
異端の象徴である蛇を幼いキリストとともに踏みつける聖母。それを見守る聖アンナ。
カラヴァッジョ
《聖母子と聖アンナ(パラフレニエーリの聖母)(蛇の聖母)》
1605年、292×211cm

サン・ピエトロ大聖堂内の馬丁同信会の祭壇のために描かれた祭壇画。
1605年10月31日、馬丁同信会は、大聖堂の改築に伴い、現在あるレオナルド・ダ・ピストイア(1502-48)およびジャコピーノ・デル・コンテ(1515-98)による祭壇画では小さすぎるとして、新たに祭壇画を注文することを決定する。
1605年12月1日、馬丁同信会がカラヴァッジョに前金を支払った記録があることから、その少し前から制作が開始され、1606年4月8日付の画家の自筆文書が残されていることから、その日までには祭壇画が完成したと考えられる。
1606年4月16日、祭壇画は降ろされ、近くのサンタンナ・デイ・パラフレニエーリ聖堂に移される。サン・ピエトロ大聖堂内に設置されていた期間は1カ月程度。
1606年5月19日、祭壇画の支払いが行われる。前金とあわせ75スクード。この額は、この規模の祭壇画としては少ない(半分程度)らしい。
(1606年5月28日、ラヌッチヨ・トマッソーニ殺害事件。画家はローマから逃亡する。)
1606年6月16日、馬丁同信会はシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿へと売却を決定、7月20日、枢機卿からの支払いが行われる。売却額100スクード。馬丁同信会は短期売却で利益を得て、枢機卿はかなり安い値段で画家の傑作を入手したこととなる。
ボルゲーゼ美術館は、カラヴァッジョ作品を6点所蔵する。
《果物籠を持つ少年》
1595年頃、70×67cm

・2001-02年「カラヴァッジョ 光と影の巨匠 - バロック絵画の先駆者たち」東京都庭園美術館、岡崎市美術博物館
・2016年「カラヴァッジョ展」国立西洋美術館
《書き物をする聖ヒエロニムス》
1606年頃、116×153cm

・2001-02年「カラヴァッジョ 光と影の巨匠 - バロック絵画の先駆者たち」東京都庭園美術館、岡崎市美術博物館
・2019-20年「カラヴァッジョ展」あべのハルカス美術館(大阪会場限り)
《洗礼者聖ヨハネ》
1609-10年、152×125cm

・2009-10年「ボルゲーゼ美術館展」京都国立近代美術館、東京都美術館
・2019-20年「カラヴァッジョ展」北海道立近代美術館、名古屋市立美術館、あべのハルカス美術館
《バッカスとしての自画像》
1595年頃、67×53cm

・2019年「カラヴァッジョ展」北海道立近代美術館(札幌会場限り)
《ゴリアテの首を持つダヴィデ》
1606-07年または1609-10年、125×101cm

・2019年「カラヴァッジョ展」名古屋市立美術館(名古屋会場限り)
《蛇の聖母》は来日していないが、他の5点は1〜2度来日している。
*私的には、《バッカスとしての自画像》以外の4点を来日時に見ることがてきた。札幌遠征すべきだったな。
近い将来、《蛇の聖母》の来日はありうるだろうか。
ボルゲーゼ美術館HPの展覧会歴によると、イタリアを離れたのは、1952年のオランダ・ベルギーと、1999-2000年のスペインの2度のみのようである。