扇の国、日本
2018年11月28日~19年1月20日
サントリー美術館

1878年(明治11年)のパリ万国博覧会。政府からの出品作のなかに、百本の「扇」-幅広い時代と流派を網羅-があった。
「明治政府の主力輸出品であるとともに、日本の文化的象徴としてのイメージが託された存在でもあった」扇。
本展は、このパリ万博に出品された扇の展示から始まる。前期・後期各3点。前期は、狩野探幽、長沢芦雪、歌川豊国。後期は、英一蝶、谷文晁、歌川国芳。所蔵は全て東京国立博物館である。
「扇」は、日本で生まれ発展したものであるという。
中国の文献には、それまで一般的だった団扇と区別して、折り畳む意味の「摺」の字をあてた「摺扇」「摺畳扇」「倭扇」などと登場しており、折り畳める扇が日本産であったことを伝えているとのこと。
「扇」には、大別して「檜扇」と「紙扇」の2種類がある。
「檜扇」は、薄い板を綴じ重ねた扇。奈良時代に発生。
「紙扇」は、竹骨に紙や絹を張った扇。「檜扇」にやや遅れて平安時代初期に作られるようになる。
第1章の冒頭に、とんでもない扇が展示される(〜12/24)。
重文《彩絵檜扇》
平安時代、12世紀
島根・佐太神社(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)

サントリー美術館Twitterより
12世紀に制作された現存最古の檜扇。永く社殿の奥に秘められ、御神体に準ずる扱いを受けていたという。隣には、納めていた「扇箱」も展示されており、この扇が開いた姿で奉納されていたことが分かる。
本展では裏側を見せる(表側は小さな写真での案内)
さすがに朽ちている部分も多いが、それを含めてものすごいパワーを持つ一品。
個人的には、この一品を冒頭で観たことで、以降の品の印象が薄くなる。
4階から3階に降りる階段の手前に、扇を流す人に❌(ばつ)印が付された「扇流禁止」の規制標識が。
誰がそんなことをするんだと思ったら、主催者自身が。

サントリー美術館Twitterより。
誘発の未然防止を図ったものだったようだ。
【本展の構成】
序章 ここは扇の国
第1章 扇の呪力
第2章 流れゆく扇
第3章 扇の流通
第4章 扇と文芸
第5章 花ひらく扇
終章 ひろがる扇