美術館に渡る。



   1987年末時点で、美術品取引史上トップ3を独占したゴッホも、1988〜89年のピカソの躍進により徐々に順位を下げ始める。

   そして1990年。齋藤了英氏によるゴッホ《医師ガシェの肖像》の75百万ドル(114億円)の落札。史上最高値を更新。数日後にはルノワール《ムーラン・ド・ラ・ギャレットにて》も71百万ドル(108億円)で落札。以降、美術品バブルが弾けたためであろう、10年以上、ゴッホ《医師ガシェの肖像》は史上最高値の地位を保つ。



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