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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ウォーホル《ツナ缶の惨事》

2021年10月07日 | 展覧会情報
アンディ・ウォーホル・キョウト 
ANDY WARHOL KYOTO 
2020年9月19日〜21年1月3日
→延期調整中
→2022年9月17日〜23年2月12日
京都市京セラ美術館
 
   アメリカ・ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館の所蔵作品のみで構成される、京都だけの開催となるアンディ・ウォーホル回顧展。
 
   当初は2020年秋の開催予定も、新型コロナの影響で延期調整中となっていたが、先般、新会期が発表された。新会期のちょうど1年前のタイミングでの発表。
 
   本回顧展には、1960年代制作の「死と惨事」シリーズの一つ、《ツナ缶の惨事》の出品が発表されている。
 
   《ツナ缶の惨事》は、1963年4月1日号のNewsweek誌に掲載された記事と写真を基にしたもので、写真は、捜査当局に押収されたツナ缶の写真と、犠牲となった主婦2人の計3枚である。
 
   ウォーホルは、記事の全体を転写する、ツナ缶と主婦の3枚の写真を転写する、ツナ缶の写真のみを転写する、など組み合わせを変えてシリーズとしている。
   本回顧展の出品作は、ツナ缶の写真のみを7回転写した作品である。
 
   事件の概要。
 
   1963年、デトロイト郊外に住む主婦2人が、一方の自宅で昼食にA&P社のツナ缶「ライト・ツナ・チャンク」を使って作ったサンドイッチを食べたところ、その夜から中毒で苦しみだし、翌朝死亡する。
   原因は、缶詰に含まれていたボツリヌス菌。
   5人の子どもたちも一緒に昼食をとったが、子どもたちには子どもたちの希望により、ピーナッツバターのサンドイッチを作って食べさせたため、難を逃れている。
 
   ウォーホルは、著名作品の1つ《キャンベル・スープ》シリーズを発表したその翌年に、手軽に美味しく食べられるという缶詰の大量消費社会的なポップな面と裏返しの、恐ろしい面を表現したこととなる。
 
   ウォーホルが1960年代に制作した「死と惨事」シリーズは、主題からして売れやすいものではなく、それ故に制作点数も総じて少なく、日本で見る機会は少ないようだが、ウォーホルが20世紀を代表するアーティストとして、特にヨーロッパにおいて評価されているのは、このシリーズの存在が大きいという。
 
   このシリーズは、大きく分類して、有名人の死、無名人の死、公権力に分けられるようだ。
 
   無名人の死に分類される《ツナ缶の惨事》は、主婦2人の存在を、永遠に人々の記憶に刻み込ませた。
   是非見ておきたい作品。
   2年延期となったが、開催の見通しがたって良かった。
 
【参考】
フルバージョンの《ツナ缶の惨事》
   
【参照】
宮下規久朗『ウォーホルの芸術』2010年、光文社新書


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