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東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

「キース・ヴァン・ドンゲン展」(パナソニック汐留美術館)

2022年07月15日 | 展覧会(西洋美術)
キース・ヴァン・ドンゲン展
フォーヴィスムからレザネフォル
2022年7月9日〜9月25日
パナソニック汐留美術館
 
 
 キース・ヴァン・ドンゲン(1877-1968)。
 
 国内では、44年ぶりの回顧展となるという。
 
 ヴァン・ドンゲンは、いろいろな展覧会で見かけることが多いし、作品を所蔵する日本の美術館も少なくないが、私的には、国立西洋美術館が所蔵する旧松方コレクションの2点が画家に対するイメージの全てという状態。
 新たな見方ができるかなと、本展を楽しみしていたところ。
 
 オランダ・ロッテルダム近郊に生まれ、ロッテルダムの美術アカデミーで学び、22歳のときパリに移り住み、以降パリにて活動したヴァン・ドンゲン。
(オランダ人であるとは、今回初めて認識した。)
 
 本展は、パリに移り住んだ当初の駆け出しであった頃から、社交界の肖像画家として一躍画壇の寵児となったレザネフォル(狂騒の1920年代)までの期間を主な対象とする。 
 国内のみならず海外からも作品を集めている。
 
 ヴァン・ドンゲンの代名詞である「華奢で細長くデフォルメされた優美な身体」「官能的な表現」の女性像が多く並ぶ。
 
 
【本展の構成】
第1章 新印象派からフォーヴィスムへ
第2章 フォーヴィスムの余波
第3章 レザネフォル
 
 
 以下、印象に残る作品5選。
 
 
ヴァン・ドンゲン
《私の子供とその母》
1905年、100×81cm
デヴィッド&エズラ・ナーマッド・コレクション
 
 ロッテルダムの美術アカデミー時代に知りあった女性と1901年に結婚。長男は夭折するも、長女が1905年に誕生する。
 本作は、母と子の間の愛情が描かれるとともに、妻と娘に対する画家の愛情が描かれた好ましい作品。
 
 
 
ヴァン・ドンゲン
《コルセットの女》
1908年、65×50cm
名古屋市美術館
 
 優美で官能的な表現の女性像のなかでは一番印象に残る作品。
 所蔵者が名古屋市美術館であることに驚き。名古屋市美術館はなかなかの作品を持っている。
 
 
 
ヴァン・ドンゲン
《女曲芸師(または エドメ・デイヴィス嬢)》
1920-25年、195×132cm
ディエップ城美術館
 
 優美で官能的な表現の女性像のなかでは、名古屋市美術館所蔵作品と並んで印象に残る。
 緑色の布面積控えめ衣装に、緑色のシルクハット。
 大サイズの本作品を、パナソニック汐留美術館の狭い展示室で、距離をとってじっくり眺めようとすると、他の鑑賞者の邪魔になることが避けられない。人の少ない時間帯を選んで訪問したい。
 
 
 
ヴァン・ドンゲン
《ヴェネツィアのカフェ・フロリアン》
1921年、92×73cm
ギャルリーためなが協力
 
 1921年にヴェネツィアを滞在した画家は、ヴェネツィアを題材とした作品を制作する。
 サン・マルコ広場にある世界最古のカフェである「カフェ・フロリアン」。
 アーケードの廊下に置かれた屋外テーブルに座る客を、広場側から描く。
 着飾った女性二人客と注文を取る給仕。着飾った女性一人客。軍人の一人客。3テーブルの客が柱の間から見える。
 ハトがテーブルに寄ってきているのもサン・マルコ広場らしくて好ましい。
 
 
 
ヴァン・ドンゲン
《画家の息子、ジャン=マリー・ヴァン・ドンゲン》
1948-50年頃、61.3×46.4cm
個人蔵
 
 麦わら帽子をかぶり、パイプをくわえ、たくさんの色の絵具が乗ったパレットを持って、父親と同じように画家になった気分で、得意げにこちらを見ている8〜10歳頃の息子。可愛いとしか言いようがない。
 絵の背景は濃い黄色で、ゴッホを想起させる。
 
 1914年夏、妻と娘がオランダに里帰りする。画家は例年どおり後から追いかける予定であったが、第一次世界大戦勃発により、行けなくなる。結局、終戦まで会うことはなかった。
 戦争中は会うことができなかったのか、画家が会わないようにしていたのか、その間に画家は別の女性と関係する。
 終戦後に妻はパリに戻るが、関係は悪化し、1921年に離婚する。その数年後、画家は女性と別れている。
 
 本作の息子は、その後、1938年に知り合い、のちに2番目の妻となる女性との間に、1940年に生まれている。
 
 
 
 本展における国内美術館の出品者としては、名古屋市美術館のほかに、ポーラ美術館(2点)、ひろしま美術館、吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)、大谷コレクション、諸橋近代美術館、ユニマットグループ、そして国立西洋美術館からも旧松方コレクションである《ターバンの女》が出品されている。
 
 海外からは、デヴィッド&エズラ・ナーマッド・コレクションが多いが、個人蔵のほか、グルノーブル美術館、ディエップ城美術館、パリ市立近代美術館、プチ・パレ美術館友の会からの出品もある。
 
 メインビジュアルは、グルノーブル美術館からの《楽しみ》1914年、100.3×90.5cm。


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