ワシントン・ナショナル・ギャラリー展
~アメリカ合衆国が誇る印象派コレクションから
2015年2月7日~5月24日
三菱一号館美術館
1)「小振りで親密な雰囲気」の絵画
「親密」の程度は確認のしようがない。
ここでは「小振り」の程度を確認する。
最も面積大の絵画
No.64 ボナール≪画家のアトリエ≫
61.5cm×74.8cm
以下、68点の分布状況
3号程度以下 :14点
4~5号程度 : 9点
6~8号程度 :16点
10~12号程度:11点
15号程度 :15点
20号程度 : 3点
2)「アンドリュー・メロンの長女エイルサの優しく、心安らぐコレクション」
ワシントン・ナショナル・ギャラリーらしく、作品キャプションには、寄贈者の名前が大きく記載されている。
鑑賞時、本展は「エイルサ」を前面に出している割には、寄贈者の名前に「エイルサ」とある作品がずいぶん少ない印象。
確認する。
エイルサ 29点(43%)
弟ポール夫妻 26点(38%)
他寄贈者8名 13点(19%)
エイルサは確かにトップである。
ただし、約半数の14点が第5章「ボナールとヴュイヤール」に集中する。
第1章~4章に限定すると、
エイルサ 15点(31%)
弟ポール夫妻 21点(43%)
他寄贈者8名 13点(26%)
弟に抜かれ、他寄贈者と差がなくなる。上記印象は、これによる。
実際、展覧会ポスターに使われている作品は、
これもこれも
これも
これも
エイルサの寄贈作品ではない。
3)「日本初38点を含む全68点」
3階の休憩コーナーに、本展の図録のほか、1999年および2011年に開催されたワシントン・ナショナル・ギャラリー展の図録も置かれている。
驚いたのは、2011年の来日作品は、1999年の来日作品と結構重なっていること。
そして、本展の出品作品のうち来日経験ありの作品は30点となるが、その30点の大半は、あくまでも印象に過ぎないが、1999年の図録にも2011年の図録にも載っている感じであること。
ワシントン・ナショナル・ギャラリーの場合、引越し展の出品作は、だいたい決まっているということなのか。
4)巡回展
3階の休憩コーナーに置かれている英語の図録を眺める。
その図録により、本展が「Intimate Impressionism」と題した巡回展であることを知る。
出品作品は、どこも68点、入替なしのようだ。
2013年10月~14年2月
ローマ(カピトリーニ美術館)
2014年3月~8月
サンフランシスコ(米)
2014年9月~15年1月
サン・アントニオ(米、McNay Art museum)
2015年2月~5月
東京(三菱一号館美術館)
2015年10月~16年1月
シアトル(米)
5)本展の章建てと画家別出品数
第1章:戸外での制作(26点)
第2章:友人とモデル(12点)
第3章:芸術家の肖像(6点)
第4章:静物画(7点)
第5章:ボナールとヴュイヤール(17点)
ルノワール 9点(4点)
ボナール 9点(6点)
ヴュイヤール 9点(7点)
ブーダン 8点(3点)
マネ 5点(1点)
ドガ 4点(1点)
セザンヌ 3点
シスレー 3点(2点)
ファンタン・ラトゥール 3点
ピサロ 2点(1点)
スーラ 2点(1点)
ルドン 2点
コロー 1点
モネ 1点(1点)
モリゾ 1点(1点)
ゴッホ 1点
ゴーガン 1点
ロートレック 1点(1点)
ヨンキント 1点
ヴォロン 1点
フォラン 1点
ブーダンが多い。
そして、モネが1点と少ないのが意外。
これはエイルサの好みを反映しているのか(カッコ内がエイルサ寄贈作品数を示す)。
6)三菱一号館美術館の所蔵品展示
お馴染みルドン≪グラン・ブーケ≫のほか、ドニ、モネ、ルノワールの計4点。
ここまで「小振り」で攻めているのに、3点が大きいサイズであることに一瞬違和感。
7)私のお気に入り作品
No.36 マネ≪キング・チャールズ・スパニエル犬≫
No.37 マネ≪タマ、日本犬≫
No.36は2011年にも来日、今回No.37も来日し、2点セットでマイ・ベストとさせていただく。
小部屋1室に、この2点のみ展示されている。
後者は、銀行家アンリ・チェルヌスキの飼い犬「タマ」を描いたもの(1875年頃制作)。
一方、前者は、犬の名前も飼い主も、絵の最初の所有者も不明とのこと(1866年頃制作)。
なお、≪キング・チャールズ・スパニエル犬≫はエイルサの寄贈である。
(≪タマ、日本犬≫は弟ポール夫妻の寄贈)
コメントありがとうございます。
妙な方向に、力を入れてしまいました。
本展でルノワールを見ていると、ちょうど2年前に同じ会場で観た「クラーク・コレクション展」の豪華なルノワール作品群を思い出します。