空海と密教美術展
2011年7月20日~9月25日
東京国立博物館
会期最初の日曜日に訪問。
「国宝・重要文化財 98.9%!」の謳い文句。
残り1.1%が気になります。
展示作品は全99点。うち98点が国宝・重文。1点が非国宝・重文との構成。
その1点は、「金念珠(伝空海保持)」。空海が保持していたと伝えられる念珠です。
この展示期間は、7/20から7/30まで(もう展示は終了)。展示作品中の最短。
「100%」の謳い文句を捨て、たった10日間(休館日を除く)の展示を選択する。
出品自体に相当の意味がある品なのだろうと推測します。
本展は、8~9世紀の、空海にまつわる品、初期密教時代の品が太宗をしめています。
空海は774年生、835年没。
空海の生きた時代、および直弟子(+もう1世代くらい)の空海のにおいが濃厚だった時代の、貴重な品が満載。
圧倒されるというか、感心させられる品が多数あります。
例えば、第1章展示の「聾瞽指帰(ろうこしいき)」。
唐に渡る前の24歳の空海自筆(!)の全長20mもの「書」です。
前期・後期で半分ずつの公開。弓なりに展示。途中で字体が変わるのが不思議。
例えば、第2章展示の「御請来目録」。
804年に唐に渡り806年に帰国した空海が唐から日本へ持ち帰ったものの一覧です。
これがなんと最澄(!)筆。
なお、第2章は、空海が持ち帰ったものそのもの、あるいは、持ち帰ったと伝えられているものが展示されています。
前者には、展示品名に「空海請来」と付記されています。
唯一の非国宝・重文である「金念珠」は後者にあたります。
例えば、第3章展示の「灌頂歴名(かんじょうれきめい)」。
これも空海自筆(!)。
空海が812~814に3度実施した両部灌頂(よくわかりません)の受者の名簿(!)です。
その中には最澄の名が、先頭のほうに見られます。
密教美術作品は、第3章から本格的に登場します。
まず絵画。
戻りますが、第2章展示の「真言七祖像」。
空海請来品5点とそれを手本に日本で制作された2点の計7点からなる絵画。
私が見たときは、前者1点、後者1点の展示。
う~ん、長い年月を経ています。顔の辺りはほぼ完全に消え去っている。
第3章展示の「両界両界曼荼羅図 (高雄曼荼羅)」。
胎蔵界と金剛界の2点が展示されますが、私が見たときは 胎蔵界が展示。
現存最古の両界曼荼羅図で、空海請来本の様式をほぼそのまま伝えるものということです。
非常に大きい。収まる展示ケースがよくあったなあ、と思わせるほどの高さがあります。
傷みが激しい。何が描かれているかわからない。隣の写真パネルやVTRの助けを借りて、少しイメージがわく程度。
ただ、寺社にいるかのような重々しい空気をあたりに発散させています。
仏像も多数。
メインは最後の展示室の「仏像曼陀羅」。京都・東寺からの8点。
その展示室は、スロープを進んで壇上へあがって全体を見渡すという、ダ・ヴィンチ「受胎告知」展でも見られた作りになっています。
壇上から降りて、仏像1点1点を鑑賞します。照明が凝っています。ちょっと演出しすぎかなあ。
全体の印象。
美術作品の鑑賞というよりも、歴史的に貴重な、ありがたい品をいっぱい見させてもらいました、という感じです。
そういう意味で、唸らされる品が多数。
展示品の幅を空海時代に絞り込み、国宝・重文で固めることで、非常に濃密な展覧会になったと思います。