カラヴァッジョ展
2019年10月26日〜12月15日
名古屋市美術館

カラヴァッジョ
《歯を抜く人》
1608-10年頃、139.5×194.5cm
フィレンツェ、パラティーナ美術館
初来日。初見となる本作。
ピッティ宮が所蔵する伝カラヴァッジョ作品として、この作品の存在は認識していたが、こんなに大きなサイズだとは知らなかった。また、魅力的な風俗画。カラヴァッジョの真筆かどうかは分かりようはないが、魅力的であることは確かである。
図録解説によると、本作は、1637年の時点で既にピッティ宮にあったことが確認されている。当時はカラヴァッジョ作と認識されていたが、やがて作者同定が曖昧になり、20世紀中頃には17世紀ナポリ派の作と見なされるに至る。1951年のミラノのカラヴァッジョ展にも出品されていない。
1970年のフィレンツェでの「フィレンツェの諸ギャラリーにおけるカラヴァッジョとカラヴァッジェスキ」展への出品を機に、カラヴァッジョの真筆性が議論されるようになるが、今も意見の一致は見ていない。否定者が挙げる理由の一つは、画家晩年の画題に照らした場合の本作の特異性。確かにそこは気になる点である。
中央に立つ得意げな表情の歯を抜く男。その前に歯を抜かれる男。痛みに耐えて自力で姿勢を維持できているものの、この先はどうなるか。興味津々に、あるいは疑い深く、あるいは関心なさげにこの2人を見つめる6人の老若男女。右手の老女の表情が良い。左下の子どもの存在も。見応えのある風俗画、このレベルのカラヴァッジェスキ作品は本展出品作には見当たらない。
【2019.6.1付記事を書き換え。当初記事の札幌展チラシは残します。】
→札幌展のチラシ

