goo blog サービス終了のお知らせ 

東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ようこそ地獄、たのしい地獄(国立公文書館)

2016年07月25日 | 展覧会(その他)

平成28年度 第2回企画展
ようこそ地獄、たのしい地獄
2016年7月16日〜8月27日
国立公文書館

 

   館正面駐車場にはトリックアート、館内には顔出しパネル。夏休み企画らしく、撮影スポットが用意された本展。


「凄惨で残酷、おどろおどろしい地獄の世界 - でもどこかちょっぴり楽しそう!? 」
「古代インドを起源とする「地獄」は、仏教や道教と共に日本へ伝来して以降、土着の信仰などと混ざり合い、独特のイメージを形成しました。 本展では主に平安時代から室町時代にかけて成立した様々な古典籍から、古来、日本人が描いてきた「地獄」のイメージとその死生観についてご紹介します。」


   《今昔物語集》、《源氏供養表白》などの書籍の展示が中心。《暁斎画談》など絵付きの書籍もある。絵巻が1点出品されている。


【本展の構成】

はじめに-ようこそ地獄
1  地獄行きの罪
・罪の告白
・多彩な罪の世界
・物語を書く罪
2  地獄は何処に
・地下の牢獄-奈落の底
・地続きの「あの世」
3  地獄の責め苦
・地獄の責め苦とは
・邪淫の報い
4  冥官の獄卒
・あの世の役人たち
・冥官 小野篁
・獄卒たちの迎え
5  地獄から救われた人々
・地獄信仰
6  六道輪廻-三悪道の世界
・畜生道の世界
・餓鬼道の世界
・「あの世の地獄」より「この世の地獄」
さいごに-たのしい地獄
・閻魔大王はいじられキャラ
・暮らしのなかの地獄
・恋の地獄
・地獄はいつも不景気だった
・地獄に倹約令


   絵巻1点は、本展構成上、第2章「地獄は何処に」の「地続きの「あの世」」に属する。
   公開は1場面だけだが、本展のお気に入り作品らしく、後方壁面を使って、(たぶん)全場面を説明付きパネルで紹介している。


   以下、画像とともに、会場での説明文を転記する。



《道成寺絵詞》

   道成寺が所蔵する室町時代成立の《道成寺縁起絵巻》の異本に相当する絵巻。遠江の長者の娘の花姫と、三井寺の僧の賢学の因縁が語られる。別名に《賢学草紙》《日高川草紙》など。
   本資料は、享和2年(1802)に谷文晁の門弟らによって模写されたもので、幕臣の屋代弘賢(1785〜1841)の求めによって制作された。詞書は弘賢の自筆。元の資料が前半部分を欠くため、本資料は物語の後半部分のみ。


   物語の後半部分のみなので、

   三井寺の僧の賢学は、遠江のある長者の姫君と深い因縁で結ばれているとの夢告を受け、修行の妨げとなることを怖れて、まだ幼かったその姫君の胸を刺して逃げる。
しかし、姫君は一命を取り留め、その後美しく成長し、十六歳になった。

までの場面はなく、

   ある時、姫君は都へと上り、清水寺へ参拝する。

から始まる。

 

二人が夫婦の契りを交わす。

賢学は、姫君がかつて自分が殺そうとした娘であることに気づき、因縁から逃れるため姫君に別れを告げる。

 

熊野までやってきた賢学は、那智の滝に打たれて煩悩を断とうとするが、姫君の幻影が現れる。

 

逃げる賢学、追う姫君(1)

   船頭よ、どうか乗せてください。乗せてください。

   浪に入るとも、どうして遅れようか。水に浮かぶ泡も、恋しい人に逢わないままでは、消えぬまい。

   ここに女の人が泳ぐでもなく水の上を走り、舟に追いつこうとしていますよ。ああ怖い、怖い。

   音を立てないで、ただ急いで漕いでください。「この人は賢学ではない」と申してください。知らない顔をするのがよいのです。

 

逃げる賢学、追う姫君(2)

 

   どちらまでお急ぎになるのでしょう?どれほどお逃げになっても、逃しはしませんよ。
   私が幼い頃、何も悪いことはしていないのに、殺そうとなさいましたが、今、私をお見捨てになるのなら、その時、お捨てになればよかったでしょうよ。
殺そうとする気持ちにも勝る、逃れがたい夫婦の契りだとは、お思いにならないのですか。愚かな人ですね。
   船頭も漕げよ、漕げ。御坊も逃げたければ逃げよ。行かせはしませんよ。
   ああ、うれしい、うれしいこと。


   何の因果でこんな人を舟に乗せたんだろう。


   南無大聖不動明王、三所権現、お助けください、お助けください。

 

逃げる賢学、追う姫君(3)←絵巻実物展示場面

 

 

賢学はある古寺に逃げ込むと、鐘の中に隠れた。しかし、忽ち蛇はこの鐘に巻き付くと、粉々に砕いてしまった。

 

   まあ、まあ、嬉しいこと。このまま奈落の底に入り、共に出ることはないでしょう。離れることはないでしょうよ。

 

蛇は賢学を捕まえると、日高川の底へ沈んでいった。

   絵巻に集中してしまった鑑賞。
   入場無料。
   8/8〜15は、常設コーナーで《終戦の詔書》原本が展示される。 



コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。