国立西洋美術館のカラヴァッジョ展が開催された昨年(2016年)は、新規のカラヴァッジョ本の出版は、私の認識では1冊、『カラヴァッジョ伝記集』(平凡社ライブラリー)であった。
今年(2017年)は、現時点で2冊も。
木村太郎著
『カラヴァッジョを読む:二点の通称《洗礼者聖ヨハネ》の主題をめぐって』(三元社)
コンスタンティーノ・ドラッツィオ著
『カラヴァッジョの秘密』(河出書房新社)
前者は購入するか思案継続中。
後者は発売と同時に購入。そして、ネットにて、著者による本書出版記念の講演会がイタリア文化会館にて開催されることを知って申込み。そして、書籍をほとんど読んでないまま、講演会当日を迎える。
コンスタンティーノ・ドラッツィオ講演会
「カラヴァッジョの秘密」
2017年10月30日 18:30〜20:00
イタリア文化会館B2アニェッリホール
本書の訳者が逐次通訳を務められる。
席は大半が埋まっている感じ、盛況である。
講演の内容は、おそらく書籍からピックアップしたものだろう。これから書籍を読んで講演会の復習をしたい。
印象に残る軽めの話4選。
【講演より】
1)画家の生年月日と出生地は?
2007年、画家の受洗記録が発見される。受洗は、1571年9月30日、ミラノの教会。これにより、画家の出生地がミラノであることが確定する(誕生日はそれ以前の日となる)。
⇒(疑問)日進月歩のカラヴァッジョ界。2007年以前から、生年月日は1571年9月29日と言われていた気がするが、9月29日は、ミケランジェロという名前からだけの判断だったのだろうか?なお、昔は、生年が1571年ではなく、1573年とされていた。
2)《聖マタイの召命》、どの人物が聖マタイか?
イタリアの多数派どおり、髭の男であるとのご意見。4つの根拠を挙げられた(指差しの手の影、帽子のマーク、3点ともマタイは髭、自分を指差す手と机を叩く徴税人としての手の対比)。
⇒(印象)若い男説を唱えるなんて、どうかしている、という雰囲気。
【質疑より】
1)著者の好きなカラヴァッジョ作品は?
《ホロフェルネスの首を斬るユディト》。
2つの感情(ユディトの感情とホロフェルネスの感情)のぶつかり合いが良い、とのこと。
⇒(感想)本当に学者の間で人気作なのですね。
2)パレルモの行方不明の《キリストの降誕》の制作年代について。
画家がローマ時代にパレルモから注文を受け制作した作品。だから「節約法」は使われていない。
⇒(疑問)「節約法」が使われていない、ことのみが判断根拠なのだろうか?