東京でカラヴァッジョ 日記

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国宝《辟邪絵》を見る ー「SHIBUYAで仏教美術ー奈良国立博物館コレクションより」展

2022年05月08日 | 展覧会(日本美術)
SHIBUYAで仏教美術
ー  奈良国立博物館コレクションより
2022年4月9日〜5月29日
渋谷区立松濤美術館
 
 国内有数の博物館である奈良国立博物館ですが、意外にもその所蔵品を名品展として東京で公開したことはありませんでした。
 
 意外といえば意外。
 
 ただ、京都国立博物館、九州国立博物館、さらには京都国立近代美術館や国立国際美術館もどうかというと、確認できていないが、どうだろうか。
 また、奈良国立博物館も、東京ではなくても、神奈川では過去公開したことがあったようだ。
 
 
 さて、「主として仏教に関する美術工芸品の一端」計83件が出展(一部は前後期で展示替え)される本展。
 
 お目当ては、国宝《辟邪絵》。
 
 六道とは地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天の六つの世界のことで、平安時代後期より六道絵や地獄絵がしばしば描かれましたが、これは極楽往生への想いを強めることを期待したのでしょう。辟邪絵は悪鬼を退治する善神を描いたもので、六道絵の一種とする解釈があります。
 
 見た目やその行為の凄惨さはともかく、善神だったのだ。
 
 本作は、もとは一つの絵巻であり、かつて益田鈍翁が所蔵していたので「益田家本地獄草紙乙巻」と呼ばれていた。
 戦後に切断されて現在は5幅の掛幅装になっている(切断好きの益田鈍翁?)。
 
 5幅に描かれる辟邪神は、天刑星、栴檀乾闥婆、神虫、鍾馗、毘沙門天王。
 
 前期(〜5/8)の展示は、天刑星、栴檀乾闥婆、毘沙門天王の3幅。
 
 
国宝《辟邪絵(へきじゃえ)》
平安〜鎌倉時代12世紀
 
「天刑星(てんけいせい)」
26.0×39.2cm
〈詞書(意訳)〉
 天上に「天形星」という星がいる。牛頭天王(ごずてんのう)とその部類ならびに諸々の疫鬼をつかんで、酢につけてこれを食らう。
 
 
 
 
「栴檀乾闥婆(せんだんけんだつば)」
25.8×77.2cm
〈詞書(意訳)〉
 世間の婦女の孕んだ子に腹の中で害を与え、生まれた後も命を奪い、あるいは種々の病を引き起こす鬼に十五の種類がある。童子の母が嘆き悲しむこころざしを哀れむ「栴檀乾闥婆」というものがいて、この鬼等の首を切って戟に突き刺す。十五の鬼は痛み苦しんだ。
 
 
 
 
「毘沙門天王(びしゃもんてんぞう)」
25.8×76.5cm
〈詞書(意訳)〉
 山林の中で法華経を読み修行するものがいて、大乗仏教の意義を思惟しているところに鬼神が飛び来てこれを邪魔しようとする。そのとき、「毘沙門天王」が仏法を護持するために片手に矢をつがえ、その庵の上を翔けて鬼神を射る。鬼は矢にあたって地に落ちて悲しんだ。
 
 
 
 繰り返しとなるが、悪鬼を退治する善神なのだ。
 
 
 残る2幅、神虫、鍾馗は、後期(5/10〜)の展示。
 後期は、プラスで、重文《沙門地獄草紙(沸屎地獄)》1幅も展示される。
 後期も行くつもり。
 
 私的には、天刑星、栴檀乾闥婆、毘沙門天王(本展の前期展示と同じ組合せ)の3幅は2014年の東博「日本国宝展」にて、神虫は2016年の江戸東京博「大妖怪展」で見ているが、鍾馗は初めての実見となる。
 
 本展は、土日祝日および最終週は「日時指定予約制」。
 美術館ホームページから予約するが、入館料は現地での支払いとなる。


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