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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

重文《長谷雄草紙》後半を見る。-「文化財よ、永遠に」展(泉屋博古館分館)

2019年10月09日 | 展覧会(日本美術)
住友財団修復助成30年記念
文化財よ、永遠に
2019年9月10日〜10月27日
(前期:〜9/29、後期:10/1〜)
泉屋博古館分館
 
 
   全国4会場(東京国立博物館、九州国立博物館、泉屋博古館、泉屋博古館分館)で同時期に開催される「文化財よ、永遠に」展。
 
   今般、泉屋博古館分館会場を、前期に引き続いて後期訪問する。
   同会場は、鎌倉時代から近代までの主に東日本に所在する絵画・工芸品を担当している。
 
   本展の特徴は、修復されて間もない作品ばかりの展示なので、とにかく全ての絵画の画面が綺麗であること。相当劣化が進んだ鎌倉時代の掛け軸も、相当クリアになっているのが楽しい。
 
「作品にしわや折れがあるとそこに目がいく。修理によって、鑑賞体験の妨げになるものを取り除くことができる。」(野地耕一郎・泉屋博古館分館長)
 
 
   後期のお目当ては、重文《長谷雄草紙》の後半。
 
 
重文《長谷雄草紙》1巻
鎌倉〜南北朝時代・14世紀
永青文庫蔵
修復事業者:岡墨光堂
 
   通期展示だが、前後期で巻替えあり。
   前期は絵巻の前半部分、長谷雄と鬼の双六勝負の場面までの公開。後期は、美女が水となって流れてしまう場面を含む後半3場面の公開である。
 
   「長年の鑑賞によって、画面の縦折れ、亀裂が深刻な状態」「特に物語の要である美女が水へと変わる場面は、強く折れが表れていた」絵巻も、修復によりクリアな画面になっている。
 
 
【ストーリー】
 
   紀長谷雄(845〜912)は、平安前期の公卿で文人。
   ある日の夕刻、怪しげな男が長谷雄を訪ねてきて、双六の勝負を申し込む。誘われるままに男の住居へ行くと、そこは朱雀門。男は「見目も気立ても、必ず満足なさる女」を、長谷雄は「持っている財産全て」を賭ける。勝負は長谷雄の優勢で進み、男は本来の姿、鬼の姿を表す。「勝ちさえすれば鼠に過ぎぬ」と恐怖に耐えた長谷雄、ついに勝利する。
 
(以下、後半)
 
   約束の日、男が女を連れて長谷雄を訪ねる。光り輝くほどの美女に驚く長谷雄に、男は「差し上げます。負けて支払うのですから返してもらう必要もありません。ただし、今宵から100日経ってからうちとけてください。もし100日たたないうちにうちとけようとするならば、不本意なことが起こるでしょう」。長谷雄は了解し、女を受け取り、男を帰させる。日が経つごとにその女を愛おしく思う長谷雄。
 
   80日ほどが経った頃、長谷雄は「かならず100日としもさすべき事かは」と自分に言い聞かせ、女に手を出す。すると、女はたちまち水となって流れていってしまう。長谷雄は8千度悔やむが、もうどうすることもできない。
 
   それから3か月ほどした夜更け、道中に男が長谷雄に近づいてきて言う。「君は信こそおはせざりけれ。心にくうこそおもひきこへしが」。詰め寄る男に恐怖を覚えた長谷雄は、北野天神に祈る。天から「びん(便)なきやつかな。たしかにまかりのけ」との声がして、男はたちまちその場からいなくなる。
   この男は、朱雀門の鬼。女は、数々の死体から良いところばかりを寄せ集めて、作り上げたもので、100日が過ぎれば、本当の人になり、魂が定まるはずであったのに、長谷雄が鬼との約束を破ったがために、そうはならなかった。鬼の気持ちは「いかばかりか、くやしかりけん」。
 
 
 
   あと、特に興味深く見たのは、
 
 
重文《水月観音像(楊柳観音像)》
徐九方筆、朝鮮・高麗時代  1323年
泉屋博古館、京都
修復事業者:岡墨光堂
後期展示
 
 
狩野一信
《五百羅漢図》のうち第45幅「十二頭陀   節食之分」
江戸時代・1854〜63年
東京・増上寺
修復事業者:半田九清堂
*前後期で5幅ずつの展示。第45幅は夜の室内の光景表現が印象的な作品。
 
 
   修復の重要性を実感させられる展覧会。東博会場にも行くつもり。
 


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