怖い絵展
2017年10月7日〜12月17日
上野の森美術館
ポール・ドラローシュ(1797〜1856)
《レディ・ジェーン・グレイの処刑》
1833年
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

246×297cm、本展出品作では最大のサイズ、そして超目玉作である。
1833年に完成し、翌年のサロンに出品、大成功を収める。ロシアの富豪が購入するが、1870年、英国人が購入し、1902年にナショナル・ギャラリーに寄贈される。
1928年、テルズ川が氾濫し、保管替え先であったテート美術館が被害を受ける。ターナー作品などが最優先に処置されるなか、ドラローシュ作品は非優先判定、そのうち何故か行方不明となり、1959年には消失宣言される。ところが、1973年、若い学芸員により保管庫から無傷で再発見!ナショナル・ギャラリーに保管替えされ、翌年から公開されると、その前の床がすり減るほどの人気作品となる。
1554年2月12日の出来事。
5人の人物。
純白のドレスに白い目隠しをして、左手薬指に指輪をした、若くて清楚そうな女性が、ジェーン・グレイ。自らの首を置く台を手探りする。
ジェーンに寄り添う男性は、聖職者。ジェーンを首置き台へと導いている。
画面左手には、柱にすがって泣き崩れている侍女と、ジェーンのマントや宝石を手に失神しかけている侍女。
画面右手には、斧を持つ死刑執行人の男性。ギロチン発明前の当時、斬首は失敗も多く、ナイフで最後の処置をすることも多かったらしい。
首置き台の下の藁は、血を吸わせるため。床に敷かれた黒い布は、画面右下隅ではめくれていて木の床が見え、画家のサインがある。
印象的なのは、死刑執行人のジェーンを見下ろす様子。この雰囲気は、カラヴァッジョの《エマオの晩餐》における宿の主人、あるいは《聖ルチアの埋葬》における穴を掘りながらふと顔を上げる男性を想起させる。画面上繰り広げられている光景はひょっとすると、男性の幻視ではないだろうか。
19世紀フランスのサロン画家による精緻な写実表現と演劇性を備える歴史画の大作。
好みは別として、この作品を見たことがない人は見ておいたほうが良いと思う。このレベルの作品はなかなか日本で見る機会がない。よくぞ来日してくれたものである。
見ておいたほうが良いと言っても、気になるのは混雑状況。
この三連休は、公式ツイッターを見ると、
10/7:最大60分(14:20時点)
10/8:終日50〜80分(開館時50分、入場締切時60分)
10/9:終日20〜60分(開館時50分、入場締切時20分)
2日目から一層の入場制限強化を図っているものと推測するが、凄い。
本展は、会期中無休なので、平日月曜が狙い目かも。